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第三十八話「今日は…楽しかった…。」

夏休みも終わりに近い週末。



リョータは、中学の友人グループからの誘いで、川へ遊びに行くことになった。



久しぶりに集まったのは、リョータ、壮馬、拓、冬田、そして剣太の五人だ。



自転車で少し山間の川に向かう。



道中では、皆が近況を話し始めた。



拓が口火を切る。



「いやー、俺は最近、ファミレスのバイトが最高にダルい。夏休み入ってから毎日。金が溜まるのはいいだけどな。」



「拓は元気そうだな。相変わらずだな。」とリョータが笑う。



「何か欲しいものでもあるん?」



「誕生日を迎えたから原付が欲しくてさ。」



「拓の学校は免許取っても、何も言われへんの?」



「学校に乗っていかなければいいみたいやわ。」



「そうなんや。」



そして、話は自然と部活へ移る。冬田と壮馬は同じくサッカー部だ。



「俺はひたすらサッカーの部活漬けだったわ。この夏は特に練習がハードでさ。次の大会に向けてモチベ上がってる」



冬田が、日焼けした顔で熱く語る。



壮馬が続く。



「うちも同じだ。中学の時から比べると、練習量が一気に増えた気がする。」



リョータが思い出したように壮馬に尋ねた。



「そういえば、壮馬ってこの前、女子と海行ったんだろ?どうだったんだよ」



「ああ、行ったな。友達の紹介で、別の高校の子たちと。やっぱ夏は海だよな!拓も冬田も、次は女連れてこいよな。リョータはもちろん智美連れてこいよ!」



「はは…、機会があったらな。」



リョータは笑って流した。



話題がひと段落したところで…、剣太が、フレンドリーに話題に入ってきた。



「リョータ!お前、なんか背ぇ伸びたんとちゃうか?何か鍛えてんの?」



「いや、そんな変わってないと思うけど?」



リョータは愛想笑いを返すのが精一杯だった。



剣太の振舞いは、リョータが漠然と抱いている不安と激しく矛盾していた。



リョータの心には、強い戸惑いを覚える。



(なんでこんなに普通なんだ…?俺が勝手に剣太を警戒しすぎていただけなのか…?)



剣太があまりにも自然に接してくるため、リョータの中で、疑念が湧き始めた。



リョータが剣太を警戒する最大の根拠は、前世で見た智美の部屋で剣太が智美を抱いていた…、あのトラウマ的な光景…。



しかし…、この屈託のない剣太を見ていると、リョータは自身のコアとなる記憶との戸惑いを感じていた。



(この剣太が…未来で俺から智美をNTRするんだろうか…。)












川に着くと、リョータは剣太への戸惑いを振り切るように、皆と川に飛び込んだ。



澄んだ川の水は冷たく、火照った体に心地よかった。



壮馬が水しぶきを上げながら、リョータに不意打ちで水をかけ、皆で爆笑する。剣太も容赦なく拓を水中に引きずり込もうともがいている。



リョータは、深く潜って水中の石を拾い上げたり、流れの速い場所で流されっこ競争をしたり、皆と全力で遊び続けた。



特に、川の底まで潜ったりして遊ぶのは久しぶりで、子供の頃に戻ったように夢中になった。



久しぶりに遊び疲れるほど遊んで充実した一日を過ごした。




…剣太に対する戸惑いはまだ残っていたが…、今日の楽しい記憶が、リョータの戸惑いを一時的に上書きしたような気がした…。


「今日は…楽しかった…。」

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