58.甘えます。
今日は歩き回ったからか、全身筋肉痛だ。特に足がパンパン。湯船に浸かった瞬間極楽だった。そういえばこの世界に入浴剤ってあるのかな?なかったら自分で作れるかな?ベッドに横たわったままそんなことを考えた。
マップを開いて現在地を確認した。凪が把握してくれてるとはいえ、頼りっぱなしもよくない。地図読むの得意じゃないけど、そんなこと言ってたら成長しない。苦手なことも挑戦してやっぱ苦手だったら諦めるか、できるところまでは頑張るか考える。こんなふうに思えるようになるなんて、日本にいた時には考えられない。苦手なことも苦手と言えなかった。やるしかなかった。どれだけ辛くても。
マップの赤いマークに目を向け、ため息がこぼれた。そして手が震えてることに気が付いた。寒いわけでもないのに、冬に外にいるみたいに指先が冷たい。今更になってあの時の恐怖に襲われ始めるなんて……。きっと今日みた魔獣が怖かったからかな。頭では理解しつつ、気持ちがまだ整理できてないようだ。本当に強くて勇敢な人間になれんだろうか……。
「凪?」
ベッドで隣でくつろいでいた凪の尻尾が私のお腹をぽんぽんする。まるで子供をあやす母親みたい。
「お前はよくやってるよ」
「凪がいてくれるからだよ」
「忘れるな。 美桜は少しずつだが前に進んでいる。 お前は真面目だからもっと早くこの世界に適応し成長するべきだと考えているだろうが、前に進めている……その事実が大事なんだ」
少しずつでも前に……そうか、少しでもいいんだよね。だって凪が言う通り前に進んでる。この世界で生きるために前向きに考えられてる。そう思えてることが大切なんだよね。
「ねぇ、凪」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないじゃん」
「言わなくてもわかる」
「凪」
「だから駄目だと__」
「ありがとう」
凪の言葉をスルーして凪を抱きしめた。首元にギュッと腕を回して、くっついた。安定のお日様の香り。凪は口では駄目だと言いながらも嫌がるそぶりはしなかった。諦めてるのか、本当は駄目だなんて思ってなかったのか、本当のところは分からないけど、そばにいてくれるってことは嫌われてないっていことだよね?
生きてきた中でこんなに誰かに甘えられるのは初めてで、自分がこんなに誰かに甘えられる人間だったことに驚きだ。でもそんな自分が嫌ではなかった。今まで見て見ぬふりをしてきた自分自身をこれからは知っていきたいと思えた。




