表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

攻略対象ですが、ヒロインがアレすぎる

作者: ピヨ

この世界で僕の一番古い記憶は花びらが舞い散る公爵家の庭。

「アレクサンダー。貴方の婚約者、フィオナです。」

まるで名人が精魂込めて作ったかのような美しい造形。プラチナブロンドの髪を軽く揺らし膝を折る少女は、ただただ美しかった。

僕は軽く礼を返した。お互い5歳だった。

そして僕は自分が転生者であり、ここが僕が最後にプレーしていた乙女ゲームの世界だと気づいた。


それから10年。前世は前世、今世は今世だ。

幸いにもこの今世の身体は鍛えればきっちりと筋肉がつき、頭も勉強したことがすっと入って理解できる。

王太子になってしまったのは仕方ない。乙女ゲームでは破天荒なことも起こったが、僕は王太子として正しく生きようと思っていた。

だから、遅刻してくるヒロインを見つけて道案内する出会いイベントを避け、早くから来て講堂にある控室に籠ったのだが、よりにもよってヒロインも僕を避けて早めに登校しているとは知らなかった。

早めにきた新入生は目立つ。ヒロインは僕に案内されないように、先に講堂に来て、目立たないように控室に入ってきた。

「うぎゃ。ホンモノ。」言い出したところで彼女が転生者なのはわかった。

こうなるとどうしよもない。ヒロインと僕は自己紹介をしてその日のうちに友達になってしまった。

「アタシ、お花畑ヒロインなんですよぉ。」このゲームのヒロインは下級貴族の男爵令嬢、それも爵位持ちの母に婿入りした筈の父親が失踪しており、形見の狭い立場の筈だ。なんでお花畑なのだ。

「ええ、ワタクシ、フィオナ様の大ファンで。」

「フィオナは確かに美しいな。」

「当たり前です。特にあのちょっと困った時の小首をかしげる感じが、ああこれからフィオナ様を拝める、、。これから取り巻きの方々に虐めてもらって、フィオナ様と関わるんですから邪魔しないでくださいね!!」

ヒロイン、アマーリアは宣言どおりよく虐められていた。靴を捨てられ、教科書を隠され、図書館の隅で本を投げつけらえている時はやりすぎだと思ったが、頭にタンコブを作りながらも瞳をキラッキラに輝かせてフィオナをみる姿を見て止める気もなくなった。

そして、虐められたいので仕方なくと、僕に近づいてきた。

二人になれば話すのは、大半がフィオナの美しさだが、続いてはこの世界の素晴らしさだ、身分制はあるがインフラが整い清潔で貧しい人はいるが、飢えた人はいない。現王の治世と外交的配慮など、そして最後は必ずフィオナと二人でこの美しい世界を護って欲しいと言われる。

「ああ、無論だ。」


先に疲れたのはフィオナだった。

もう婚約解消してほしいと言う。

後宮を取り仕切る母は他界しているので父である陛下から事情聴取があった。


フィオナが呼ばれ、3人で話をした。

「フィオナ嬢、愚息が申し訳ない。」頭を下げる父をフィオナがそのブルーグレーの目を見開いて見つめている。あれ?これは?

僕はフィオナのファンだ。だから表情を見誤ったりしない。

フィオナは僕を、他の誰も、こんな目では見ない。

「フィオナ、君は陛下が。」

耳を桃色に染め、息を呑み、うなだれるフィオナの美しいこと。

ああ、この綺麗なフィオナをアマーリアに見せたい。と僕は思った。

そう今の僕は、ヒロインの癖に鼻の穴を膨らませ、推し、フィオナの美しさを力説するあのアホに恋している。


それからはバタバタだった。

父は18で僕を儲けてその時、35。

35歳の寡のオッサンが17歳の美少女に落とされるのに時間はかからない。

子供もまた出来るだろうから僕は廃嫡してもらい、アマーリアの男爵家に入り婿しようと思った。

そう、今世は王太子だから頑張ったが、スローライフの方が向いているんだ。

アマーリアは快く了解してくれたが、父に話すと渋られた。息子の婚約者をとったことになるので、その上廃嫡は外聞が悪いらしい。

「アマーリア嬢、悪いが息子は諦めてくれないだろうか。これの母は隣国の王女で、廃嫡は外交的に避けたい。」

「そうですね。考えなしでした。了解です。諦めます。」あほ、いつもお花畑の癖にこんな時だけ理解が早い。

「済まない。私もフィオナ嬢は諦めよう。」オヤジ、この中年。何ヘタレてんだ。

「私は尼僧院に行きます。」フィオナ、何トチ狂っている。

「僕はアマーリアを諦めませんよ。」

「あの~~~。アタシもです。」ぶれすぎなアマーリアが続けた。「アタシ、ヒロイ、、、。じゃなくて、やればできる子なんです。なんとかします。スローライフも良いかなとおもったけど、アレクと一緒に王妃フィオナ様が見れる王太子妃になります。」

「いや、男爵家では、高位貴族の養女にしても、王太子妃は難しい。」

この難しい、は無理の意味ね。ハイ、大人用語です。

「ダイジョウブですよ。アタシの父親、精霊王なんです。」

あれ、俺も設定、忘れてた。



娘のアマーリアが呼ぶと精霊王様は、はいはーい。と顕現された。

精霊の時間では1~2年も1~2日も同じようなものだそうで、ちょっと用事をしていただけの心算で失踪者になっていたとか。娘に呼ばれなければ、気づかないうちに人である妻が老衰で死んでいたかもしれない、生きているうちに敢えて助かった、と大層感謝された。精霊王様で人の生死には干渉できないそうだ。妻であるアマーリアの母は精霊の血を引くので結構可愛いアマーリアと違い全く普通のオバサンに見えるが、精霊王様には無二の人だたらしい。人族の王宮の騒ぎなど全く意に介さず全力で再度のプロポーズをしたところ、アッサリ精霊になることを了承し、アマーリアは人として僕と生きることを精霊の時間では1~2年も1~2日も同じようなものだ。決めた。

ちなみに精霊王様は娘が楽しく虐められていたのは知っていたが、人とは判断基準が違うらしい、娘が満足していたことは知っており幸せそうでヨカッタと思っておられたとか。


そして今日もオタク談議に花が咲く。

推しは見て愉しむもの、オタクは集って語り合うもの。

俺はほんまに幸せや。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ