第四十二話「今度はプロポーズしたい」
元日の午後。
俺は、初詣の後、家族と共に親戚の家へ来ていた。
大人たちからお年玉をもらった後、幼い親戚の子どもたちと遊ぶ。
昼過ぎると、子どもたちがそれぞれ親に連れられて買い物に行くことになり、自由な時間となった。
徹夜しているからだろう…、強い眠気が来たため、部屋の隅で座布団を枕にして横になる。
うとうとしつつ…、俺はふと、考えた。
この2回目の人生は本当にそうなのだろうか…。そう思っているだけではないのか…。
自分の記憶…、この不安や怒り、憎しみの記憶と感情…
この若い肉体が経験していないものだ。それが自分自身であるという確証は、どこにもない。
そして…、同じように過去をやり直している人間は…、本当に他にいないのだろうか…。
俺の知る世界は、概ね前世と同じだ…。
例えば、歌。芸術。
すべてを覚えてはいないが、当時流行った歌、流行った映画は、記憶にあるものと変わらない…。
代わりに他の誰かが作って成り代わっている様子はない。
もっとも、それすら記憶を改ざんされていない保証はない。流行や事件もそう…。
ひょっとしたらやり直している人間は他にも居るのかもしれない。
自分よりもむしろ、壮馬や奏のような完璧超人を見ていると、あいつらこそ、やり直しを何度もしてるんじゃないのか?とすら思えてしまう。日本中、いや世界中には優秀な人間が沢山いる。それらが皆やり直していたとしたら、それはそれで笑えてしまう…。
…死に戻り…。
あと数年で、爆発的にヒットするとある小説。
その主人公は何度も死に戻って、やり直しをしていた。
もっとも…、その主人公の場合は何度も強制的に死に戻っていたが…。
皆、身の回りの事柄を変える程度で、歴史を変えるほどのことをやっている人間が居ないから気付いていないだけなのかもしれない。
俺と同じで、自分にとって、適度に都合のいいやり直し。
世界はそうやって進んでいるのかもしれない。
…くだらないことだが、前世ではその価値が分からなかったため執着しなかったスマホ…
その便利さが身に染みて理解できたため、親を説得して、この2回目の人生では、既に手に入れている。
奏の嘘告のような小さな事柄でも繰り返されている。
…今回は、すごく雑な告白だったが…。
小さな変化と、大きな不変…。
そして…練炭自殺したときの記憶…。
もちろんはっきり全てを覚えてはいない。
導眠剤を飲んで、すっと眠りに落ちた記憶しかない。本当に死んだのかなんて分かりようはない…。
そして…、未来。
この先の未来には、日本を揺るがす大災害や、世界を揺るがす事件、そして改元。
自分が2025年に31歳で自殺するまでの大きな事柄はたくさんある。あの感染症すらも…。その全てが、本当に再現されるのだろうか。
何故、自分なのだろう…。
思考が堂々巡りになる。
ひょっとしたら、練炭自殺に失敗し、意識不明で入院している自分の夢なのかもしれない…。
思考がまとまらないまま、俺は段々と眠りに落ちていく…。
眠りにおちる直前…、智美の顔が思い出され…、俺は静かに呟く…。
「今度はプロポーズしたい」




