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第三十七話「お前は…、最高の彼女さ…」

夏休みのある日…。



智美のスマホに、剣太から



「明日、二人で話したい」というメッセージが届いた。



智美は少し困惑しながらも、明日は友達と用事があることを返信すると、剣太からは返信がなかった。




翌日。剣太からのメッセージのことも忘れ、



智美は高校の友人である麻衣と沙織と合流し、ショッピングモールで買い物を楽しんだ。



プリクラ機では、思いっきり変顔をしたり、流行りのポーズを取ったり、女子3人、楽しい時間を過ごした。





夕方になり…、友人たちと駅に向かい、3人で電車に乗り込んだ。



電車が動き出すと、智美はバッグからスマホを取り出した。ちょっとリョータに会いたくなった智美は、メッセージを送る。



『ちょっとだけ会えないかな?急にごめんね…。」



そして、智美の最寄り駅が近づき…



「じゃあね、またね!」



智美は、まだ電車に乗っている麻衣と沙織に別れを告げ、先に電車を降りた。



智美は改札を抜け、駅前のロータリーに出た。リョータからの返信を確認し、顔を上げると、ロータリーの角からリョータが現れた。





…その駅の出口のすぐ脇の植え込みの陰に…剣太は…居た…!



剣太は、改札から出てくる智美の姿を、見つけ、気付かれないように付けていた。



そして…、階段を降り回り込みした剣太は、智美に声をかけようと一歩踏み出し、口を開きかけた。



その瞬間…、リョータの姿に気づいた剣太は、顔色が一変した。



(なっ、リョータ!?)




剣太は、反射的に植え込みの奥深くに身を隠した。



智美は、剣太が隠れていることなど、微塵も気付くことなく…



「リョータ!」



智美は心底嬉しそうな顔をする。



二人が寄り添い、仲睦まじく帰路に就くのを、剣太は植え込みの陰から歯軋りしながら見送った。



「アイツ…、ストーカーかよ…。ちょっと痛いなアイツ…。ウザッ…。」



剣太は、リョータに憤慨しながら、その場から逃げるように立ち去った……。












その夜…



秋本は、自室のベッドでスマホを操作していた。



そういえば…、と思い出したかのように、スマホからメッセージを送っていた。



『よう、今日、マジで告りに行ったんか?』



すぐに返信が来た。




『行ったわ!けど、リョータが邪魔しやがって。ストーカーみたいに張り付いてて!ほんまムカつくわ!』



秋本は、心の中であざ笑った。



(ストーカーはお前だろ…、どうせ…待ち伏せでもしてたんだろう。だいたい、リョータは彼氏だろ…。最高に笑わせてくれるわ…。)



秋本は少し悪戯心を出し…、さらに焚きつける。



『マジかよ。運が悪かったな。どんまい。熱い想いはきっと伝わるわ。まあ、頑張れよ』



(智美ねぇ………。確かに可愛いかったが…、なんでこんな急に熱くなってるんだコイツ?接点あったっけ?ひょっとして…、リョータに勉強でも恋愛でも差を付けられた…嫉妬か?)



「ねぇ、どうしたの?彼女をほったらかして何だか楽しそう。」



秋本の隣に寄り添っていた、彼女の紗矢が少し拗ねたように尋ねる。



秋本は、「中学の時のやつ。告白しに行って失敗したらしいわ…。」と答えた。



「誰なの?中学の時の人なら、卒業生だよね?私も知ってる人?」



紗矢は訊ねた。



「剣太って…、お前分かるか?」



秋本は、揶揄うように紗矢に尋ねた。



「あ~知ってる知ってる。」


「だって…、唯先輩にめっちゃキモイってフラれてて、女子の間ではちょっとキモイかもって知ってる人いるかも。私も噂で聞いた」



(おいおい、1個下の学年にも知られてたのかよ…。)



秋本は、笑いが込み上げてくるのを感じた。



「あー…、一応元クラスメートなんだよ。」



秋本は苦笑いを浮かべた。



「えっ…?友達だった…?」



紗矢は、少し焦りを覚えた様子で訊き返す。



「知り合い以上、友達未満ってとこだな。」



秋本は、剣太の惨めさを共有し、自分の優越感を最高に高めたところで、顔を紗矢に寄せ…



彼女の唇に口づけた。



口づけが離れると、紗矢はすぐに秋本の意図に気が付いた。



剣太を弄んで楽しんでいる秋本の歪んだ感情と、それを自分に共有させたがる優越感に。



紗矢はニヤリと笑い、挑発するように言った。



「紗矢…。誰か、剣太でも良いって女子は居そうか?」



「うーん…。うちの友達はちょっと厳しいかな。あんま知らない子とかだったら…居る…かも…?」



紗矢は何となく秋本の考えを読んだようで…



「ふふ。先輩、悪いんだー…。」



「おいおい、中3のこの夏休みに勉強していないおま…。」



紗矢は、秋本が反論する間も与えず、再び秋本の顔に顔を寄せ、紗矢から深く口づけした。



秋本は、紗矢の生意気で、状況を理解した上の口づけを、心底嬉しそうな顔で受け入れた。


「お前は…、最高の彼女さ…。」

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