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第24話 クリスマスパーティー②


「マジかよ……」


 そんな苦笑混じりの新太の呟きが、浴室に虚しく響く。

 視線の先──スライド式の浴室の扉が開かれ、脱衣所から詩葉と琴音が入ってきた。


「あ、新太君……一緒に入っても良いですか……?」


「聞く前に準備万端で入ってきてんじゃねぇか……」


 新太は目のやり場に困り、明後日の方向を向くしかなかった。

 何せ、二人の格好は流石に刺激が強いのだ。


 どちらもビキニを着用している。


 詩葉は白色のビキニで、胸のところにフリルがあしらわれた可愛らしいデザイン。

 流石元子役というだけあって、非常に均整の取れた身体。細くしなやかな手足に、まだ成長途中の膨らみ。


 そして、隣に立つ琴音は空色のビキニ。

 デザインは非常にシンプルながら、持ち前のスタイルが際立っており、非常に美しい。

 同年代のそれと比較するとやや貧相ではあるが、確かにそこには双丘が存在すると主張するように谷間が窺える。


「あれ、こんな可愛い乙女二人の姿に何の感想もなし?」


「琴音、勘弁してくれ……」


 恥ずかしがる新太の様子に、クスクスと笑う琴音。

 しかし、どうやら二人は感想をもらえるまで動かないようで、ジッと新太を見詰めている。


 新太一度ため息を吐くと、観念したように改めて二人に視線を向ける。


「……二人とも、凄く良いと思います」


「えへへ……」


「ふふっ」


 満足そうに微笑む詩葉と琴音。

 しかし、そんな二人に向けて新太が────


「取り敢えず、一枚タオルくれない?」


 そう、今は入浴剤の入った湯に使っているため大丈夫だが、立ち上がったら何も隠すものがなくなってしまう。

 何がとは言わないが、今見られるのは非常に不味い。


 詩葉と琴音は何となく察したのか、苦笑いを湛えて新太にタオルを差し出すのだった────



 □■□■□■



(かゆ)いところはありませんか~?」


「ない、けど……どうしてこうなった……!?」


 鏡の前の椅子に座らせられた新太は、今更ながらにこの状況にツッコミを入れた。


 現在、新太の髪を、詩葉が後ろからワシャワシャと洗っている。


 浴室に充満した湯煙が鏡を曇らせているため、新太は後ろの様子を確認することが出来ない。

 だが、それで良いのだ。

 可愛らしい水着姿の詩葉が自分を洗ってくれている姿などを見てしまったら、悶絶モノだ。


「どうしてと言われても……一緒にお風呂に入ってすることと言ったらコレじゃないですか?」


「いや、一緒に入ったことないから知らん!」


「そ、それとも、もっと過激なサービスをご所望で……ッ!?」


「違うから!」


 新太はクルッと振り向く。

 すると、眼前数センチのところに詩葉の顔があった。


 いつも下ろされている亜麻色の髪は湯で濡れており、後頭部で一つ括りにされている。

 突然振り返ったことに驚いたのか、栗色の瞳は大きく開かれており、新太の顔を映していた。


 両者の間に微妙な沈黙が流れる。


 そして、詩葉がどこか熱を帯びた瞳で何かを求めるように新太を上目遣いに見詰めて────


 バシャッ!


「ちょっと、私がいること忘れないでほしいんだけど?」


 浴槽に浸かっていた琴音のそんな声を聞いて、新太は今自分が湯を掛けられたのだと理解した。


 このまま見詰め合っていたらどうなっていたかわからない新太と詩葉は、互いに居たたまれなくなって目を逸らす。


「じゃ、詩葉交代ね。次は私が洗ってあげる」


 そう言って詩葉が浴槽に、琴音が新太の後ろに座る。

 ボディータオルを手に取り、ソープをつけて泡立てる。


「背中だけで良いからな? 流石に前は自分でやるから」


「別に気にしないから、前もやってあげても良いよ?」


「ばっか! 俺が気にするんです!」


 琴音は小さく笑いながら「はいはい」と言って、早速新太の背中を洗い始めた。


「新太、もうちょっと肉つけた方が良いんじゃない? ガリガリだよ~?」


「いや、ガリガリってほどじゃないだろ」


「えぇ、そうかなぁ?」


「っ……ちょ、琴音ッ!?」


 スルッと琴音の細い腕が新太の腰に回される。

 そして、密着するように琴音は新太の背中に寄り掛かった。


「ほら、細い」


「お、おい……」


 新太は自分の心臓が跳ねたのを自覚した。


 背中に、何か柔らく弾力のあるものを感じる。

 何より、直に肌と肌が触れ合う感覚に、ドキドキせずにはいられない。


「あぁあああ! お姉ちゃんズルいよ! 私は我慢したのに~!」


 不満げに頬を膨らませた詩葉が浴槽から飛び出し、「だったら!」と新太の横に来ると────


(……何、この上質な枕)


 詩葉の胸に頭を抱かれた新太は、心の中でポツリと呟いた。


 背中からは琴音に抱かれ、頭は詩葉の胸の中。


「マジで、俺の理性はよく耐えてくれてるよ……」


 ここまでされて本能に負けないことを称賛してほしいと、心の底から思うのだった────



 □■□■□■



「ってかさ、俺どこで寝れば良い?」


 入浴を終えた三人が、詩葉の部屋で談笑していた中、新太がふと疑問に思ったことを口にした。


 正直新太はどこでもよかった。

 リビングのソファーで寝るもよし、もちろん新しく布団を出してくれてもよし。


 しかし、詩葉と琴音は何を当たり前のことを聞いてるんだと言うように顔を見合わせて答えた。


「「ここ」ですよ?」


「……は?」


 前言撤回。

 どこでも良いわけではなかった。


 頼むからソファーか別の部屋で寝かせてくれという新太の願いは、無惨にも砕け散った────

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