68.どっちがいいですか?
食事を終えてお風呂に入って体がさっぱりした。お風呂は貴族のお家にしかないって思ってたけど、ロザンナのお家にはとっても立派なお風呂がある。温泉旅館の個室にあるお風呂みたいなシンプルながらしっかりとした作りのお風呂だ。お湯を沸かすのも、お湯を綺麗な状態に保つのも加工された魔石が可能にしているらしい。でもドライヤーのように髪の毛を乾かすものはないのでそれが少し不便だと感じる。今も部屋でタオルで頭をごしごししながらタオルドライ中だ。
「髪の毛……短くしようかな……」
「急にどうした」
「髪の毛乾かすの大変だし、どうせウィッグ被ってすごしてるし短い方がいいかなって思って」
今まで髪の毛短かったことないけど、流石にドライヤーなくてこの長さは毎回面倒くさすぎる。濡れたままでも気にならない性格ならよかったんだろうけど、気になりまくる性格なのでこればっかりはしょうがない。それにこの世界にはどうやらヘアケア商品が存在しないらしく、髪の毛がどんどんパサついていく。貴族の人は香油を使ってるらしいけど、ちょっと値が張るので庶民の私はなかなか手が出せない。もう少し収入が安定すれば買えるんだけど、所謂嗜好品なるものを貯金で買うのも気が引ける。私ってば根っからの庶民だわ……。
「短くしたいならそれでもいいだろうが、自分で切れるのか?」
「え? 自分で切れるわけないじゃん。 どっか美容室行くよ」
「黒髪であることがばれるぞ」
「あ……」
そうじゃん……黒髪なの隠すためにウィッグつけてるのに髪切るためにバレるとかダメじゃん。そしたら自分で頑張って切る?前髪すらまともに切れないのに?いや……無理だな。
「……諦める」
椅子の背もたれに項垂れた。
「凪的には私は髪の毛長いのと短いのどっちが似合うと思う?」
「……どっちでもよい」
「……どっちも似合うってことだよね? そうだよね?」
じとーっと見ると、プイッと顔を背けた凪はくつろぎモードに入った。見た目も中身もイケメン凪だが、こういうところは他の男と一緒だったか……。
ある程度髪の毛が乾き、ウィッグを被った。
「どこに行くんだ」
「ロザンナのところ。 一緒に行く?」
「いや、ここにいる」
「分かった。 んじゃちょっと行ってくるね」
鏡で黒髪が見えていないかしっかりチェックして、部屋を出てロザンナのところに向かった。




