エピソード3 ~宇宙で一番明るくて暗い光①~
うっかりソーラ「てへっ」。
機械だらけの狭い通路。その中をフワフワ漂うチコタンと私。
少し休んで、満腹だったお腹を落ち着かせたあと。今は二人で宇宙船の中を散策中。
でもこの宇宙船、床は銀色、ドアも銀色。壁と天井にも銀色の機械がびっしり。
あっちも銀色、こっちも銀色。銀色銀色銀銀銀!
あーもう! 目がチカチカして気が狂いそう!
似たような景色ばかりで、どこを進んでるのか全然分からない。
チコタンも船内の地理にはそこまで詳しくないみたいだし、結構本気で困り中。
とりあえず、私の体を取り戻したい。
それから、チコタンとユイタソちゃんの敵を討ちたい。
まあ、完全に迷子だから、どこに行けばいいのかも分かってないんだけどね……
「ソーラさん」
「私のことは呼び捨てでいいよ。それと、ソーラじゃなくて空だから」
「分かりました、ソーラ」
あれれ? もしかして空っていう名前、宇宙的には発音しにくいのかな? 別にソーラでもいいんだけど。
「ところでソーラ、目的地は分かっているのですか?」
「全然分かんない、でも女の勘で何とかするから大丈夫!」
「勘って、そんな適当な……」
心配しなくていいよチコタン、私の勘って結構あたるんだから。
それに運も相当強いしね。
宇宙に攫われてる時点で運が悪い気もするけど、そこは一旦置いといて。
とにかく私を信じて進めば大丈夫だから。
ん? このスイッチは?
何だか怪しいかも……
「あっ、それは!」
私の直感が告げてる、ここで押すべきだと。
よし、押してみよう。ポチッとな!
《ビーーイィッ!》
《ビーーイィッ!》
うわ、すっごいうるさい音。それに、赤いランプがそこらじゅうで点滅してるよ。
やっちゃった感が凄いんだけど、一応確認しておこうかな。
「チコタン、これって何?」
「警報装置です……」
ですよねー……。
なるべく見つからないように行動しないといけないのに、逆に警報装置を押しちゃったんだね。
私が、ね。
てへっ。
「とととっ、とにかく逃げよう!」
「ひゃわわっ、はいぃ~」
ゴメンねチコタン、押す前にちゃんと確認するべきだった。
でもさ、そのうち誰かに見つかってたと思うし、発見されるのが早いか遅いかの違いだよね。そう思うことにしよう。
「ソーラ、追っ手です」
「え? うわっ、マズい!」
エイリアンだ!
大量のエイリアンが私達を追いかけてきてる!!
ひょろ長でげっそりで、青いタコみたいな、気持ち悪い系のエイリアンだよ。
何であんなに気持ち悪いの? ちょっとはチコタンを見習ってよ! マジ天使だから!!
ホントは天使じゃなくてエイリアンだけど。
でもカワイイレベルは天使級、うちゅカワ天使だから!
いや、そういう問題じゃないか。今はとにかく逃げなくちゃ。
「右からも追っ手です!」
「チコタン、こっちに逃げよう」
「はい!」
あーもうしつこい! いつまで追いかけてくるのよ。
おっと、あのドアちょっと怪しいかも?
あのドアだけ金色だし、ちょっと豪華な感じもする。もしかして重要な部屋だったりして?
私の直感が告げてる、ここで突入するべきだと。
「ソーラ、待ってください!」
大丈夫よチコタン、こういう時は勢いが肝心なの!
女は度胸よ、ためらわずに進むのよ!
「というわけで、お邪魔しまーす!」
「よく来たな、待っていたぞ不届き者ども」
前言撤回!
勢いだけで進むのはよくないよね。ためらいが大事なときだってある。
例えば勢いで開けたドアの先に、大量のエイリアンが待ってました。そんなヤバい状況になることだってあるかもしれないしね。
っていうか、今がまさにその状況です!
「ソーラ、どうしよう!?」
「どどどっ、どうしよっ!?」
えっとー……そうだ!
間違えた振りをして、しれっと退室できないかな?
「あ、スミマセン~、お部屋間違えちゃいました~、てへっ」
「逃がすと思っているのか?」
無理だったかー、恥ずかしい演技までしたのになー。
ゴメンねチコタン、開ける前にちゃんと確認するべきだった。
私達、大ピンチ!
しれっと退室作戦、残念ながら失敗に終わる。