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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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40/118

40.治癒魔法は貴重です。

 この1週間は薬草採取に出掛けてはその合間に結界を張る練習をした。みんなが寝る間も惜しんで魔物の討伐に行っていると聞いたから、私も少しでも力になれる様にポーション作りに時間を割いた。中々のハードスケジュール。久しぶりの睡眠不足に仕事をしていた時を思い出した。



「少し休め」


「あと1個作ったら寝るよ。 凪は先に寝てて」


「……約束だぞ。 寝ていなかったら明日の薬草採取は中止して、部屋から出さないからな」


「うん、約束する」



 私の足元でくるまる凪。


 ベッドで寝たらいいのに……とことんいい男だよ。


 疲れてるのは私だけじゃない。きっと凪も疲れてる。私に合わせて動いて、護衛の為に神経張り巡らせて、その上魔物に遭遇したら退治してくれる。凪のおかげで魔石を売って生活費の足しにできてる。


 自分以上に働かせてる…私が弱いばっかりに……。



「はぁ……っ__!」



 凪の耳がピクピクっと動いて慌てて口元を両手で押さえた。思わずため息溢しちゃった。


 この日は凪と約束した通り、自分の中のノルマである残りの1個を作り終えてベッドに入った。私がベッドに入ると、凪も軽やかな動作でベッドの上に乗った。


 小さな声で「おやすみ」と言うと、凪の尻尾がポフポフっと私の身体を布団越しに叩いた。不安がありながらもちゃんと眠れるのは凪がいてくれるから。


 翌日は朝ごはんを食べ直ぐに宿を後にした。



「おはようございます!」


「おはようございます。 今日もポーションを持ってきて下さったんですか?」


「はい!」



 無表情ながらもパブロさんの声には親しみを感じる。出逢って間もないけれど、少しは信用してもらえているのかな?と思う。


 ポーションを鑑定してもらいながら、お決まりとなった近況報告。私からする事は殆どないので、話しを聞く事の方が多い。



「今日ポーションを持ってきて下さったという事は、昨日森に行かれたんですよね?」


「はい」


「強い魔物と遭遇したりはなかったですか?」


「遭遇はしましたけど、凪が退治してくれました。 どのくらいの強さなのか私にはよく分からなくて……」


「まだ魔石はお持ちですか?」


「持ってます」



 バッグから巾着袋を取り出し、中に入っている魔石をテーブルの上に出した。転がった魔石の大きさは様々だ。この中で一番大きな魔石も、どのくらいのレベルの魔物なのかは私には分からない。


 パブロさんは一番大きな魔石を掴み上げると、眉を潜めた。



「この大きさは恐らくC級の魔物ですね。 その上色も濃いので瘴気に当てられていたでしょう。 凪さんの様に強い従魔が一緒で良かったです。 Eランクのミオさん1人だったらよほどの運がない限り生きて戻れなかったでしょうね」


“「そんなに強い魔物と戦ったの!?」”


“「恐らくアンガーバードだろうな」”


“「空からいきなり襲ってきた鳥!?」”


“「そうだ」”


「凪がいてくれて良かったです」



 突然怒り狂った勢いで襲ってきた大きな鳥を思い出した。両手を広げたくらいの大きさだった。あの鳥そんなに強い魔物だったんだ……凪ってばあっという間にやっつけちゃったから強いとは思わなかったよ。かなりびっくりさせられたけど。



「これを見て私も凪さんがいて下さって良かったと心から思いましたよ」


「いやぁ…本当ですよね」


「笑い事じゃないですよ」



 へらーっとした顔をしていた様で、パブロさんに鋭く突っ込まれた。



「昨日魔物に襲われた商人が酷い怪我で運ばれました。 早朝亡くなったと報告を受けました」


「……ポーションでどうにかならなかったんですか?」


「その方は足を失い出血も酷く発見も遅れた為、傷口も壊死し始めていたそうです。 壊死を治療するには上級の更に上の特級の再生ポーションが必要です」


「特級? 誰も持っていなかったんですか?」


「特級のポーションの材料は上級以上に希少で、更に誰でも作れるわけではありません。 値もはりますし、販売してもどこかの貴族が買い占めてしまうので、街の人が持っている事などほぼ無いと言っていいでしょう。 ポーションがなくても、光属性で治癒が使える方がいれば助かっていたかもしれません」


「え!? 光属性って治癒が使えるんですか!?」


「光属性の方皆さんが使えるわけじゃ無いですよ。 光属性の方は基本結界に特化している方が多いので、治癒を使える方は稀です」


「最初使えなかったらもうずっと使えないんですかね!?」


「途中から色んな技を覚える方も多いので、もしかしたら……って、ミオさんは光属性なんですね?」


「あ、はい、そうです」


「では、一つ忠告です」



 鋭く真剣な声色に、背筋を伸ばした。唾をゴクリと飲み込み、パブロさんの次の言葉に緊張する。



「今は治癒が使えない様なので問題ありませんが、もしも治癒を使える様になったら無闇矢鱈と使わない事です」


「……何でですか?」



 治癒が使えたら良いことなんじゃないの?



「治癒が使える方はとても貴重なんです。 つまり利用価値があり、手に入れたいと思う方がいるということです。 強い後ろ盾がある、もしくはミオさん自身が恐れられる程強いのならまだしも、今のミオさんでは簡単に攫われますよ。 いつも凪さんと一緒にいるとは言え、四六時中一緒とはいかないでしょうから」



 攫われるって……どっかに閉じ込められたり、そのまま売られたりって事があるかもってことだよね?そんなの絶対に嫌。



「き、気をつけます」


「すみません、怖がらせるつもりはなかったのですが……」


「いえ、教えて頂けて良かったです」


“「そう怯えるな。 俺が付いているだろう」”


“「それはそうなんだけど……怖いものは怖い」”



 凪の事は信頼してるけど、いかんせん私は弱い。トイレとかお風呂とか1人になった時に……って考えただけでブルッと震えた。






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