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第十五話「嘘告」

「リョータのことが好き。だから…、私と付き合って欲しい。」


奏の告白を聞いた俺は、少し黙っていた。


そして、奏の目を見ながらハッキリと返した。


「ありがとう…。でもさ、全然本気じゃないでしょ…。」


「意外と人を見てるのね。正解。全然、本気じゃないよ。」


奏は悪びれた様子もなく、アッサリと言った。







時間は、今日の昼休みに戻る。


いつものように拓とサッカーに行くところが、生憎の雨に降られて、俺は教室で雑誌を読んでいたところ、奏が傍に寄ってきた。


「今日って、放課後時間ある?」


「ああ、別に予定はないよ。」


「じゃあ、ちょっと残ってくれない?」


「ああ、いいよ。用事か?」


「うん。そんなとこ。」



そうやって何の用事か全く分からないまま、教室に残され…、


連れてこられた先が、北校舎の理科室裏だった。


3年になって、クラスが分かれたからか、めっきり奏の顔を見る機会も減った。


部活の雑用かと思っていたところ、奏が話し出す。


「ねえ。リョータ。」


「何だ?」


「モテキって聞いたことある?」


「ああ、人生には何度か、モテる期間が来るってやつか?」


話の意図が分からないまま、俺は聞かれるままに答える。


あれ?そういえば、こんな風に奏と2人きりで教室に残ったことがあった気がする…。


あれは何だったか…。



「私ね、思うんだ。良い男って、女子はほっておかない。」


「うん。」


「そう考えた結果、私は結論を出した。」


「うん。」


「良い男には彼女が居る。彼女が居る男は良い男。彼女が居たとしても、良い男にはアタックしていいよね。」


「は?」


「リョータは今、モテキ。だから…。」




「リョータのことが好き。だから…、私と付き合って欲しい。」









何だ…、この雑な告白は…。


こんな適当な告白があるのだろうか。


普段、意識することなく接しておいてなんだが、…奏は美人だ。


実は読モをやっている。そんな風に言われてもおかしくないレベルだ。


制服姿ですら存在感があるのだから、私服の奏は結構、ナンパをされることも多いらしいと聞いた。

性格はややきつめではあるが、誰とでも気さくに話すし、人当たりもよく、リア充中のリア充、そう呼んでも差し支えないだろう。


それが奏という女子だ。


そして、俺は完全に思い出した。これは嘘告だ。


一度目は何が何だか分からないまま、告白されて、迷っている間に、即決できない男子はゴミだ屑だとボロクソ言われて、嘘告だとネタばらしされたやつだ。


なんだこれは。嘘告を2回もされるって、俺ってどうなのよ。


「…こんな適当な告白は初めてだ。」


「ちょっと智美と付き合ってるからって、調子に乗ってる罰ね。」


「何で、智美と付き合ってたら罰が下されるんだよ…。」


これは酷い。嘘告自体もかなり適当だ。


罰ゲームなのか何か分からないが、奏がこの役をやることとなり、適当にその役をやった。そんなとこだろう。


何で、世の中のリア充ってやつらは、こうモブのメンタルを削って楽しむのか理解に苦しむ。


しかし…、このやる気のなさで、俺も本気と全く思わず、傷付かなかったことも事実だ。


女子カーストのトップに君臨する奏ですら、断りづらい何かがあったのだろう。


「私さ…。」


「ん?」


「壮馬のことが好きなんだよね。」


一瞬でも奏のことを心配した俺がアホみたいだ…。


すっかり毒気を抜かれた俺は奏に聞く。


「これは女子同士の罰ゲームか何か?」


「当たり。珍しく勘が鋭いね。」


「お前、俺が被害者って忘れてるよね?」


「被害者?私に告白されて何の被害があったの?」


「いや、俺、彼女持ちだからね?」


「あー、暑い暑い。」




そして、彼女はふぅっと息を吐き出すと、満面の笑みをこちらに向けてきた。


「バカップル。」


「なっ!」


そうして、彼女は荷物の置いてある教室の方に歩き出した。

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