89.寿命のルールは複雑です。
「この世界の掟ではあるけど、絶対ではないから血の契約を交わさずに夫婦になり家庭を築く者たちもいる。 貴族や王族は血の契約を交わして婚姻を結ぶけど、側室や妾とは血の契約を結ばないことがほどんどだよ。 血の契約を交わしていたとしても、病気だったり事故で死んでしまえばそれは伴侶には反映されない」
側室や妾……自分以外にも女がいるってことよね?そんなの絶対いや。浮気された時のことを思い出して苛ついてしまった。
「じゃあ殆どの夫婦が一緒に亡くなるってことはないんじゃないですか?」
「そうだね。 体が丈夫な種族や神の加護を受けている人間同士が血の契約を交わせば夫婦で寿命を全うすることができるだろう。 美桜、君も僕の加護を持ってるから、余程のことがない限り寿命より手前で亡くなることはないよ」
思ってたよりルールが複雑。ってことはよ、結婚して寿命が一緒になったとしても、私だけ長々と生きる可能性があるってこと?マジ?
「あの……因みに体が丈夫な種族は……?」
「竜族、エルフ、妖精族、魔族__」
「ぶふっ、ま、魔族!?」
魔族って危ないんじゃないの!?だって魔王って魔族よね!?よくファンタジー小説とかで勇者ご一行が魔王を倒しに行くみたいなストーリーあるよね!?
「あはは、この世界の魔族はただの種族であって世界を滅ぼそうだなんて思ってないよ。 人族との折り合いはあまり良くないけれど、今の魔王は比較的温厚だよ。 強い種族が他にもいるから、世界の均衡がいきなり崩れることはないから心配しないで。 世界が壊れるとしたら、瘴気が膨れ上がった時だから」
さらっと怖い事言われた。そして責任の重さに気持ちが沈む。
「あぁー! ご、ごめん! 悪気はないんだよ! 美桜のおかげでこの世界はいい方向に向かってるよ! 次はどの国に行くの!?」
「次はヴェリアスに行くことにしました」
「そう、海に囲まれた国だね。 港町でいろんな国の者が出入りしていて活気のある国だ。 気を付けて行っておいで」
「はい、ありがとうございます。 ヴェリアスに到着したらまたすぐに会いに来ます」
「美桜……」
「何ですか?」
「…………」
真剣な顔で見つめられ、少し緊張した。普段にこやかな分、落ち着かない気持ちになる。
「……オクタヴィアンさん?」
「いや……何でもない。 美桜が進む道に幸あらんことを」
おでこにオクタヴィアンさんの指先が触れ、ぱぁっと温かな光が広がったと思ったらもう目の前は本堂の景色が広がっていた。少し胸の中にもやっとしたものが残ったが、気持ちを切り替えて凪と一緒に教会を後にした。




