78.意志は固いです。
ドルフさんの背中から感じる迫力に気おされそうになりながらも意を決して口を開いた。
「お仕事中にすみません! アビーさんがどこにいるか知りませんか!?」
小さい声では仕事中のドルフさんの耳に届かないということは分かっていたので、腹の底から声を出した。ゆっくり振り返ったドルフさんと目が合い、ごくりと唾を飲み込んだ。心臓がバクバクする。
「部屋じゃないのか」
「リビングにも部屋にもいなくて、どこかに出かけるとか聞いてませんか?」
「いや、わしは何もきいておらんよ」
「そうなんですね。 分かりました。 お仕事の邪魔をしてしまってすみませんでした」
ペコっと頭を下げて鍛冶場を後にした。家中探し回ったけど、ロザンナもアビーさんもいない。どこ行っちゃったの!?そんなこんなしてるうちに、窓の外を見ると空はだいぶ暗くなっていた。
_ドンドンドン
裏口の扉をノックされて開けると、お隣に住んでる奥さんだった。
「あら! こんばんは」
「こんばんは」
奥さんは籠いっぱいのトマトを持って扉の外に立っていた。
「たくさんもらったからよかったら食べとくれよ」
「ありがとうございます」
受け取ると籠はどっしり重かった。奥さんは軽々持ってそうに見えたのに……人間よりドワーフの方が力持ちということが分かった。
「さっきは肝心のトマトを持ってくるの忘れちゃってね!」
「あはは」と豪快に笑う奥さんの笑い声につられて笑ってしまう。え?さっき?
「さっきいらっしゃったときってアビーさんいました?」
「えぇ、いたわよ。 話してたらなんでか急に青ざめた顔して飛び出してっちゃったんだけど、何かあったのかい?」
「なんの話ししてたんですか!?」
「いやね、何やら強い魔獣が出たらしくってね、高ランクの冒険者が大怪我して戻ってきたってよーって話してたんだけどね、そしたらいきなりね、すんごい剣幕で行っちゃってさ」
まさか一人で森に__!?
「奥さんトマトありがとうございます! ちょっと用事思い出したんですみません!!」
もらったトマトを近くの棚に置いて奥さんを見送る余裕なく慌てて外に出た。凪の隣の小さいふわふわを見て目を見開いた。
「ロイ!?」
”「僕も一緒に行く!!!」”
「駄目!! 夜の森は危ないからお留守番してて!!」
”「ロザンナを早く見つけないと! それにアビーに何かあったらロザンナが悲しむから!!!」”
”「ロイ、俺は何かあれば美桜を優先する。 自分の身は自分で守らなければいけないが、それでも一緒に行くか?」”
”「一緒に行く」”
凪の問いにロイは迷うことなく即座に返事をした。迷いもなく、ロイの意志は固かった。
”「凪、私もなるべく自分で自分の身を守るよう頑張るから、ロイのことも気にしてあげてほしい」”
”「分かった。 だがさっきロイに言ったとおり万が一の場合は俺は美桜を優先する。 それは何があろうと変わらない。 いいな?」
”「……わかった」”




