62.胸が痛いです。
椅子に座ったロザンナは膝の上にロイを乗せ、柔らかな毛並みを撫でた。撫でながら心を落ち着かせているようだった。私の足元には凪がいる。いつも心配してくれてるのか、できるだけそばに居ようとしてくれている凪の気持ちが伝わってくる。
「私は両親の事を尊敬してる。 お姉ちゃんのことも。 母を亡くして父は以前よりも武器づくりに力を入れるようになった。 そんな父をそばで支えたくて鍛冶職人になる道を選んだんだけど、私にはお姉ちゃんみたいに才能がなかった。 そんな私のことをみんな残念そうな顔をしてみるの……」
家族の中で一人だけ才能がなく、周りから可哀そうな目を向けられる辛さは私にもよくわかる。兄と姉がいたけど、二人とも優秀でその上見目秀麗。だからこそ完璧は当たり前で、それだけでは駄目だった。私には基本の完璧ささえなかった。そんな私に親が興味を持たなくなったのはいつからだっただろうか……勉強についていけなくなって学年3位に入れなくなった頃だっただろうか?もうよく覚えていない。覚えていないというか、思い出したくないのかもしれない。
「周りがどう思ってるのか分かってる。 そう思われることが辛い時もあった。 でも、気にしてたってしょうがないから、私は私なりにちゃんとできることを探してる。 私なりにどうやったら家族を支えられるのか考えてる」
”「ロザンナ……」”
涙を流すロザンナを慰める様にロイが彼女のお腹にすり寄るように顔を近づけた。
「ロザンナ……お父さんとお姉さんのことが大切なんだね」
私は大学に上がる前に家族への想いはなくなってしまったけど、ロザンナは違う。家族のために何ができるのか一生懸命考えてる。それは簡単なことじゃない。
「私焦ってる……そんな私の気持ちにお父さんもお姉ちゃんもたぶん気づいてる。 お姉ちゃんは私のことを可哀そうだと思ってるのかもしれない」
「どうしてそう思うの?」
「普段は優しいんだけど、武器を作ってると『そんなことしなくていい!』『いい加減諦めて違うことをしろ!』って怒るんだ。 本当は才能のない私が一生懸命になってるのが恥ずかしいのかもしれない。 それに鉱石を探しに行くって言うといい顔をしないから、採掘に行くときは何も言わずに行くようになった」
「ドルフさんからは武器づくりについて何か言われたりしないの?」
「お父さんは……特に何も……言ってもしょうがないって思ってるのかも」
「私頑固だから」と笑うロザンナ。その笑顔を見ていると胸が痛む。私の方が泣いてしまいそうだ。




