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第三十一話「不安」

夏休みに入り…、俺と智美はプールに遊びに来ていた。



智美は少し恥ずかしそうにしていたが、「リョータと一緒ならいいかな」と満面の笑顔だ。その姿に、俺は柄にもなくドキドキした。



プールサイドのベンチに荷物を置き、着替えを済ませてプールへと向かう。



智美は、更衣室から出てくるなり、少しそわそわした様子で俺に尋ねてきた。



「ね、リョータ。この水着…どうかな?」



彼女が着ていたのは、流行りのフリルが付いた、花柄のビキニだった。



普段の智美の可愛らしさに、少し大人っぽさが加わって、見慣れない姿に俺は言葉を失う。



「…似合ってる。すっごく、可愛いよ。」



俺がそう言うと、智美は顔を赤らめて嬉しそうに微笑んだ。



「よかった。リョータにそう言ってもらいたくて、これを選んだんだ。」



その言葉に、俺はまた胸が高鳴る。



もう智美は中学生じゃない…。高校生だ。そして俺も高校生だ…。決して、ロリコンではない…はずだ。



「ね、リョータ。プール、久しぶりだね。」



「…ああ、中学ぶりかな。」



休日ということもあり、プールは多くの人で賑わっていた。



流れるプールに入ると、俺たちは手をつなぎ、ゆっくりと水に体を任せる。太陽の光が水面に反射して、キラキラと輝いている。



「ねえ、リョータ。これ、意外と体力使うね。」



「そうか?俺は全然平気だけど。」



俺がそう言うと、智美は「嘘だ~」と笑い、軽く俺の腕を叩いた。そんな他愛もないやり取りが、俺はとても楽しかった。



プールの端まで流され、俺たちは一度プールから上がる。近くのベンチに座り、かき氷を食べることにした。



「リョータ、一口食べる?」



智美が、自分のストロベリー味のかき氷を差し出してくる。俺は遠慮なく一口もらうと、智美は嬉しそうに笑った。



「うわ、冷たっ!」



「んふふ。そりゃあ、かき氷だもん。冷たいに決まってるじゃん。」



智美は、まるで無邪気な子供のように笑っていた。俺も、そんな智美の隣にいられることが、この上なく幸せだった。



(うん、やっぱ可愛い。)






その後は、波のプールでキャッキャと騒ぎ、スライダーでは智美が怖がりながらも楽しそうに叫んでいた。



水をかけ合ったり、わざと水しぶきを立てて笑い合ったり。智美がこんなに無邪気に笑う姿を、俺は初めて見た気がした。



「ね、リョータ!あれ乗ろうよ!二人乗りの浮き輪のやつ!」



智美が指差したのは、二人乗りの大きな浮き輪に乗って滑り降りるウォータースライダーだった。



「いいな!乗ってみるか!」



俺たちは列に並び、ようやく順番が回ってきた。二人がかりで大きな浮き輪を持ち上げ、スライダーの入り口まで運ぶ。



「リョータ、怖い…かも…。」



智美が、不安そうな顔で俺の腕にしがみつく。



「大丈夫だって!」



俺は智美を安心させるように、強く抱きしめた。智美の顔が、少し赤くなる。



「いくぞ!」



俺たちが浮き輪に乗り込むと、係員のお兄さんが勢いよく背中を押した。浮き輪は一気に滑り出し、俺たちは水しぶきを上げながら、急カーブを曲がっていく。



「きゃー!」



智美が楽しそうな悲鳴を上げる。俺も思わず笑い声が漏れた。



「楽しいね、リョータ!」



「ああ!最高だ!」



二人で乗るウォータースライダーは、想像以上にスリル満点で、俺たちは二人で笑いっぱなしだった。







しかし、その幸せな時間は、突然の出来事によって、わずかに陰りを見せた。



智美が、プールの向こう岸にいる誰かを一瞬見て、怯えたような表情を見せたのだ。



「智美?」



俺が声をかけると、智美は慌てたように首を振った。



「ううん、なんでもない。気のせいかな……。」



智美の表情が、少し暗くなっているような気がした。俺は、智美が何を見たのか気になったが、それ以上聞くことはできなかった。














プールから上がり、俺たちは更衣室へと向かう。



智美は、先ほどの出来事を気にしていないように振る舞っていたが、俺は、智美の表情が、どこかぎこちないことに気づいていた。



「大丈夫?本当に。」



俺が改めて尋ねると、智美は「うん、大丈夫だよ。ちょっと疲れたみたい」と力なく笑った。



(さっき、見た何かが……?)



俺の心は、少しざわつき始めていた。



帰りのバスを待つため、俺たちはバス停へと向かった。夕暮れの空が、オレンジ色に染まっている。




そのとき、向かい側のバス停に、数人の高校生たちがたむろしているのが目に入った。



皆、髪を染め、ピアスをつけ、数人がタバコを吸っていた…。



(俺たちと同じで、高校生ぐらいか………………)



男子の一人が、一瞬、俺たちの方に視線を向けたが、気にすることもなく、仲間たちとの談笑に戻ったようだ。



俺は、智美の手を強く握りしめた。智美は、俺の手を握り返し、何も言わなかった。



やがて、バスが到着し、俺たちはバスに乗り込んだ。



俺は、智美の隣に座り、智美の肩をそっと抱き寄せたると…



バスが動き出すと智美は、俺の肩に頭を預け、すっと眠りについた…。

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