エピソード3 ~宇宙で一番明るくて暗い光②~
ゲスの登場。
ヤバいヤバい! マジでヤバい!!
ドアを開けたらいきなりエイリアンだらけ、こんな状況は流石に想定外だよ。
完全に入っちゃダメな部屋だった。
しかもアイツら、銃みたいなもの持ってるし。こっちに向けてるし。
あきらかに敵じゃん、めちゃくちゃ怖いんですけど!
それと、真ん中で偉そうにしてるアイツ!
出っ歯の緑色エイリアン、あれはどうみても悪者顔でしょ。
「ソーラ……怖いです……」
「大丈夫、何とかするから」
そうだった、チコタンもいるんだから、私がしっかりしなくちゃ。
何とか逃げ道を探すのよ。
右はエイリアンだらけ、左もエイリアンだらけ、部屋の奥は……
あれ? 奥に見えるあの水槽、中に入ってるのって──
「私だ! 見つけた!!」
私の体、発見!
よかった、無事だったのねマイボディ。
見慣れてたはずの顔、髪、体、おっぱい、全てが凄く懐かしく感じるよ。
あとは無事に取り戻せれば、一つ目の目的は達成かな。
ところで、せめて服くらいは着させておいほしいな。
いくらエイリアン相手でも、素っ裸で標本みたいにプカプカ浮かんでるのは、流石にちょっと恥ずかしいよ。
そういえば無駄毛ってちゃんと処理してたかな……。
いやいや、それよりも今はこの状況を何とかしなくちゃだよね。
「私の体? 特異点のことを言っているのか?」
あれ? コイツの声、聞き覚えある気がする……
そうだ! 学校からの帰り道で、私に声をかけてきた不審者だ!
今はっきり思いだした。私、学校から帰る途中で、この変態に攫われたんだ、
「不審者? 変態? なるほど合点がいったぞ。お主さては、特異点の娘だな?」
げぇ、またバレてるよ。 あの時と同じだ。
これって絶対心が読まれてるよね、エイリアンってそういう能力があるのかな?
まあでも、やることは変わらないし、心が読まれてても関係ないか。
「なるほど、分離した特異点の精神が見習いの体に宿ったのか、興味深い現象だ」
「だったら何? 私はそこにある自分の体を取り戻すの。そしてこの体、ユイタソちゃんを実験に使ったクソ野郎を探すの。忙しいんだから邪魔しないでくれる?」
「ほう? よかったではないか、探しものはここに揃っているぞ」
揃ってる? 何言ってんのコイツ?
「勘の悪い娘だな。その体、ユイタソに心身分離の術式を施したのはこの私、ゲスーチ様だと言っているのだ」
ああ、そういうことか。
よし、クソ野郎も発見。自分から名乗りでてくれてどうも。
ゲスーチか、名前の通りゲスい顔してる。
「一応聞くけど、どうしてユイタソちゃんを実験に使ったの?」
「愚問だな。特異点を手に入れるためには、心身分離術式を行う必要があった。だが心身分離装置は動作が安定しないのだよ、そこでユイタソを使い実験したのだ。お陰で本番は上手くいったぞ」
ふーん、案の定クソでゲスな理由だったか。
「ゲスーチ様……どうして……」
「チコタンか、本当は成績の悪かった貴様を実験動物に使いたかったのだが。ユイタソが自ら実験動物に志願したのだ。全くもって馬鹿な小娘よ」
「ひどいっ……私達の命を何だと思っているのですか!?」
「ハッハッハッ、貴様等のような見習い研究員の命より、特異点確保の方が重要に決まっておるだろう? それに比べれば貴様等の命などゴミ同然よ」
「ううぅ……そんなぁ……」
……は?
このクソ野郎、マジで何を言ってんの?
本気で一ミリも理解ができない。
実験動物? ゴミ同然? この子達が?
「ふんっ、やはり地球人は低脳で遅れておる。貴様ごときに理解してもらおうとは思わんよ」
ああ、また心が読まれてるのかな? そうですかそうですか。
「ま、そんなのどうでもいいけどね」
よく分かった、コイツ本物のゴミクズだ。
胸糞悪すぎて血管が切れそう。
絶対に一発ぶん殴ってやる。
「暴力か、地球人らしく原始的なことよ。しかし、特異点を失った精神だけの小娘に何ができる?」
……うるさいゴミクズだ。
「教えておいてやろう。見習い研究員の命も、地球人の小娘の精神も、特異点に比べれば何の重みも無いゴミだ」
地球人だの宇宙人だの。
特異点だの見習いだの。
そんなことはどうでもいい!
命を軽んじるやつを、私は絶対に許さない!!
「人の命に、重いも軽いもあるもんかぁ!!」
次回、主人公覚醒。
次話もよろしくお願いします!