80.狭いです。
魔獣を倒しながらも洞窟を進んでいくと、馬が倒れているのを見つけた。魔獣に食い散らかされていて原型をとどめていないけど……たぶん馬。
”「バルだ……」”
ロイの弱々しいつぶやきが頭に響いた。
「バル?」
”「アビーの愛馬のバルだ……」”
その言葉を聞いて血の気が引いていく。嫌な考えがどんどん頭に広がっていく。もしアビーさんも同じような状態だったら?ロザンナも無事じゃなかったら?考えないようにしていたことがいっきに頭の中を駆け巡る。奥に進むのが怖い。心臓がバクバクなってる。指先も冷たくなっていく。
「美桜」
「…………」
「美桜!」
凪の声にハッとした。
「息を深く吸え。 そして大きく吐き出せ」
凪に言われて自分がちゃんと呼吸をしていないことに気付いた。心臓の動きに合わせる様に早く浅く呼吸をしていた。唇も震えている。
「凪、ありがとう。 早く行こう。 ロザンナとアビーさんを見つけないと」
「しっかりつかまっていろ」
洞窟は思っていた以上に奥深く、中は入り組んでいる。
”「アビーの匂いだ!!!!」”
ロイの視線の先に進むと一か所に魔獣が集まっていた。
「凪!」
凪が次々と魔獣を蹴散らすと、穴が開いていた。
「あっ! ロイ!!」
腕の中から飛び出したロイを捕まえようとしたが、手は空回り。そのまま穴の中に入っていってしまった。
”「アビーだ!! アビーがいたよ!!」”
「本当!? アビーさんは大丈夫!? 怪我してない!?」
穴に向かって声をかけた。暗くて全然見えないが、中から微かにアビーさんの声が聞こえた気がした。
”「たくさん怪我してる!」”
「アビーさん! 美桜です!! 直ぐに助けますから!!」
穴の入り口を凪に見張っててもらい、私は匍匐前進で穴の中に入った。こんな狭いところに入るのは初めてで緊張で身体が強張る。入るだけならまだしも、奥が見えない場所に進むっていうのは精神的に結構辛い。でもアビーさんを助けるためだ。怖がってられない。
生きててくれてよかった。生きててくれさえすればポーションが使える。助けられる。
「アビーさん!!」
「ミ、オ……?」
暗くてアビーさんの表情までは見えないけど、いつも明るくはきはきしている声は弱々しく今にも消えてしまいそうな程か細かった。その声はアビーさんの命が消えてしまうんじゃないかという私の恐怖を煽った。
窮屈ながらも頑張ってバッグからポーションを取りだし、手を伸ばしてそのポーションをアビーさんの手元に持っていった。だが、アビーさんの手が瓶を掴んでくれない。
「アビーさん、ポーションです! 傷がよくなりますから飲んでください!!」
「…………」
「アビーさん!? ロイ! ちょっと下がって!」
狭すぎて人間二人が重なるとほぼ身動き取れないが、瓶の口をアビーさんの口元に持っていった。液体を口の中に流し込み、吐き出してしまわないように顎下から口元を覆う様に手で押さえつけた。




