54.羨ましいです。
準備を整えて家を出た。目の前の大きな家が小さな模型になると、ロザンナは目ん玉落っことしそうなほど目を見開いた。目だけじゃなく口も。
「魔道具だったのね!? こんなところにあんな立派なお家が建ってるのが不思議だったんだけど納得したわ! もしよかったらよく見せてもらえない!?」
今まで敬語だったロザンナは興奮のあまり素が出たみたいだ。模型を渡すと両手で隅々まで触り、いろんな角度で見始めた。瞳をキラキラさせ、欲しかった玩具を買ってもらった子供みたいな顔をしている。
ドワーフは武器を作る人たちだから、こういう武器じゃない道具にも興味をもつのかな?
”「行かないのか?」”
”「もう少し待って。 今はお家の魔道具に夢中みたいだから」”
”「ロザンナは新しい物を見るといつもこうなるんだ!」”
そう言うロイも何故だかロザンナと同じようにわくわくしているような顔をしている。可愛い。二人を見ているだけで心が温かくなる。
暫くの間模型を興味津々に、穴が開くほどの勢いで見ていたロザンナはハッとしたかと思うと今度は顔を真っ赤にした。
「ご、ごめんなさい! つい興奮してしまって……見せてくださってありがとうございます」
「あははは!」
私が笑うとロザンナはもっと顔を真っ赤にした。模型を受け取り、バッグにしまいながら口を開いた。
「敬語じゃなくていいよ。 その方が嬉しい」
「え? あ、本当? じゃあそうする」
ロザンナは少し照れたようにはにかんだ。表情がころころと変わる。
ロザンナの前でマップを開くことができないから頑張ってアーチザン王国までの道を覚えた。と言いたいが、私の脳みそがそんなに優秀なわけないので、道のりは凪が覚えてくれた。戦えて、包容力があって、記憶力も抜群。切れ長の涼しげな瞳を見る限り、人間だったら相当なイケメンだったに違いない。
念話で凪が道案内をしてくれながら森の中を進んでいった。
「あ! あの辺り見てもいい!?」
「うん」
「あ! あの辺りも!」
こんな感じで素材になりそうなものが目に入ると立ち止まってはしゃがみ込み、厳選するかのように素材を真剣に見つめている。その姿を見ながら、羨ましく思った。日本にいた時も今もこれほど夢中になれるものに出会ったことがない。学生時代の勉強も、大人になってから務めた仕事もやりたかったわけじゃなく、そうしなければいけないと思っていた。まぁ、だから自由に楽しそうに、時には夢を持ってるような男にばかり惹かれたのかもしれない。




