86.豪快です。
みんなでバルを弔った。どうやらこの世界でも基本は火葬らしい。バルの遺骨はお家の裏に埋められ、シンプルながら立派な墓石が建てられた。その墓石を作ったのは他の誰でもなくアビーさんだ。アビーさんの愛情がたくさん詰まった墓石に向かって手を合わせ、バルが健やかに眠れるよう祈りを捧げた。
ロザンナの傷の状態が少し落ち着いたころ、私たちはお昼からみんなで食卓を囲んでいた。いつもはドルフさんとアビーさんとは同じ時間に昼食をとることはないから今日は特別な日だ。
「お姉ちゃん!! 成人おめでとう!!!!」
「みんなありがとう!!」
「かんぱーい!!」
木製の大きなジョッキを掲げると、勢いよくぶつかった。中身が零れてても誰も気にせず私以外は豪快にお酒を飲み干した。さすがはドワーフ。ケロッとしてる。というかお酒のCMに出れるんじゃないかってくらいみんないい顔。普段は少し険しそうに見えるドルフさんの顔もお酒を飲んでるときは気のいいお父さんって顔になる。
ドワーフは30歳で成人になるらしい。長寿の種族ではないけど、人族よりは長く生きる種族だ。寿命だったり、種族の特徴によって成人となる年齢は違うらしい。それも不思議だけど、ドワーフはとにかくお酒が好きな種族だから、飲酒は成人になってからではなく飲みたいと思った時から飲めるという不思議なルールがある。この世界は日本とは違うルールがたくさんあって面白い。とにかくいろんなことが新鮮でわくわくする。
「え!? これどうしたんだよ!?」
アビーさんはロザンナから受け取ったプレゼントの中身を見て驚いた。
「ミオと一緒に探したの。 凄く純度の高いミスリルだからきっとお姉ちゃんだったらいい武器が作れると思う」
「ありがとう! 本当に嬉しいよ!!」
ミスリルを発見した時のロザンナと今のアビーさんの表情が全く一緒で思わず笑ってしまった。
「私からのプレゼントも受け取ってもらえたら嬉しいです」
「え!? ミオも用意してくれたの!?」
ラッピングのリボンを解いて中を見たアビーさんは中身と私の顔を何度も交互に見た。
「この色のポーション! 上級じゃないか! こんないい物もらえないよ!!」
「もらってください。 私が唯一手作りできるものなんです。 武器作りって一歩間違えれば大怪我することもあるでしょうから、万が一の時に使ってもらえたら嬉しいです」
「手作り!? 凄い! 本当に凄いよ! ありがとう! 使わせてもらうよ!」
「使わないに越したことはないんですけどね」
「あはは! そりゃそうだ!」
豪快な笑い声につられて私まで笑ってしまった。
怪我をした時に使える上級ポーションの他に体調を崩してしまった時に使えるポーションも入れておいた。みんな健康そうに見えるけど、いつ何が起きるか分からないからね。
「これはワシからだ」
「父さん……これ……」
「今日から一人前の鍛冶職人だ。 今まで通り武器作りにひたむきであれ」
「父さんありがとう。 一生大事にする。 そしてどんな時も真摯に向き合うって約束するよ」
ドルフさんはいっさいラッピングをしていないプレゼントを渡した。そのままで渡すなんてドルフさんらしいなと思った。
アビーさんはドルフさんからもらった小槌を大事そうに両手で抱え、胸に当てた。その眼には目に涙が滲んでいる。胸がじんわり温かくなった。今この時も幸せな思い出の一つになるだろう。こうしてみんなでお祝いができて良かった。




