xx.ロザンナ家族
「短い期間だったのにミオがいないと寂しく感じるね」
ロザンナはそう呟き、ダイニングを見渡した。
「ミオは聖女だな」
「え!? 聖女!?」
ドルフの言葉にアビーとロザンナは目を見開いた。
「暫く聖女召喚は行われていなかったから知っているものも減ったが、聖女は黒髪に黒い瞳をしている」
「お洒落でウィッグつけてるとばっかり……なんで隠してたんだろう?」
「聖女ってバレるとめんどくさいからとか? 聖女って分かった途端かこまれそうじゃない?」
「聖女はアルファード王国にいるはずだが……それに聖女なのに護衛の一人もついちゃいなかった。 どういうこったろうな」
全員で首を傾げた。
ロザンナは誰よりも長くミオと一緒にいたが、確かに常にそばにいたのは凪だけだった。それに生活費も薬草採取や凪が倒した魔獣を売って賄っているようだった。
「アルファード王国から逃げ出したんじゃないの? だから変装が必要だったとか」
「今あの国は不穏な動きをしているみたいだからな。 逃げ出したのかもしれんな」
「不穏って?」
「元々仲良くしていたわけじゃないが、近ごろは魔族を挑発しているというような噂を聞く。 人族の方が人数は多いが、力で言えば魔族の方が上だろう。 そんな相手に喧嘩を売るようなことばかりしているからか、アルファード王国から出て行く国民が増えているようだ。 だが国としてそれは許せんのだろう。 出て行こうとして見つかれば懲罰を受けるらしい」
「うわ……それマジ? やっばいじゃん」
ドルフは王室御用達の鍛冶師の為、ちょくちょく城に出入りする。その際騎士団と接する機会があり、その時によその国の情勢だったりを聞くことがある。
ドワーフは戦闘に向く種族ではないが、武器や防具に関してはどの国にも劣らない素晴らしい物ばかりだ。特に武器は剣や弓矢だけではなく、驚異的な破壊力をもつ大砲やバリスタもある。大砲などの飛び道具だけは他の国には輸出させることなく、ドワーフの国だけで取り扱われている。他の国が安易に攻め入ることができないのはそれも一つの理由になっている。
「お父さん……」
「安心しろ、誰にも言わんさ」
ロザンナが何を言おうとしたのか察したドルフはそう答えた。
命の恩人であり、友人であるミオが進もうとしている道を応援したかった。ミオがばれたくなくて変装をしているなら、少しでも長くばれてしまわないように微力ながら力になりたいと思った。
「次ミオがこの国に来たときは堂々と街を歩けたらいいな」
「うん! その時はみんで街に遊びに行こうね。 お父さんもだからね!」
「……そうだな」
出不精でなかなか外に出ないドルフだが、この時ばかりはしぶしぶながら頷いた。そんな父親を見て姉妹は満足げに笑みを零した。




