22.ご飯屋さんに行きましょう。
冒険者ギルドを出たはいいけど、どうしよう。右を見ても左を見てもどこに何があるのかさっぱり分からない。
入り口に立ってたら邪魔になるから少し傍にずれた。
“「マップって詳細も分かるよね?」”
“「分かるだろうが、出さない方がいい」”
“「え? なんで?」”
“「あれ程詳細なマップは希少で、持っている者が少ない。 それに、検索なんぞ出来るマップは美桜が持っているものくらいだろう。 そんな物を街中で開けば目立つぞ」”
世界に一点ものってこと!?
どのアイテムを気軽に使っていいのか、ダメなのかちゃんと把握してないと……。
凪がいてくれて良かった。
“「凪、ありがとう」”
“「気にするな。 美桜を補佐するのは俺の役目だ」”
そして相変わらずカッコイイ。
頭を撫でるとふいっとそっぽを向かれた。
“「取り敢えず歩いてみよっか」”
“「そうだな」”
_ぐぅぅぅ……。
歩き出そうとした瞬間お腹が鳴った。中々豪快に。
“「先ずは飯屋だな」”
“「だね」”
腕時計を見ると14時を過ぎていた。お昼ご飯食べるのすっかり忘れてた。
そういえばここに来る途中ご飯屋さんらしき看板があった様な気がする。来た道を戻りながら改めて周りを見渡した。少し余裕が出てきたのか、来るときには気付かなかったお店が沢山ある。
あそこは宝石屋さんかな?その隣はお洋服屋さん?
色々お店に入ってみたいけど、買っちゃいそうで怖いから入れない。確かにお金は沢山ある。けど、働いて自分で稼いだお金ではないから必要な物じゃない限り買いたくない。
“「あ! あそこご飯屋さんじゃない?」”
お店を指差すと凪に尻尾で足を叩かれた。
“「無言で指をさすな。 不審者だと思われるだろ」”
慌てて手を下ろした。凪の言う通りだ。
“「ごめん……気を付ける」”
今度は優しく凪の尻尾が足に触れた。
注意する時とフォローする時のこの飴と鞭感が凄い。凪が普通に人間の男の人だったら恋に落ちてる。恋に落ちないまでも、大好きすぎて私の凪に対する想いと、凪から私に対する想いは温度差が凄いかもしれない。
早くしろと言わんばかりに顎をクイッとされた。
お店のドアを恐る恐る開けると、いい匂いが鼻に触れた。
「いらっしゃいませ!」
猫耳の可愛い女の子が笑顔で出迎えてくれた。
「何名様ですか?」
「私と……えっと、従魔も一緒に食事できますか?」
「勿論です!」
良かった。
「お席にご案内しますね。 2名様ご案内でーす!!」
店員さんの明るくてよく通る声が店内に響きわたった。
“2名様”って言ってもらえて嬉しかった。
「決まったら呼んでください」
「はい、ありがとうございます」
メニューを受け取ると、店員さんは笑顔で違うテーブルへ向かった。
メニューを開くとステーキやら焼き魚やら色々書いてるけど、日本みたいになんとか牛の~とか、なんとか魚の~とか、詳細までは書かれていない。この世界ではこれが普通なのか、ここの料理名が大雑把なのかは分からない。
こっちにきてからお肉ばっかりだったから、焼き魚とサラダにしようかな。あとお水が出てこないって事はドリンクも頼まないとダメって事だよね?飲み物はレモン水にしよう。てかレモンはあるんだ。
「凪はどれにする?」
開いたメニューを凪に見せると、凪は迷う事なくステーキにピトッと触れた。
“「本当にお肉が好きなんだね」”
“「まーな」”
「賢い従魔だな」
え?
パッと顔を上げると、隣のテーブルの人たちに見られていた。
あ、この黒耳の人!
「冒険者ギルドではありがとうございました!」
「無事に手続きはできたのか?」
「はい! お陰様で登録できました!」
「そりゃ良かった。 それより初めて見る魔獣だと思ってたんだけど、なんて魔獣?」
黒耳の彼だけじゃなくて、そのテーブルに座ってる他3人からもジーっと見られて焦った。
「お、お祖父ちゃんが拾ってきて私もよく分からないまま契約しちゃって……気にする事もなかったし、聞く前にお祖父ちゃん他界しちゃったし……」
しどろもどろになった気はするけど、変な事は言ってない筈。




