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第三話「はじまりの教室」

懐かしい。この2年3組のプレート。


そして、このざわつく学校の雰囲気。俺は本当に中学生に戻っているのだろうか。


教室にはいると、見た感じ、何もかもあの頃のように見える。




「あっ、リョウター。これ、ありがとー。面白かったよー。」


「うん?」



いきなり声を掛けられ、戸惑いながらも俺は声のした方を向いた。


「面白かったー。次の巻って、今日持ってきてくれた?」


「ん?なんだっけ?」


「ん?授業中に貸してくれたじゃん。」


「ああ、それのことか。」


「あー、今日、続き持ってきてくれるって言ってたの、ひょっとして忘れた?」


分らん。何を貸したんだ?俺は?適当に返事したがさっぱり分からん。


「あー、すっかり忘れられて、うちは悲しいわー。」


「す、すまん…。」


こいつは、唯。口から生まれたようなやつだ。いつも騒がしい。クラスの中心に居るようなやつだが


誰とでも仲良くやっているようで、悪い話は聞きたことがない。少なくとも男子の間では。


「じゃあ、これ返すね。明日は忘れないでよー。」


手元に渡されたマンガを見ると、バトル系のマンガだった。


ああ、これか。これ、面白いんだけど、なかなか進まなくて、まだ終わってないんだよな。


突然のことに、戸惑ったが、どうやら単なるマンガの催促だったらしい。


唯か。明るくて楽しいやつだったから、付き合ってみたいと思ったこともあったな。


誰にでも、気軽い感じなんで、きっと自分に気があると勘違いしてしまうから質が悪い。




そういや、3年になって知ることになるが、2年の時、剣太は唯に告ってフラれていたそうだ。




あの時はそう思わなかったが、今なら、ざまあみろとしか思わんな。むしろナイスだ唯。


そんなことを考えつつ、とりあえず俺は返事をする。


「悪い!明日は持ってくるから!」


「うん!ありがとねー。楽しみにしてるからねー。」


とりあえず、この場は凌げたようだ。


この反応…、やはり夢ではないのだろうか…?やたらにリアルだ。


俺は自分の席に座り、カバンから教科書を机に入れながら、少し離れた席で友人たちと話す智美の様子を伺う。


小柄で可愛い系の顔、やや茶色かかった髪のポニーテール風。目元が可愛いと男子に人気があったが。


あらためて見ると、将来、美人になるであろう顔だと思う。


しかし、他には特に変わった様子はない。中学生らしい雰囲気の智美だ。



どうした?ぼーっとして?



声がした、斜め後ろを振り返ると、拓が居た。


この拓とは3年間一緒のクラスとなる。まあ、仲がいい友人の一人だった。


「いや、昨日、少し遅くまでゲームしててさ。ちょっと眠くて。」


「お前もかー。」


何ということの会話を交わしていると、1限目の英語の教師が教室にやって来た。


この授業は、一方的に教師がしゃべり、誰かを当てることなく、ひたすら板書の授業であるため、


正直眠い。そして、先生も注意しないため、生徒同士の小声の雑談も絶えない。


「あのさ、今日って何年だっけ?」


斜め後ろを見ながら、俺は拓に話しかけた。


「今年?平成…20年だっけ?俺もあいまいだけど…」


「やっぱりそうだよなぁ。ありがとう。」


拓の返事もカレンダーと一致した。


「なあ、今日、朝、コンビニ寄り忘れたから、昼一緒に抜けて、コンビニ行かね?」


「おー。行こうか。」


未来では、給食の中学校も多いようであるが、俺が中2の時は弁当か購買だった。


俺もたまに行っていたが、先生にバレないように学校を抜け出して、コンビニに買いに行っていたやつもいた。


拓とは、よく学校を抜けて、コンビニに買い出しに行ったもんだ。懐かしい。


「そういや、今日って、昨日の続きって持ってくるの忘れたん?」


「悪い。さっき唯にも言われたわ。」


なんか、懐かしさで、いちいち感慨深いな。感じもフワフワする。



俺は本当に過去に戻っているのだろうか…?

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