97.大きな音です。
朝早くに凪は屋敷に潜入するためホテルを出て行った。大きくならず喋らなければただの犬にしか見えないけど、潜入先は貴族のお屋敷。怖い貴族だったら凪のことを野良犬だと思って酷いことをするかもしれないと思うとやっぱり少し怖い気持ちになる。部屋を出て行く直前、ギュッと抱きしめたら凪からは呆れたように「無茶はしないからそろそろ離してくれ」と言われてしまった。凪の事を信用してるしてないとかじゃなくて、ただただ心配。
ベッドに寝っ転がったまま、久しぶりにステータスを開いた。ステータスのことなんてすっかり忘れてた。
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名前:二階堂 美桜(異世界人)Lv.18
年齢:16歳
職業:聖女
属性:光
魔力量:30万
スキル:結界・ホーリーアロー・鑑定・異種共鳴・ポーション生成(初級~上級)
魔法道具:マジックバッグ
従魔:凪(聖獣)
耐性:毒1
【ステータスは本人以外は見ることができません】
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レベルが上がってるし、スキルも増えてる。本当に成長できているか不安だったけど、こうして可視化して確かめられると安心する。
治癒もできる様になりたいし、ポーションも特級まで作れるようになりたい。治癒は怪我だけじゃなくて、体の欠損まで治せるようになりたい。そこまでの治癒能力を持っている人は滅多にいないらしい。国に一人いればいい方。でも特級のポーションを作れたら、治癒能力を持つ人がいなくても欠損を元通りにすることができる。特級ポーションは゛エリクサー“とも呼ばれている。これは万能薬で欠損だけじゃなく、どんな病も治してしまう。作るのも難しいが、材料をそろえるのも難しい。
やることも多いし、習得しないといけないことも多い。けど、それが全く苦じゃない。むしろやる気で溢れている。怖いことも痛いことも辛いこともあるけど、すごく充実している。心も成長……できているような気がする。
_ぐぅ~……
ビックリするくらい大きな音で一人だけどちょっと恥ずかしい。マップを開いてカフェを検索した。いつもなら街をぶらぶらしながら食事ができるところを探すけど、今はそんな余裕もないくらいお腹がすいている。日本にいた時は仕事のある日は朝は急いでパンか何かをかじって、お昼もコンビニで買ったパンとスープで夜は疲れ果ててスーパーで値引きされたお惣菜を買って帰って早く寝るために凄まじい早さで食べて……休みの日も疲れ切ってて彼とゆっくりデートもできていなかった。今思えば浮気されても仕方がなかったのかもしれないと自分自身もよくなかったと反省。それに比べ今は人間らしい生活をおくれている。外でゆっくり食事をしようと思えるほど心に余裕ができた。以前の私はなんであんなに余裕がなかったんだろうか……と、よく考えるけど、たぶん仕事のことも彼との関係も、職場での人間関係も失敗しちゃいけない、ちゃんとしなきゃいけないって思いこみすぎていて精神的に追い込まれていたんだろうと思う。子供のころに植え付けられた思想に大人になってからも縛られていたんだとこの世界に来て気付かされた。




