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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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74.同じ物ですか?

まずはお手本を見せてくれることになり、ジェドさんに弓矢を渡した。私が立っていた場所よりも遠い場所に立ったジェドさんは弓を構え、そして引きながら矢を構えた。自分のやってるところを見てたわけじゃないけど、私とジェドさんの立ち姿は明らかに違うと分かる。まるで上から糸で引っ張られているのかと思うくらい背筋はまっすぐ伸びていて、弓を構える時も弓を引く時も顔も体もぶれなかった。動いているのは腕だけ。視線もずっと的である木に向けられている。ジェドさんの周りだけ静寂に包まれているような……空気が違って見えた。手から離れた矢が目に見えぬ速さで木に突き刺さった。


本当に私が使ってた弓矢?別物でしょ?って言いたくなるくらい真っすぐに、そしていい音を立て刺さった。



「使い方や体の動かし方が少しでも伝わったならいいんだが」

「ありがとうございます。 見せていただいて自分の姿勢がダメダメだったって分かりました」

「誰でも最初からできる者はいない。 何をするにもまずは気付きが大切だ」



ジェドさんのこと全然知らないけど、不思議と落ち着く感じがするのは声のトーンとかじゃなくなんとなく凪に似てるんだと思った。動じないような……そんな雰囲気がよく似ている。



「まずは弓だけで練習しよう」

「はい」



弓を受け取り、足を広げ弓を構えた。そして弓を引く。



「肩に力が入りすぎている。 深呼吸をして息をゆっくり吐きながら肩の力を抜けるか?」



言われた通り鼻から息を吸って、口からゆっくり吐きながらできる限り肩の力を抜く努力をした。



「肩と地面が平行になるよう意識をしながら、顎を引いて。 だが引きすぎて頭がぶれないように気を付けるんだ。 頭のてっぺんから糸が出ていて真上に引っ張られていると想像してくれ。 背中も丸まらないよう意識すること。 弓矢は腕だけじゃなく全身を使う。 身体全体の重心をへその下あたりに集めるよう意識すると身体が安定しやすい」



言っていることは凄くわかりやすいけど、言われた通り動けているか分からない。そして腕がぷるぷるし始めてきた。これはやばい。



「力を抜いて弓をいったん下げよう」



弓構えをやめ、全身の力を抜いた。



「動作に集中するあまり呼吸を止めてしまってるから肩に力が入っている。 慣れるまでは難しいかもしれないが、動作に余裕ができてきたら静かな長い呼吸を意識してくれ。 大きく呼吸すると体がぶれやすいから焦らずゆっくりと、だ」

「はい」

「ではもう一度構えてみてくれ」

「はい!」



的確に言語化してくれるからイメージしやすい。何してる人か分からないけど、教え慣れてる感じがするからもしかしたら教官?のような仕事についてるのかもしれない。

ジェドさんは基本口頭で教えてくれたけど、必要な時には正しい姿勢になるように手を使って矯正してくれた。触れる時には必ず一言断りを入れてくれる。真面目で紳士的な人だ。





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