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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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91.用心します。

波と合わせて太陽の光がキラキラと動く目の前の海に感動した。大型船のデッキの先頭を陣取って海風を全身に浴びる。風で髪の毛がなびくたび、ロザンナとアビーさんに感謝。ウィッグだったら髪の毛の事気にしてこんなに気楽にデッキに長々といられなかったと思う。

日本にいた時は海に行くと身体や髪がべたつくのが嫌でたまらなかったのに、今はそんなこと少しも気にならない。心の余裕と環境って大事。


あ! 魚が飛び跳ねた!



「今見た!?」

”「少しは落ち着け」”



凪は相変わらずつれない。子供と保護者みたいな感じになってるんだけど……。



「海は初めてですか?」



突然身なりのいい、眼鏡をかけている男性に声をかけられた。



「突然すみません。 あまりにも楽しそうにしてらしたので、つい声をかけてしまいました」



こんなにお上品に微笑む男性と人生で初めて会った。女性でもここまで上品な人はいないかもしれない。



「はい、初めてです」



日本では何度も海に行ったことあるけど、この世界では初めてだから初めてってことでいいよね?



「ではヴェリアスも初めてですね。 ヴェリアスは年中天気がいいので、そんなに肌を出していては日焼けしてしまいますよ。 日傘か着替えのお洋服はお持ちですか?」



ヴェリアスに近づくにつれてどんどん暑くなってきたので、私はひざ下丈の半そでのワンピースを着ていた。もちろん海では突風がふく可能性があるので、スカートの中には念のため短パンをはいている。確かに周りを見渡せば女性は長袖と足が見えないくらいの丈のスカートをはいている。それプラス日傘をさしていたり、さしてもらってたりの人ばかり。



「日焼けとか気にしないのでこのままで大丈夫です。 ご親切にありがとうございます」



男性は一瞬きょとんとした顔をしたと思ったら、上品な顔をくしゃりとして笑った。笑った顔は子供みたいな顔だ。子供みたいっていうか可愛らしい笑顔。



「そうですか、それは失礼いたしました」

「ラフィ!」

「連れが呼んでるから失礼します。 初めてのヴェリアスを楽しんでください」

「はい、ありがとうございます」



上品なお兄さんを呼んだ男の人と目が合ったけど、怪訝そうな顔をされた。どうして?いや、目が悪い人なのかも。それかただ単に元から目つきが悪い人なのかも。



”「なんか不思議な人だったね」”

”「誰もかれも信じるなよ」”

”「えぇ!? 今の人もしかして悪い人!?」”



まさか凪がそんな風に言うとは思わなくてビックリした。



”「悪い人間……とは言えないが、良い人間とも言い難い」”

”「……ヴェリアスって大きい国みたいだしもう会わないだろうけど、まぁ用心することにする」”

”「今回に限らず常に用心してくれ」”



今日の凪は少し辛口だ。いつも優しすぎて甘えちゃってる自覚があるからこそ「はい」としか返事ができなかった。





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