79.悪い方向に考えてはいけません。
森に行くときに通る門で門番の方にアビーさんを見なかったか聞いたら、少し前に門の外に出たと言われた。狂暴な魔獣が出たという情報があったため止めたが聞く耳持たず出て行ってしまったそうだ。私も低ランク冒険者だから危険だと止められたが、無理を言って通らせてもらった。
「乗れ」
「うん! ロイ!」
人目がなくなり、大きくなった凪の背中に飛び乗った。ロイも凪の背に乗り、私の腕の中に座った。森に一歩足を踏み入れた途端、悪寒が走った。今日いた時はこれほど瘴気は濃くなかった。たった数時間でこんなことに?慌ててマップを開くと赤い印が濃くなっていた。それより暗くてよく見えない。そう思ってるといきなり光る玉が現れた。
「大丈夫だ。 俺が出した明かりだ」
「ありがとう」
まるで以心伝心だ、と感動してしまった。
「ロイ、ロザンナとアビーさんの居場所分かりそう!?」
”「たぶんずっと真っすぐ。 なんか変なんだ、森の匂いが変だ……匂いが入り混じってて……」”
「うわぁあぁああぁあぁぁぁ!!!」
大きな虫みたいな魔物が飛び出してきて変な声を出してる間に凪が瞬時に倒してくれた。あの姿はたぶん蛾……小さくてもちょっと気持ち悪いのに大きいとか本当無理……。
「奥に行けば行くほど瘴気が濃くなって狂暴な魔物が増える。 気を抜くな」
私はまだ弓を使う自信はなかったから、ロイをギュッと抱いて結界を展開させた。凪も守れるくらいの結界を張ってから反省した。魔獣に襲われる前に結界を張る癖をつけないと……浄化の時は魔物で溢れてるのに……反省。結界を張っていても魔獣は襲ってくるので、進む際邪魔になる魔獣は凪がどんどん魔法でやっつけていく。
”「近くにいる! 近くに二人いる!!」”
その時凪もゆっくりと足を止めた。
「嘘……ここ……? まさか二人とも中に……?」
洞窟の手前で凪が止まり、洞窟に近づくと奥からは濃く、体にまとわりつくような今までにないくらい嫌な瘴気の気配を感じた。胸が……お腹が……なんだか気持ち悪い。吐きそう……。
「駄目!!」
腕の中から飛び出してかけて行こうとしたロイを慌てて止めた。
”「でも__」”
「一人で行かないで、この中相当やばい。 だから一緒に、ね? 私から離れないで」
凪の明かりで洞窟の中を照らしながら急ぎ足で進んでいく。次から次に魔獣が現れる。凪が戦ってくれるけど、そのたびに心臓が飛び跳ねる。お化け屋敷とか本当に無理だから、もう怖すぎて泣きそうだし逃げ出したい。お化け屋敷のお化けは脅かすだけで絶対襲ってこないけど、魔獣は違う。こっちのことなんてお構いなしに襲ってくる。お化け屋敷よりたちが悪い。それに命がけ。だからこそ急がないと……二人がここにいるなら魔獣に襲われて大怪我してるかもしれない。大怪我どころか……ダメ、悪い方向に考えちゃダメ……。目元がじわりと熱くなり、ぐっと奥歯に力が入る。




