第四十一話「俺たちの財布だな」
元日。
世間が正月気分に浸る中、お祝い気分でない男子たちがここにいた…。
場の熱気が残る換金所近く…。
剣太はボヤく。
「正月早々、出ないな。くそっ、なんだあの台!」
剣太が持ってきた軍資金は、ほとんど消えていた…。
それは…、親戚から貰ったばかりのお年玉だった。
その隣から、一場と大月が笑いながら剣太に声をかけた。
「そらそうだわな。正月早々、神様がそんなポンポン金をくれるわけねえだろ」
「お前、ちゃんと初詣いったか?」
もちろん、一場と大月は初詣など行っていない。単なるノリで言っているだけだ。
一場と大月の手には、コインが入った換金用のプラスチックケースが握られている。
少し遅れて、店から秋本が出てくる…。
秋本の手にも…、
同じく換金用のプラスチックケースがあった。
秋本は、不機嫌そうな剣太に話しかける。
「剣太は駄目だったか?」
剣太は、持っていた空のジュースの缶をゴミ箱に投げつけ、キレる。
「ああ!もう最悪や!全部パーだ!こんな店潰れてしまえ!」
秋本は鼻で笑う。
(高校生のくせしてパチンコなんてするから、お年玉が減るんだ。自業自得だろ。)
一場は、秋本の辛辣な思考を見抜いたかのように、薄ら笑いで「ほんとに酷い奴」と、秋本に向かって口パクで言う。
秋本は一場の視線を感じ、やれやれと言った手振りで、苦笑いした。
そして…、秋本は、笑いを収めると剣太の肩を叩いた。
「まあ、そんなんでムカついてるなよ…。これから、ゆまちゃんと会うんだろ?機嫌よくしていけよ?」
剣太の顔が、一気に明るくなった。
「ああ。ごめん!行ってくるわ。またな。」
剣太は、それ以上の文句は言わずに、足早にひとり、去っていった…。
剣太が立ち去った後、大月は笑いを堪えなくなったようで…
剣太の立ち去り際の声色を真似て…
「女ってこんなものか!」
一場は、そのモノマネを見て爆笑する。
「似てた、似てた!!」
秋本も笑いがこらえきれない様子だ。
「しかし…、酷いね。正月早々、剣太の金でお年玉を稼ぐとは。悪いやつ…。」
大月は笑いすぎて涙を拭いながら、改めて秋本に言った。
「それにしても…、よく紗矢ちゃん、あんないい子、剣太に見つけて来たな…。」
一場が、感心したように言う。
「そうだよな。あんな子、俺たちに紹介してほしかったわ…。」と大月も続く。
秋本は、換金した現金を数えながら冷めた口調で返す。
「やめとけって言っただろ。アイツ、超ダメ男好きで、ダメ男メーカーらしい。関わるとロクなことないぞ。」
しかし、まあ、紗矢のやつ、自分のグループでもない女子の中から、よくもあんな条件にピッタリな子を見つけたもんだ…。
女子を紹介しただけで、ここまで便利な存在になってくれるとは、ちょっと想像以上の超が付くほどの猿だったか…。本人も幸せそうだしな…。
まぁ、紗矢の機嫌が悪くなると面倒だ…。あの子は…剣太にだけあてがっとくのがベストだろう…。
秋本は財布に、金を入れながら考えた。
「ああ...。まあ、剣太とうまくやってるってことはそういうことなんだろけど。」
一場は納得したように頷く。
そこで…
大月が、またもや剣太の真似をする。
「女ってこんなものか!!」
「ちょ、不意打ちはやめろ」と、一場は腹を抱える。
秋本も満足そうに笑った。
「剣太からのお年玉もいただいたところで、カラオケでもいこうぜ」と2人に声をかけ、3人はカラオケに向かう。
歩きながら一場は、秋本に言う。
「しかし…、上手いことやったね…。あれは、もう…、」
「俺たちの財布だな。」




