38.魔石はお金になるそうです。
話をしていて驚くべきことが発覚した。確かに特に仲が良さそうだとは思ってたけど、まさかマルティナさんとシモンさんが夫婦だったなんて!
「出会いはなんだったんですか!?」
「私は元々ソロで活動してたんだけどね、一緒にパーティ組まないか?ってラウルに誘われたの」
「ちょうど魔法担当が抜けちゃってさ、適任いんじゃん!って事でマルティナ誘ったわけ」
「ずっとソロでやってきたのに、パーティって抵抗無かったんですか?」
「乗り気じゃ無かったんだけど、シモンに一目惚れしちゃって」
「あはは」って照れたように笑うマルティナさんは、今でもシモンさんの事が大好きって顔してる。照れ隠しなのかシモンさんの逞しい肩をバッシバシ叩いてる。そんなマルティナさんに嫌な顔せず、寧ろ愛おしそうな目を向けているシモンさん。無口でぱっと見怖そうだけど、マルティナさんには特に優しいんだろうなぁ。
今は聖女の仕事しないといけないのはわかってる。そういう約束だし。でも、羨ましいと思わずにはいられない。
「2人が夫婦になれたのは俺のおかげだな」
誇らしげな顔をするラウルさんに、マルティナさんシモンさん夫婦は「ハイハイ」と言いたげな顔をした。
「そうとは言い切れないと思いますけど……」
テオさんの言葉にうんうんと肯くとラウルさんの手が伸びてきたので、慌てて隣にいたシモンさんの後ろに隠れた。
「あれ? それじゃあテオさんはマルティナさんより後にパーティメンバーになったって事ですか?」
「僕はマルティナさんの少し後に入ったんです」
「テオは私の従弟でね、冒険者になって直ぐ誘ったの。 テオは探索とか結界とか繊細な魔法操作が得意だから凄く助かってる」
今気になる言葉が……。
「結界って繊細な魔法なんですか?」
「あたりめーだろ。 攻撃魔法みたいに一気に撃ち込めばいいわけじゃなくて、神経張り巡らせて維持しなきゃなんねーからな」
「でも攻撃魔法みたいに一気に大きな魔力を必要としないから、魔力がそんなに多くない人でも結界はできるよ」
「なぁに言ってるの。 結界の強度は術者の繊細な操作技術と精神力によるじゃない。 テオの結界はいつもばっちり安定してる」
「なんか、改めて言われると照れますね……ははっ、ありがとうございます」
あったかいチームだな。お互いが尊敬してるって感じ。
マットの上で寛ぐ凪の横に座って頭を撫でた。
「ミオは依頼は薬草採取しか受けてねーんだよな?」
「え? あ、はい。 凪が一緒ですけど、やっぱり不安なんで薬草採取しか受けてないです」
「今後は魔物討伐とか受けんの?」
「んー……私も多少は戦えるようになったら考えます」
「賢明な判断だ」
普段無口なシモンさんから褒められると、なんだか嬉しくなる。シモンさんが幾つなのかは分からないけど、お父さんってこんな感じなのかもしれないって思わせてくれる。
父親との関係性はハッキリ言って良くなかった。父親に限らずだけど。だからなのか、他人の持つ愛情に敏感なのかもしれない。
「薬草採取とはいえ、今は森の奥の依頼は受けるなよ」
「そうそう、物凄い瘴気を纏った魔獣がいるんだけど、神出鬼没でまだ討伐ができてないのよ」
「え!? そんな危ない魔獣の討伐も冒険者がするですか!?」
「冒険者以外でも騎士団とか傭兵団とか、魔物を討伐する人たちはいますよ。 ですが、瘴気が濃ければ濃い魔物ほど討伐した時の報酬金額が高いので、冒険者が討伐に向かう事が多いんです」
てっきり浄化対象の魔物は聖女の仕事なんだと思ってた。
“「浄化だけが対処法じゃないってこと?」”
“「浄化をせずとも倒すことはできるが、濃くなった瘴気は薄まらない。 そうなればまた新たな濃い瘴気を宿した魔物が直ぐに生まれる」”
それならやっぱり聖女の存在意味はあるって事か。
「瘴気の濃さなんてどうやって分かるんですか?」
「魔力感知能力に長けてる奴ほど相手のヤバさで瘴気の濃さが分かる。 討伐後、魔物からは魔石が取れる。 その魔石がでかければデカイほど魔力が強く、色が黒に近いほど瘴気に侵された魔物って事だ」
「そうなんですね……知らなかったです」
いい事聞けた。私は浄化するだけで倒すわけじゃないから魔石は取れないんだけどね。
「報酬金額が高いっていうのは、その魔石が高値で売れるって事ですか?」
「報酬金額と魔石のお金は別よ」
「危険度が高い魔物ほど報酬金額が高くて、その報酬金額とは別に手に入れた魔石も買い取ってもらえるんですよ」
なるほど、なるほど。ん?
“「凪バンバン魔獣倒してたけど、魔石は?」”
“「取ってないからそのままだ。 金になるとは知らなかった」”
そりゃそうだよね。そんな細かな設定までいちいち把握してないよね。冒険者ギルドは人の作ったものだし、凪が知るわけないか。
“「魔物討伐依頼を受けるつもりはないけど、これからは凪が倒した時は魔石回収しよう」”
“「承知した」”
「魔物と遭遇したら逃げることだけを考えろ。 いいな?」
「分かりました」
「そうよ。 瘴気が濃い魔物ほど凶暴で理性がきかないから、判断を誤らず、直ぐに逃げる事。 凪がサポートしてくれればきっと逃げ切れるわ」
マルティナさんが凪の顔を見ると、凪は一度尻尾を上げてすぐに床に下ろした。
皆んなには聞こえないけど、私の耳には確かに「任せておけ」と声が聞こえた。
「凪大好き!」
ガバッと首元に抱きつくと、みんなに笑われた。




