真夜中の湖
| 静かな夜。水面に映る月。心地よい風。
「月がきれいですね」
「……お前、意味分かって言ってんの?」
「ん?」
「いや、俺たち男同士だし……」
「はっはっはっ、軽い本気だよ」
「本気かよ?」
「いや、本気に決まってるだろ?」
「本当に本気かよ?」
「冗談だよ。冗談」
「今のご時世、シャレになんないよ!」
「……いや、思い出しちまってな」
「何を?」
「何年前かなぁ? 好きな娘と真夜中の湖に来たんだ」
「その時、さっきのセリフを……?」
「……言えなかった」
「ヘタレかよ?」
「まぁ、そう言うな」
「……まぁ、誘い出せただけでも、俺から見たら勇者だよ」
「楽しい夢だった」
「夢の中でもヘタレかよ?」
「……なぁ、思うんだ」
「何だ?」
「『リア充は爆発するので危険です』って、ネットで拡散したら、政府がリア充を駆逐……」
「しねーから!」
「やっぱり?」
「ああ」
「……なぁ、俺たち、ずっと、こうなのか?」
「……歳は取るだろ」
「ずっと友達だな」
「……すげぇ複雑な感情が芽生えたんだけど」
「『ずっ友』だな」
「氏ね」
月が微笑んだように見えたのは気のせいか?