03.状況がのみこめません。
目を開けて、左手に違和感を感じた。左手を開くと中からグッシャグシャのティッシュが現れた。ほんのり茶色く汚れたティッシュが、あれは夢じゃなかったのだと物語っている。
体を起こしてベッドの上にいるのだと気付く。部屋の中を見渡してまたもや違和感。
王家のお家だったら天蓋付きのベッドで照明はギラッギラのシャンデリアで、広々とした部屋には汚れや埃一つない絨毯が敷かれていて〜とかじゃないの?ここはそんなイメージとは真逆な部屋。
想像ではベッドはキングサイズくらいだろうかと思ってたけど、今いるベッドは恐らくセミダブルだろう。床も絨毯どころかマットもない。艶々な床ではなく、天然素材を活かしましたと言わんばかりのフローリングだ。天井の照明もこじんまりとしてる。部屋の広さも6畳から7畳くらいだろうか。
庶民な私に合わせてこんな部屋を用意してくれたってこと?
取り敢えず部屋出てみるかな。誰かしらいるでしょう。
_ギィィィ……。
え?ドア開けてこんなに音なることってある?
恐る恐るドアの外を見たけど、誰もいない。気配も感じない。なんかおかしい……と少しばかり警戒しながら足音を立てずにゆっくり歩いた。
廊下に出て一つ目のドアを開けるとトイレだった。異世界ってことで勝手にボットン便所を想像してたけど、見慣れた水洗トイレで安心した。
二つ目のドアを開けると洗面所だった。その奥のドアを開けるとお風呂場になっていた。お風呂もシャワーだけかと思いきや浴槽がある。お湯に浸かる習慣があるのでこれも助かる。
洗面所を出て三つ目のドアを開けると、広々としたリビングだった。アイランドキッチンなんてお洒落なリビングだわー……っじゃなくて!明らかにおかしいよね?誰もいないなんて……。
ほんの僅かな希望を胸に、リビングにあるもう一つのドアを開けた。大きなワンチャンを何匹も放し飼いに出来そうな程広いお庭。手入れはされてないみたいだけど、お花や木を植えたら見応えのあるお庭になるだろう。
って!そんな事はどうでいいわ!!
「ここ……絶対王族が住んでるとこじゃないよね? どういうこと? どうなってんの?」
ドアを閉めて元いた部屋へと戻った。この部屋に何かヒントとかないの!?
クローゼット、机の引き出し、ベッドの下……ありとあらゆるところを探すけど、ヒントになるようなものは見つからない。
ベッドに座ると何かが手に触れた。
ショルダーバッグ?
白で統一された寝具に紛れて白色のショルダーバッグを見つけた。さっきは全く気が付かなかった。
バッグを開けると文字が浮かび上がってきた。
-----------
このマジックバッグは所有者である美桜のみ使用可能。他の者は美桜の許可なく開けることはできない。中に入れた物は必然的にリストに記載される。リストに記載された物を使用するときは、頭の中で思い浮かべれば取ることができる。先ずはリストを思い浮かべることをお勧めします。物によってはリストに触れる事で使える物もあります。
*このマジックバッグの中は無限かつ時間の経過はありません。
-----------
なんかRPGっぽい。RPGやった事ないけど……。
取り敢えずリストっと!
頭の中でリストと言いながら鞄の中に手を突っ込むと何かが手に触れた。それを掴み引っこ抜くと、一覧が飛び出してきた。てっきり紙だとばかり思ってたけど、映像とは……こっちの世界ハイテクだわ。
-----------
*リスト*
マップ、ウィッグ、伊達眼鏡、1000万ルピ、回復ポーション小・中・大、毒消しポーション小・中・大、取り扱い説明書、世界の教科書、歯ブラシ、ヘアブラシ、化粧道具、薬草の本、スカート10着、パンツ10着、トップス10着、下着10着、インナー10着、靴5足、防寒具、ナイフ、弓矢
-----------
色々入れてくれてるみたいだけど、先ず気になるのはやっぱり1000万ルピでしょ。ルピってどういう計算になるんだろ。
んー……
「うわっ_!?」
1000万ルピの文字に触れると、お金の映像が飛び出してきた。お金の映像に添えられた説明文。
【ルピは日本円と同じ計算になります。つまりはルピ=円】
へーそれなら分かりやすくていいや。って待て待て待て!!ってことは私1000万持ってるってこと!?怖くて持ち歩けないんですけど……とか思ったけど、そういえば私以外の人には中のもの取り出せないってなってたね。取り敢えず一安心。
リストに載っているマップに触ると、目の前に地図が現れた。
【赤い印は瘴気が濃い場所になります】
【調べたい場所があれば検索を押して文字を入力して下さい】
便利〜!先ず調べるところといえばここでしょ!しっかり説明してもらわないと気が済まない。