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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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33/128

33.世間知らずです。

 この世界で初めて稼いだお金で買ったお肉もジュースも美味しかったけど、それだけで私たちのお腹が満たされるわけなく、出店でご飯を買って遠足気分でそのまま広場で食べた。遠足でシートを敷いて外で食べたりはした事あったけど、こうして広場みたいなところで食べるのは初めて。私たち以外にもたくさんの人がこの広場で寛いでいる。談笑してる人、ご飯食べてる人、飲み物を飲んでる人、喫煙スペースらしきところでタバコを吸ってる人もいる。


 当たり前だけど獣人が多い。少しは見慣れたとはいえ、やっぱりまだ慣れない。今のところ毎日がハロウィンだ。失礼だけど。この世界にハロウィンってあるのかな?それ以外の行事も。



“「商人ギルドに行ってもいい?」”


“「あぁ」”



 先ずはポーションを買いに行こう。


 立ち上がってお尻を叩いた。今日は帰ったらお洗濯しよう。何気に洗濯物が溜まってる。


 洗濯事情も驚いた事に手洗いだった。洗濯をどうしたらいいかと宿の人に尋ねたら、裏に洗い場があるからそこを使ってくれと言われた時には驚き過ぎて言葉に詰まった。この世界は便利なのか不便なのか……極端過ぎて驚かされる。


 まぁ、洗濯も室内で洗濯機を出せたので楽にできるだろう。トイレの時もどういう仕組みかはさっぱりだけど、水が流れたし、お洗濯の時も勝手に水が出てくると思ってる。何が便利って、ドラム式洗濯機で乾燥までついてるから外に干さなくてもいい!シワが目立つ洋服とかは止めといた方がいいだろうけど……。


 今回宿に泊まる様になって気付けた事は、お家を出した時に中にあるものは自由に取り出せるという事。つまり実家にあった物は好きに使えるっぽい。もし違う家を想像してそのまましまっちゃったら、その時あったものしか取り出せなくなるのかな?とか思ったりもした。これは要実験。今度人目につかないところで家を出して試してみよう。



「こんにちは。 このポーションの買取をお願いしたいんですけど」



 今日も無表情な男性の耳は茶色くて少し細長い尖った耳をしている。なんの動物だろう?



「鑑定させて頂きます」



 メガネをクイっと上げ、ポーションを見る目は鋭かった。話し方はとっても丁寧なんだけど、表情が全く変わらないから怖い。


 パブロさん_胸元のプレートにそう書かれているので、それが名前だろう_はひと瓶ずつ手に取ってじっくりみていく。


 あー緊張する。掌にじわーっと汗かいてる感じがする。


 ん?今薄ら口元が笑った気がする。



「魔力量と濃度がとても高い病態回復の上級ポーションですね。 ひと瓶3000ルピで買い取らせて頂いても宜しいですか?」


「は、はい!」


「では、5本買い取らせて頂きますので、15000ルピになります。 カードをお願いします」



 あ、そうだった!


 慌ててカードを出した。


 パブロさんが水晶に指先で触れると、プレートが現れた。そのプレートに何やら入力している。そしてカードを水晶に差し込むと“ピロン”と音がしてカードが出てきた。



「カードお返しします」


「は、はい」



 今のは入金作業かな?



「あの……」


「はい?」



 聞いていいものか悩んだけど、モヤモヤしたままだと気持ちが悪いから聞いてみる事にした。



「さっき鑑定してましたけど、その……ポーションを鑑定できるのって普通なんですか?」



 私が普通に使ってる鑑定と一緒って事だよね?パブロさんも使えるって事はみんな使えるのかもしれない。



「普通ではありませんよ。 私は薬草関係の鑑定スキルを持っているので鑑定できますが、持っていない方は鑑定できません」


「鑑定にも種類があるって事ですか?」


「面白い事を聞きますね」


「え?」


「当たり前のように周知されている事をそんなに真面目に聞かれたのは初めてです」



 うわ……やっば。それって今の私って可笑しなやつって事じゃん。


 嫌な汗が背中を伝っていく。



「ミオさんが仰った通り、鑑定スキルには種類があります。 そしてみんながみんなそのスキルを所有しているわけではありませんよ」


「そうなんですね。 教えてくださってありがとうございます」



 笑って頭を下げて、逃げるように店内のポーションを見て回った。これ以上は心臓がもたない。自分で言うのもなんだけど、ガラスのハートだからね。あくまで自称ですけどね。


 気になったポーションを買い物籠の中に入れていく。「中級以上のポーションにしておけよ」という凪の言葉を守って全て中級以上の物を選んだ。



“「再生って何のポーション?」”


“「怪我をした時に使用するポーションだ」”


“「なるほど。 魔力回復って?」”


“「術を使えば魔力を消耗する。 その時用だ。 美桜は魔力量が多いいから、使用する事はあまりないだろうが、念のため持っておいた方がいい」”


“「了解!」”



 凪に色々聞きながら、買い物を進めた。籠の中はどんどんポーションで埋め尽くされていく。


 毒消し、病態回復、体力回復、再生、魔力回復、麻痺消し……このくらいでいいかな。私の場合、魔力よりも体力がヤバいので、体力回復を多目に買っておこう。


 カウンターに持って行き、お会計を済ました。ここでもやっぱり袋は取手のない紙袋だ。



「ミオさん」



 出ようとして呼び止められた。



「先程私に質問されましたが、外ではあまりそういう類の質問をされない方がいいですよ」


「え?」


「強そうな従魔をお連れですが、貴女はとても無防備です。 皆が本当の事を教えてくれるとは限りません。 どうか用心下さい」



 この世界の私は非常識で世間知らずだ。恥ずかしい。日本とここは違う。分かってるつもりで分かってない。良い人たちとの出会いに甘えていないでしっかりしなきゃ。


 

「パブロさん、ありがとうございます。 気を付けます」



 最初に訪れた街がここで良かった。






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