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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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50/120

49.甘可愛いです。

 凪の背中に乗って森の中を進んでいると、頬に冷たい水が一滴落ちてきた。


 嫌な予感がして顔を上げると一滴どころか、数えきれないくらいの雨水が全身に降り注いだ。



「マジ!?」



 レインコートを着る気すらなくなるくらい全身びしょ濡れ。雨降る気配なかったのに!出発して数日にして初めての雨でしかも土砂降り。最悪!


 雨粒は大きいし、結構激しい。スコールっぽいけど……これどうなんだろう。



「凪! お家出せそうなところで止まって! 雨が止むまで休もう!」


「承知した」



 激しい雨と、凪の走るスピードで目がまともに開けられない。



「身を低くしていろ」



 言われた通り、身を伏せていつも以上に凪の背中にくっついた。



「大丈夫!?」


「俺なら心配いらん」



 いつもハッキリ答えてくれるから、凪に不可能なことってないんじゃないかと思う。スーパーマン的な。


 雨のせいで身体が冷えてきたのか、凪を掴む手に力が入りづらくなってきた。



「ここで大丈夫そうか?」


「うん! 充分!」



 見つけてくれた場所は実家の半分ぐらいだったら建てられそうだった。お家を建てる時にイメージが大事って事よね。


 模型を出して、一階のダイニングとリビング、お風呂とトイレだけをイメージして、他の部屋は考えない様にした。急いで凪とお家の中に入った。



「ギャッッ__!!」


「悪い」


「いや…うん、しょうがない」



 凪が身体を震わせると物凄い水滴に攻撃された。狼もイヌ科だもんね。自然とそうなるよね。



「ちょっとそのまま待ってて」



 洗面所まで走ってバスタオルを取りに行った。そのバスタオルで凪の身体を拭こうとしたら「俺はいいから自分を拭け」と言われた。



「私はシャワー浴びるからいいよ! それか凪もお風呂入る?」


「俺はいい」



 そう言うともうご勝手にと言わんばかりの顔をされたので、遠慮なくタオルでゴシゴシ拭いた。そして私はシャワーを浴びた。本当は湯船に浸かりたかったけど、濡れて気持ち悪くなった身体を早くどうにかしたかったので、シャワーで我慢した。



「あースッキリしたぁ〜」



 凪はリビングの絨毯の上で寛いでいた。



「全然止みそうにないね」



 窓から外を見ると、さっきよりも天気が酷くなっている気がした。雷鳴ってるし。



「森のルートにしといて良かったね。 普通の道端にお家出すわけにはいかないし」


「そうだな。 この世界の雨は日本みたいにずっと降る様なのは珍しいから直ぐ止むとは思うが……」


「そうなんだ。 でもこの雨はヤバいよ。 バケツをひっくり返したみたいな雨だもん」


「雨は嫌いか?」


「雨が嫌いっていうより、急な雨で濡れるのが嫌いかな」


「凪は?」


「俺は嫌いじゃない。 天の恵みだからな」



 私も凪程長生きをした時にそういう風に言えるようになってるんだろうか。



「身体冷えたでしょ? ホットミルクでも飲む?」


「頼む」



 水を飲んでるところしか見た事なかったけど、ミルクは飲めるみたい。

 凪の分を用意した後、私は自分のホットミルクも用意した。


 特にやる事もなかったので、ソファーに座ってリストを見た。


 あ!薬が増えてる!!


----------


 日本の薬[鎮痛剤・風邪薬・胃薬・整腸剤]

 絆創膏


----------


 オクタヴィアンさんってば!なんて仕事が早い!しかも言ってもない薬も入れてくれてる。メッチャ親切。


 持ち物確認後、凪の身体をブラッシングしてあげた。雨の中走ってボサボサになっていたから。



「止んだな」



 暇すぎてウトウトしていたら、そう言われて窓の外へ目を向けた。


 空だけ見ると、さっきまで土砂降りだったとは思えないくらい陽射しが出ている。でも地面に目を向けるとべしゃべしゃしてる。



「今日はもう動くのやめとこうか」


「そうだな」



 _カチッ、カチカチ…カチカチカチッッ!



「なんの音?」


「窓の外だ」


「何!? あの可愛い生き物! ワンチャン!?」


「ハニードッグだな。 鑑定を使ってみろ」



 あ、その手があったね。


 【ハニードッグ】

  嗅覚が鋭く、特に甘い香りを嗅ぎ分ける事に長けている。蜂の巣、果物、木の実などの採取家が従魔にしていたが、愛くるしい見た目の為今では愛玩動物として従魔にする者も多い。


 色は柴犬だけど、見た目は豆柴がもう少し毛がふわふわした感じで触り心地が抜群に良さそう。



“「た__けて」”


「今の……」



 頭の中に知らない声が響いた。まさかと思って慌てて窓をあけると、さっきよりもハッキリと頭の中に響いた。「助けて」って……。



「あなたが言ったの?」


“「僕の言葉が分かるの!?」”


「うん、そうみたい」



 この子とは意思疎通が取れるみたい。



“「お願い! ロザンナを助けて! 怪我して動けないんだ!」”


「凪!」


「あぁ」



 ハニードッグも一緒に凪の背中に乗せ、案内してもらいながら怪我をしているロザンナがいる場所へ急いだ。


 話によるとさっきの急な雨で地面がぬかるんでしまったため、足を滑らせて段丘崖だんきゅうがいから落ちてしまったらしい。登ろうにも高さがある上にどうやら足を怪我してしまってる様だ。



“「ここだよ!」”



 凪から降りて下を覗くと、女の子が倒れていた。5メートルくらい高さありそうだけど……。不安が募る。



“「ロザンナ! ロザンナ!!」”


「ロザンナ!! 聞こえる!? 聞こえたら返事して!!!!」



 声をかけるけど反応がない。ハニードッグの話だと落ちた時はまだ会話出来てたみたいだから、意識を失ってるだけだと思うんだけど……というかそう思いたい。



「凪、助けられそう?」


「問題ない」



 そう言うと凪は難なくロザンナの元に辿り着いた。



「凪!!」


「意識を失ってるだけだ!!」



 良かった。


 安心させる様にハニードッグの頭を撫でた。


 凪はロザンナを咥えて私たちのところへ戻ってきた。ロザンナの洋服も肌も泥だらけになっていて、どこにどんな怪我を負っているのか分からない。


 私は凪の上でロザンナの身体を支えた。そのロザンナの膝の上にはハニードッグが心配そうな顔をして座っている。

 凪には少しスピードを落としてもらい、私たちは家に戻った。






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