81.失うなんて考えられません。
ポーションを飲み込んだアビーさんは辛そうに声を漏らしながら痛み悶える様に暴れ始めた。自分の体を守るために顔の前で腕を交差させた。それでも容赦なくアビーさんの腕や足が飛んでくる。狭すぎて逃げることもできなくて、すぐに収まるだろうと思い耐えた。背中もぼこぼこした岩が当たって痛い。
痣だらけになるだろうな……。
ようやく静かになり、腕を緩めた。
”「ロイ、大丈夫?」”
”「僕は大丈夫だよ」”
”「良かった。 先に出て凪と一緒にいてくれる?」”
”「分かった」”
ロイを先に穴から出し、静かになったアビーさんの方を見た。
ポーション効いたんだよね?
「アビーさん……」
恐る恐る声をかけた。
「ミオ? 本当にミオなの!?」
「そうです! もう痛むところはないですか!? ここから出れそうですか!?」
「問題ないよ! それより出たら魔獣に襲われちまうよ!」
「凪がいるので大丈夫です!!」
まずは私が腹ばいのまま下がりながら穴から出ると、私に続いてアビーさんが穴から出てきた。出た途端アビーさんに力強く抱き着かれた。
「ありがとう! 意識が朦朧としててミオの幻を見たかと思ったよ! まさか本物だったなんて……ミオが来てくれなきゃあたしはここで死んでたよ」
私もギュッとアビーさんを抱きしめた。アビーさんの体の温もりを感じて目頭が熱くなる。
「会えてよかったです。 本当に……。 それよりロザンナもこの洞窟の中にいるみたいなので早く見つけないと……」
「ロザンナもこの中にいるの!?」
「知っててここに入ったわけじゃないんですか?」
「昔よくこの辺りに二人で来てたから、もしかしたらこの辺りにいるんじゃないかって思ってきたんだけど、信じられないくらい魔獣がうようよしててさ……こんな逃げ場のない洞窟にはいっちゃって……バルもうまい事逃げれてればいいんだけどさ」
バル……今言うべきか言わないべきか……どうしよう。ロイがアビーの足元にすり寄った。
「アビーさん、あの……バル、ですけど……」
躊躇っているとアビーさんは私の表情を見て察したのか、大きく開いた瞳は揺れ動き涙をためた。下唇を噛む口元は震えていて、目元を隠すように手のひらで覆った。声を押し殺して泣いている姿は見ているだけで心が苦しくなった。
足元に温もりを感じて下を向くと凪が寄り添ってくれていた。もしも凪が突然いなくなったら私も正気じゃいられないかもしれない。取り乱して、どうしていいか分からなくなると思う。出会ってまだそんなに時間は経ってないし、過ごした時間もそんなに長くないけど、大切な相棒。失うなんて考えられない。
強くならないと……一分一秒でも早く強くならなきゃいけない。そう思とぐっと拳に力が入った。




