67.目……です。
その日の夕食はロザンナ、ドルフさん、アビーさんと食卓を囲んだ。昨日はドルフさんは遅い時間まで鍛冶場にこもっていて、今朝も私たちが食事を終えた時にダイニングに姿を現したので、こうしてみんなで食事をするのは初めてだ。
「また店でもめたんだって?」
「…………」
ロザンナの言葉に反応することなく、ドルフさんは食事をする手を止めず黙々と食べている。私のお父さんと違ってすごく寡黙だと思う。うちの父は良くしゃべるといっても成績だの仕事のことだの楽しくもない話しばっかりだったけど。
「お姉ちゃんもどうせ見てただけでしょ」
「いざとなりゃその辺の武器でぶった切ってやったよ」
「もう! 物騒なこと言わないでよね! まさかミオその場にいなかったよね!?」
「いや……まさかの遭遇しちゃって……」
「えぇ!? 大丈夫だった!?」
スプーンを持ったままロザンナは口と目をおっきく開いた。事件のように騒いでいるのはロザンナだけで、二人は気にも留めていないし、何で騒いでいるかもわからないという顔でお酒を飲み干した。ジョッキサイズのコップで赤ワインを飲み干すってすごい……。しかも二人ともケロッとしてる。恐ろしい。もっと恐ろしいのが1本のワインをみんなで飲むんじゃなくて、一人1本ずつ飲んでるってこと。私は小さなグラスに赤ワインを注いでもらったけど、まだ半分も飲んでない。
「武器を取りに来たお客さんが間に入ってくれて、大事にならずに済んだ感じ」
「それなら良かった。 でも今回はなんでもめたの?」
「無礼な奴が武器作れって来たから断ったら逆上したってだけさ。 いつものことでしょ」
「それってまた高ランクの冒険者?」
「また?」
「あぁ……お父さんの依頼を受ける基準は偉い人とかお金とか権力とか関係ないからさ、断るとたまに怒る人がいるんだけど、高ランクの冒険者の割合が高いんだよね」
弦月のみんなみたいな高ランクな冒険者ばかりじゃないってことか。冒険者に限らず、仕事とかしててもそうだった。偉くなって偉そうになる人と、偉ぶらなくて周りから慕われている人がいた。
「ならどういう基準で依頼を受ける人を選ぶんですか?」
「……目だ」
「目、ですか?」
「そう、目だ」
それだけ言うと、ドルフさんはまた食事を始めた。
目……どういう事?分からん……が、目は口程に物を言うっていうくらいだから、ドルフさんは相手の目を見たら本質を見抜く力があるんだろうか?凪が悪意がある人に敏感なようなものなのかな?
「そういや、ミオは武器何使ってんのさ」
「基本的には弓を使うんですけど、せっかくアーチザン王国にいるので接近戦だったり護身のために自分に合う短剣を探そうかと思ってます」
「そうだね、ミオの体型を見る限り長剣や斧、槍は向かなそう。 武器は出会いだからね、気になる鍛冶屋がありゃ入ってみた方がいい」
「そうなんですね、教えていただいてありがとうございます。 街を散策してみます」
「あはは、ミオは礼儀正しいね!」
にかっと笑うアビーさんの笑顔は雲一つない真っ新な空にある太陽みたいだ。




