エピソード2 ~うちゅ友②~
止まらない空の食欲。
なっ!
なななっ!!
「何これ!? めっちゃ美味しい!!」
「よかったです、お口にあったようで」
「もぐもぐ……うまうま……」
「まだあるので、遠慮せずに食べてくださいね」
ああ、このエイリアンちゃんマジ天使様っ!
エイリアンちゃんが出してくれた、白くてプルプルしてるナゾの物体。正直見た目はかなり気味悪いんだけど、でもこれめっちゃ美味しいの!
味も食感も香りも最高。何ていうか、この世の美味しさを一点に凝縮したような感じ!
本気でほっぺたがとろけ落ちそう。
「あの、ところで……」
「ん? もぐもぐ……何? うまうま……」
ヤバい、美味しすぎて手が止まらない。
「あなたは、ユイタソではないのですか?」
「ユイタソ? もぐもぐ……何それ? うまうま……」
「えっと、ユイタソは私の友人で、その体はユイタソのものなのですが……」
「へえー、もぐもぐ……私はユイタソちゃんじゃなくて、うまうま……明峰空だよ」
このうちゅカワイイ女の子は、ユイタソっていうエイリアンなわけね。
それじゃあどうして私は、ユイタソちゃんの体で動き回ってるんだろう?
「アケミネ・ソーラ? まさか、特異点の!?」
「特異点? もぐもぐ……どこかで聞いたような……うまうま……」
「はぁ、ユイタソが生き返ったのかと思ってビックリしました。きっと心身分離の影響が出たのですね」
「心身分離? もぐもぐ……」
言葉の意味は分からないけど、何だか嫌な予感のする響きかも。詳しく聞いておいた方がいいのかな……
ただホントに手が止まらない。
宇宙の食べ物って全部こんなに美味しいの!? もう地球人やめちゃおうかなっていうレべル。
「心身分離というのはですね──」
「ちょっと待って、もうちょっと食べさせて、もぐもぐ……」
「あ、はい。ごゆっくりどうぞ」
うわぁ、すっごい呆れ顔されちゃったよ。視線がじっとりしてる。
でもゴメンねエイリアンちゃん、美味しすぎて止まらないんだ。
「とりあえず、もぐもぐ……私は地球人なんだけど、うまうま……どうして宇宙にいるのか分かってなくて、もぐもぐ……そこらへん知ってたら教えてもらえる? うまうま……食べながら聞くから」
「はい、それでは順を追って話しますね」
嘘!?
こっちの赤いプルプルもめちゃくちゃ美味しいじゃない!
「まずですね、地球人のソーラさんは知らないと思いますが、この宇宙にはダークマターと呼ばれる物質があります。宇宙において最も万能にして無限のエネルギーです」
あぁもう美味しすぎ! 万能にして無限の食べ物だよ……じゃなくて!
話に集中しなくちゃ。えっと、ダークマターっていうものがあるわけね。
なるほどなるほど。ゲームでいう魔力とかマナとか、そういう系のものかな?
「この宇宙ではごく稀に、ダークマターを自在に操れる適性を持った存在が生まれます。それを私たちは“特異点”と呼んでいます」
つまり、勇者とかヒーローみたいな、選ばれし者的な誰かってことね。宇宙規模のチート使いっていう感じかな?
「私達の調査によると、今現在の特異点はアケミネ・ソーラ、あなただと判明しています」
「ぷふぁっ! 私!?」
「そうです、それを知った全宇宙の統一機関“ヴェーゼ”は、特異点であるソーラさんの力を手に入れようとしました。そして先日ヴェーゼは、地球から拉致したソーラさんに心身分離の術式を施したのです」
あ、ビックリしすぎて食べるの忘れてた。
でもそっか、私の体が宇宙規模のスーパーチートだったから、ヴェーゼとかいう連中に攫われたってことか。もしかして私、宇宙規模でモテてるの?
「心身分離とは、その名の通り精神と肉体を切り離す術式です。ヴェーゼはソーラさんの肉体だけを欲していました。なので、肉体だけが回収されて、精神は放り捨てられたのだと思います」
精神と肉体を切り離す、か。宇宙の技術力ってホントに凄い!
で、私の体は欲しかったけど、心は必要なかったから、ポイしちゃったと。
なるほどねー……
「って何それ! 私の都合ガン無視じゃない!!」
「ひゃわっ」
おっと、つい大きな声が出ちゃった。
「ひいぃ……おっしゃる通りですぅ……」
「ゴメンゴメン、ちょっと取り乱したけど、もう大丈夫だから」
何で私が宇宙にいるのか、一応理由は分かったよ。正直信じられないけど、実際に来ちゃってるものは信じるしかないよね。
「事情は分かったよ、それでさ」
今の説明って肝心なところが抜けてるよね?
そこを説明してもらわないと。
「なんで私、エイリアンになってるの?」
↓宇宙食の特徴↓
見た目:最悪
味 :最高