第1話 読みかけの本
この作品を読むに当たり…
・この作品は、「東方project」を元とした二次創作小説です。
・年齢制限をつけるほどの表現はしませんが、同性愛とも取れる表現が出てきます。
・一部、暴力的な表現が出てきます。
以上のことが苦手と言う方は、この小説を読むことはお控え下さい。気分を害される恐れがあります。
また、
・原作と設定が異なる
・作者のキャラクターの捉え方が、自分(読者様)の捉え方と違う
・更新が遅れる可能性がある
以上のことを容認される方のみ、本文をお読み下さい。
下手くそで、拙い文章ですが、お楽しみ頂けるよう一生懸命執筆します。
誤字脱字、文法間違い、その他面白かった所や改善点など、どのようなことでも良いので、感想を送って下されば幸いです。
長々と失礼しました。それでは、私の描く幻想郷の世界を、お楽しみ下さい!
「アリスーー!!」
少し古ぼけている洋館の主に、私は大声で声を掛ける。
ノックをするなんてまどろっこしいことはしない。こんな深い森の中にわざわざ訪ねて来るなんて奴はいないだろうし、これもいつものこと。アリスだってわかってくれるだろう。
暫く待っていると、ドアが勝手に開く。別に誰が開けた訳でもない。…いや、正確に言うならば開けた生物はいない、と言うべきか。
ドアを開けた張本人である等身大の人形は、私が入るのを待つかのようにじっとドアの横に立ちつくしている。
初めて見る人は、人形が自らの足で歩き、動いているのを見ると、驚いたりもするそうだが、見慣れている私にはそれが普通の光景にも見える。
…そう、アリスの能力は人形を操ること。魔法を使うという点に関しては私と同じではあるが、その魔法のタイプは根本から違う。だからこそ話が合ったり合わなかったりで面白いのだが。
私はいつも通りに人形に荷物と箒を持たせ、遠慮することもなく部屋へと上がる。
「全く…。いつになったらノックってものを覚えてくれるのかしら」
少し不機嫌そうなアリスは、ソファに深く腰掛け、腕を組んでいた。だがそんなことを気にする私ではない。何せ、いつもこうなのだから。
「わりぃわりぃ。ついいつもの癖でな」
私はそう言いながら、アリスと対面するようにソファに座る。
「それで?
今日は何の用?」
人形が持ってきた暖かな湯気を立てるティーカップを手に取り、少し甘い香りを放つ紅茶を一口ほど啜る。その間ずっと私を見ていたアリスも、同じように紅茶を啜った。だが、その瞬間に、ほんの少しだけアリスの表情が歪む。
「…アリス、この紅茶好きだったっけ?」
確か、苦手と言っていた気がする。味も苦手だが、何よりこの甘い感じが気分を害するらしい。そんな嫌いな紅茶を飲んだのだから、表情が歪むのも頷けるが…
「…好みが変わったのよ」
アリスはもう一口ほど紅茶を啜ると、少し手荒にソーサーへとティーカップを戻す。陶器同士がぶつかる独特な音が部屋中に響き渡った。
「別にいつも押し掛けるからって、私の好みに合わせる必要はないんだぜ?」
口一杯に広がる香りを楽しみながら、私はからかうようにそう言った。とはいっても、本人がそう言うのだから本当に好みが変わったのかもしれないが。
「そんなのじゃないわよ。
紅茶を買いに行ったらいつものやつが売り切れてたから、久しぶりに別の紅茶でも飲んでみようと思って」
「それで?
久しぶりに飲んだ紅茶の味は?」
「………美味しくない」
その言葉に、私は大きく笑い声を上げる。
別に、何かが可笑しい訳でも、アリスをからかいたい訳でもない。だが、どもりながらも小声で反論するアリスの姿が何とも言えず可愛らしく、微笑ましかった。
「いやはや、好みってのは別れるものだな。私はこの香りが何とも言えず好きなんだけどな」
笑っていた私に軽く頬を膨らませていたアリスは、一瞬で膨らませていた頬を赤らませ、はにかんだ笑顔を見せる。
「…美味しかった?」
「あぁ、美味しかったぜ!」
「…ありがとう」
アリスはそう言いながら、にっこりと微笑んだ。
その後は二人とも魔術書に目を落とし、黙々と読み耽った。特に何をするわけでもなく、暖炉にくべられた薪を、火が少しずつ焦がす音を聞きながら。
…本という物は、魔術を使う者において切っても切れぬ存在にある。まぁ他の分野においても本は重要ではあるのだろうが、こと魔術に関しては、新たに見つけられる魔法の数があまりに微々であるために、先人の残した知識はとても役に立つ。
他の魔女や霊、妖怪に比べ、人間である私の寿命はあまりに短い。それをカバーするためにも、本を読むことはとても大切なのだ。
とは言っても、生まれてまださほどの年月を経ていない私が所有する本や知識は、まだアリスやパチュリーから見れば子供騙しのような量しかないために、私はよく他の魔女の持つ本を拝見しにきている。
よく盗んで…。借りて帰るのだが、毎度借りていると立ち入り禁止になりそう(実際には数回ほどなっている)なので、勝手に家に上がり込んでは読み耽ることを繰り返しているのだ。始めこそ渋々の様子だったアリスも、次第に慣れてきたのか、今ではこうして紅茶を出してくれるまでになっていた。
…まぁ、自分で言うのもなんだが、あぁ毎日来られると嫌でも慣れるよな、なんて考えると、自然と顔がにやけてしまった。
ふふ、改めて思えば、なんか嫌な性格だな。ま、更々直す気はないが。
ふと、時計を見るために顔を上げる。昼過ぎに来たにも関わらず、もう夕刻が近い。もうそろそろ帰らなければ…。
私は本をぱたんと閉じ、腕を宙に突き上げるようにして伸びをしながら立ち上がる。同じ姿勢を取り続けていたために、背中や肩の関節が軽い音を立てながら鳴った。
そんな私の行動を見てか、アリスも顔を上げ、時計を確認しているようだった。
「…もう夕方だなんて。
時間が過ぎるのは早いわね」
「全くだ。
まだこれっぽっちしか読んでねぇのに」
私は手に持つ本に挟んだしおりの位置をアリスに見せつける。その位置は、初めのページから数ミリ程度の所で、如何にこの本を読み進めるのが難しいのかを表していた。
…少し大きめの紙に、かなり細かな字、おまけに作者直筆でかなり癖字ときたものだから、別に私の読むスピードが遅いとか、理解力が乏しいと言う訳ではない。たぶん。
「あ〜
その本は特に難しいからね」
座ったまま伸びをしながら、アリスはそう言う。
「全く、実験とか結果とかを、もっとわかりやすく書けば良いのに!
それにもっと字を綺麗に書け!」
「別に複雑難解な文章であることは、読者に正確に術を理解して欲しいからだし。それに字の汚さは誰かさんの方が上だと思うんですけど」
…返す言葉がない。
「アリス〜
まるで私が悪いみたいな言い方をするなよ」
「あら?
本の作者には罪はないし、それに、そんなに嫌ならもう読まなくていいのよ」
アリスはいかにもわざとらしい笑みを浮かべながら、私に手を差し出す。ここまで読んできて没収されるのも嫌だったが、私はベーッと舌を出しながらもアリスに本を差し出した。ここへの立ち入り禁止を防ぐためにも、今日のところはアリスに返すしか方法はないからだ。
「しおりは抜いてくれるなよ」
私から受け取った本をぱらぱらとめくるアリスに、とりあえず釘を刺しておく。…そもそもは彼女の本なのだから、何をしてもこちらが言えたことではないが…。そこは気にしないでおく。
「はいはい。
まぁ私もこの本を読むことはないだろうから、大丈夫と思うわよ。たぶん」
「たぶんってなぁ〜
次に来るときまでは頼むぜ?」
私が人形から箒と鞄を受け取っている最中、アリスは私が読んでいた本と自分が読んでいた本を本棚へとしまっているようだった。
荷物を整え、玄関へと向かう私の後を、アリスはただついてくる。最近では出迎えはないものの見送りは恒例の行事になっていたために、そんなアリスの行動も何となく予測がついた。
「それじゃあな!
また、近い内に来るから!」
私は少し離れて立つアリスにそう声をかけると、魔法で浮かせてある箒に腰掛ける。
「………別に、本の続きが気になるなら、泊まって行ってもいいのよ?」
呟くように、アリスはそう言った。夕焼けの赤が支配する中に立つアリスだが、それとは別に、頬が紅潮している気もする。
…今まで、数えきれないほどこうして見送ってもらったが、泊まりの誘いを受けるのはこれが初めてだ。
いつも、“次に来るときには盗んだ本を持ってこい”とか“その鞄の中に本を隠し持ってないか”などと聞かれるのが普通だった。それだったら、曖昧に返事をしてその場から飛び去ってしまえばこちらのものなのだが、今日のような言葉をかけられると、いつも通りにあやふやにしていいものなのか、迷う。
決して、アリスの家に泊まりたくないという訳ではない。ただ、明日の都合上、今日は何とも間が悪いのだ。とはいうものの、折角誘ってくれたアリスを目の前に断るのも悪い気もするが、用事があるからには断らなければ…
「あ〜っと…
ちょっと、明日人と会う約束があってな。泊まると時間的に早朝の出発になるだろうから、またの機会じゃだめか?」
「もっもちろん魔理沙にも事情があるでしょうしね。
…こんなこと言って、私ったらどうしたのかしら?」
アリスは肩をすくませて、少しおどけたように見せたのだが、やはりどこか落胆しているようにも感じる。仕方のなかったことといえど、どこかしら罪悪感を拭うことは出来なかった。
「…もう暗くなるから、魔理沙ももう帰らないと」
遠慮がちに、アリスが帰宅を促す。確かに、夜になれば生気につられて妖怪共がわんさかと寄ってくる。まぁ魔法で一気に蹴散らせば良いが、それでも会わないに越したことはない。私はアリスの助言通りに家路につくことにした。
「それじゃあな、アリス」
「じゃあね、魔理沙」
お互いに手を振りながら、私は地面を蹴って空中へと舞い上がった。冷たい風が頬を切り、手を振るアリスはどんどん小さくなり、ついには見えなくなった。
…もしも、私がアリスの家に泊まりに行ったら、どうなるのだろうか?
邪魔する物も何もない空中で、私は考えに耽る。
たぶん、アリスとは何もない。夜が更けるまで本を読み、ソファか何かで眠る。夕食も出るだろうが、普段のアリスの様子からして、特に危ないような物は出ないだろう。そして朝起きて、また小難しい本にかじりつく。…何か、学習塾みたいだな。
ふと、霊夢のことが頭を過ぎった。
私が泊まり込みでアリスの家に行ったことがバレれば、様々な方面からいじられるに違いない。あることないことを根掘り葉掘り聞かれて、大笑いされる。さっぱりした性格の彼女は、そんな話題を後々まで引っ張ることは無いが、それでも自分が槍玉に上げられている時は、顔から火を吹けるのではないかと思うほど恥ずかしい。
霊夢は、博麗神社と言う神社の巫女さんで、この私たちが住む幻想郷の結界などを管理している。
故に、自然と彼女の周りには人が溢れ、情報も集まる。
そんな彼女に隠し事をすることはとても難しい。
私の例を言うと、魔法で裏山の半分程を吹き飛ばしたことも、霊夢のおやつをこっそり盗み食いしたことも、アリスから本を借りたことさえも、霊夢は正確に把握していた。その情報をどこから仕入れているのかは定かでないが、霊夢に知られないようにするには、何かの工夫が必要なのだ。…最も、その方法を知る人に出会ったことはないが。
そんな莫大な情報を持つ霊夢だが、彼女はそれを元に誰かを脅したり、何かをせしめたりはしない。
他人に暴露することも滅多にないし、あったとしても、その情報を教えることが最前の策であるときだけだ。実際私も彼女にいじられてはいるが、その背景には“二度とその失敗を繰り返さないように”という戒めの意が含まれていると思う。だからこそ彼女は信用され、それによって新たな情報を得るのだろうが…
そういえば、最近博麗神社に顔を出していない。何だかんだでアリスかパチュリーのところに引きこもり、本を読んでいた。 暫く考えた結果、アリスの読みかけの本を読破したら霊夢に会いに行くことに決めると、私は箒の飛ぶスピードを上げて家路を急ぐのだった。
私にとって、これが初めての東方小説となります。ですので、不慣れな点やおかしな点もあると思いますが、なにとぞ暖かい目で見守って下さい。
この作品の他にも、私の頭の中でもう一作品ほど、東方の小説を試案しております。この試案中の作品は、この小説の反応を見ながら掲載して行きたいと思います。
“ピースブリッジの書く、他の東方projectの作品も見たい!”と言う方がもしもいらっしゃれば、感想の方にその旨をお伝え下さい。その作品が掲載出来るよう、執筆を始めようと思います。