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第二十四話「平穏」

入学式前のオリエンテーション。俺は真新しい制服に身を包み、俺は智美と並んで教室の扉をくぐった。



校門のすぐ隣にあった掲示板で確認した通り、俺たちは同じクラスだ。智美は嬉しそうに、きらきらと目を輝かせている。




「よかった、一緒のクラスだね!」



「ああ。まさかこんな偶然があるなんてな。」




俺は智美の笑顔に心底安堵していた。




「おいおい。そいつは流石に冷たすぎない?」



後方から呆れた声が聞こえてくる。



「もちろん、壮馬君も一緒で心強いよ!」



アッサリと自然体で返す智美。根っからの強キャラだ。



「夫婦仲がよいのはよろしいことで…。」



俺の肩を軽く叩きつつ、俺たちの横を通って、壮馬も自分の席に向かって行った。




学校全体では中学時代の顔ぶれもちらほら居るようだ。奏と志穂は違うクラスだったので、途中で別れたが、皆、新しい制服に身を包み、どこか大人びて見える。



中学生から勉強をやり直してよかった。心の底からそう思った。社会人になってからだとさすがに忘れている内容は多かったが、



勉強のモチベーションは、受験を経験してるからこそ、保つことができたと思う。



タイムリープで使える知識なんて、大雑把なものばかりで使えない事柄が多いが、精神だけは有効に使えていると自覚している。



高校生だと使えるお金も知れてるので、確実に勝てるギャンブルであろう馬券も買えなければ、株も買えないんだから、これくらいできないとな。









「今更だけど、本当に校則ってないんだな。」




「そうみたい。心得だけだって。心得って、校則とどう違うの?って感じだけど。」




「ピアスもOK見たい。体育の時だけ外すみたい。」




「というか、教科書が重たいわ。宅配業者の受付があるのが妙だとは思ったけど。」




「教科書って、こんなに量があったのか…。」



教科書販売も兼ねられていたため、購入したのだが、中学校と比べて圧倒的に多い。



こんな量と重さがあることなんて、完全に忘れていた。タイムリープのアドバンテージゼロだわ。オイ…。



地元の駅に降りたところで、予想外の運動からか、女子陣からの休憩したいよオーラに負け、こうしてマクドで初登校の感想を言い合っていた。




「そういえば、話は変わるんだけど、今度同窓会しない?」



「え?もう?この前卒業したとこじゃん。」



「唯からメール来てた。高校失敗したって。皆で愚痴聞いてって…。」



「早いな。まだ学校始まってないだろ…。」



「なんか、受験の時は緊張で気が付かなったみたいなんだけど、合格してから電車の時間を図るために朝乗ってみたら、地獄だったーって…。」




「ああ…。唯の学校は電車3本ぐらい乗り換えるんだっけ。でも、それは制服が可愛いだけで決めた唯が悪いんじゃないのか?」




「それ、唯が聞いたら、どうなるか知らないよ?」




「じゃあ、今日は壮馬のおごりだな。」




「お前ら酷いな。ってか、もう会計終わってるじゃん。」




「あはは。」






他愛もない会話。こんな日常に俺は幸せを感じることが多い。



ネチネチ嫌味を言われ、明日の納期の仕事を当日の夕方に言われることもザラだった日々からすると、なんと素敵な日々だろうか。






「でもさ、ゆきちゃんとか、なっちゃんとか、卒業してから付き合い始めたんだよね?」




「うん。ちょっとびっくり。」




「そうなんだー。いいなー。ゆきちゃんって、6組のだよね?」




「そうそう。って、1年の時、秋本君と付き合ってたよね?」






俺と壮馬を置いてけぼりにして、本格的にガールズトークが始まってしまったようだ。




ふと壮馬を見ると、向こうも同じようなことを思ったらしく、俺と目が合った。




「しかし、リョータと同じ高校になるなんてな。」




「ん?嫌だったんか?」




「違う…。急に成績が上がって来たから、天才ってのはこういう奴のことを言うのかと差を感じたよ。」




「いやいや、努力だよ努力。天才ってのは、奏みたいな。」




「ああ、奏は天才肌だな。そんな皆と高校も同じであることが、俺は嬉しいんだ。」




「お前、ほんと中学生か?言い方が超おっさんクサい。タイムリープとかしてないよな?」




「それはそっくりそのままお前に返すさ。おっさんクサさではリョータには負ける。」




「なっ。」




「気が付いたら智美と付き合ってたり、どんだけ手が早いのって。」




「手が早いって…。」




「だから、おっさんクサさでは負けてる。」




「愛の力だよ。」




「そういうキモイ台詞をさらっと言えるところがおっさんだっての。」




「お前な…。まったく。」







まだ、ガールズトークは終わりそうになかった。






ところで、全くの余談ではあるが…、俺はマック派ではなく、マクド派だ。

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