エピソード112 ~真実③~
「「シュヴァルシルト様に言われたから……」」
うん? シュヴァルシルト?
「シュヴァルシルトってゴミラスボスのことだよね、確か……なんとかマスター……?」
「ヴェーゼのグランドマスターです、全宇宙を統括するヴェーゼの最高権力者ですよ」
「そうそれ! そのゴミラスボスに言われたってことは……つまり二人はゴミラスボスから命令されて、私達を攻撃したりハロルの人達を誘拐したってこと?」
「そういうことでしょうね」
なるほどね、なんとなく事情は飲み込めてきたよ。だけど細かいところはさっぱり分からないままだ。
「うーん……もうちょっと詳しく説明してほしいかも……」
「キンボシちゃん、ギンボシちゃん、最初から順を追って説明してもらえますか?」
「「うん……」」
「それじゃあ私達のことから話そうね」
「私達は生まれた時から、強力なダークマターの力を持っていたんだよ。そして双子の私達は、常にダークマターで繋がり続けているんだよ。どんなに離れていても、どんな状況にあっても、ダークマターで繋がり続けているんだよ」
「私とソーラお姉ちゃんは今日はじめて出会ったよね。だけど私はギンボシを通じて、ソーラお姉ちゃんのことを知っていたの。お互い見聞きしたことや考えていることを、ダークマターを通じて共有しているの」
「そして二人一緒にいる時は、とても強力なダークマターを使えるんだよ」
「その力をシュヴァルシルト様に見出されて、私達はユニオンマスターに任命されたの。だけど子供の私達だけでは、第五ウェーブ全域を統治することは難しかったの」
「だからブヨップスっていうダークマター生命体と、ブヨップスを維持するためのダークマター生産工場を作ったんだよ。ブヨップスを代理のユニオンマスターにして、第五ウェーブを統治していたんだよ」
えっと……つまり二人は常にダークマター融合し続けているわけだ。その力でブヨップスとモヤモヤ工場を作ったんだね。なるほど……子供の割には凄すぎない?
「お母さんとお父さんも私達のことを手伝ってくれたんだよ。お母さんとお父さんはダークマターを使えないけど、とても頭のいい二人なんだよ」
「私達が困っているとアドバイスをくれたよね。それに私達のことを愛してくれていたよね。ユニオンマスターは大変だったけど、とても楽しい毎日だったよね。でもね……」
「ある日を境にお母さんとお父さんは行方不明になっちゃったんだよ。そしてシュヴァルシルト様から連絡をもらったんだよ」
「お母さんとお父さんは特異点に誘拐されたって言われたの。お母さんとお父さんを取り戻すためには、特異点を倒さなくちゃいけないって言われたの」
「だから特異点のソーラお姉ちゃんを倒すために、準備を進めていたんだよ。たくさんの罠を仕掛けて、ハロルの人達を誘拐して、だけど……」
「敵だと思っていたソーラお姉ちゃんは、全然悪い人じゃなさそうだったの。ちょっとヘンテコな優しいお姉ちゃんだったの。誰かを誘拐するような悪い人じゃないと思ったの」
「もしかしたら私達はシュヴァルシルト様に騙されているのかも知れないって思ったよ。でもお母さんとお父さんに会いたくて……」
「シュヴァルシルト様から言われた通りに、ソーラお姉ちゃんを攻撃したの……ごめんなさい……」
そっか……二人はずっと辛い思いをしていたんだね……。
でも私と戦っている時は、ずっとクスクス笑っていたよね? とってもノリノリで攻撃してきたよね? あれは一体どういうことなんだろう……。
まあいいや、細かいことは考えないでおこう。それより今は二人の両親のことを考えなくちゃ!
「きっと全てはシュヴァルシルトの仕業ですね。キンボシちゃんとギンボシちゃんの両親を誘拐し、私達の仕業に見せかけたのだと思います」
「やっぱり!」
小さな女の子を騙すなんて、絶対に許せない! 今すぐにゴミラスボスをコテンパンにしてやりたいよ! だけど残念ながら居場所は分からない……、それに気になっていたことがあるんだよ。
「ところでチコタンは色々と事情を知ってたみたいだよね、どうして知ってたの?」
「いいえ? 私は事情なんて知りませんでしたよ?」
「「「えっ!?」」」
「私が知っていたことは二つだけです。ギンボシちゃんはヴェーゼの一員であること、そして両親に会いたがっていること、それだけですよ」
「たったそれだけ? それだけの情報で、色々と見抜いちゃったってこと!?」
「見抜くなんて大げさなものではありません、状況を見て推測しただけです」
いやだから、何をどう推測したら正解まで辿りつけるんだろう……。
「……どうしてチコお姉ちゃんは、私がヴェーゼの一員だって気づいたの?」
「ヴェーゼ本部に突入する前夜、ギンボシちゃんと話しましたよね。覚えていますか?」
「うん……」
「あの夜ギンボシちゃんから聞いた言葉は、ほとんど偽りだと感じました。そしてギンボシちゃんから敵意のようなものをピリピリと感じました。だから私はギンボシちゃんをヴェーゼの一員だと判断しました」
「そんな……あの会話だけで気づかれちゃってたなんて……」
「そして一つだけ真実を語っていましたよね?」
「真実?」
「『お母さんとお父さんにあいたいな』と言いましたよね? あの言葉だけは心からの言葉でしたよね?」
「う……うん……」
「ちょっと待った! それってただの……」
「ただの勘です、でも確信していましたよ。両親を誘拐された同士、通じあったのかもしれませんね」
嘘でしょ……信じられない……。
「ギンボシちゃんは両親に会えなくて、寂しい思いをしているのだと確信しました。でも証拠はありませんから、私一人で勝手に見守っていたのです」
「だからって……勘だけを頼りに一人で見守るなんて……」
「苦しんでいる子供を放っておくなんて、私には出来ませんでした」
それは分かるけど……、まったくチコタンは凄いのか無謀なのか……。
とにかくチコタンの勘は凄まじいね……。
「私の話はここまでにしましょう、それより今はやることがありますよね?」
「そうだったね! 今は先にキンボシちゃんとギンボシちゃんを──」
「──うニャァ──」
「──きゃあぁ──」
──うん?
この声はミィシャンとエルリンの声だ! 上の方からミィシャンとエルリンの声が聞こえてくる!!
二人ともミィビット改にしがみついて、猛スピードで飛んでく……る……。
「うニャァーッ! ミィビット改が暴走しちゃったニャーッ!!」
「止まりませんわーっ! 止めてくださいですわーっ!!」
「えぇぇーっ!?」




