20.常識を覚えましょう。
「依頼が達成されましたら、1週間以内に報酬がお振込されます」
「お金を引き出す時はどうしたらいいんですか?」
「この建物の二階に窓口がございますので、冒険者ギルドカードでのお振り込み、お引き出し、お預けはそちらの窓口をご利用ください。 お手続きの詳細に関しましては、二階の係りのものにお尋ね下さい」
銀行も一緒になってるなんて便利。それに冒険者だらけだから、安全そう。と言っても、オクタヴィアンさんから貰ったお金はバッグの中に入れたままにしておこう。何かあった時のために、お金は一ヶ所に集めてない方がいいよね。おろしに行けない事もあるだろうし。
「預金の残高確認だけでしたら、一階の水晶でも可能です」
「水晶?」
「あちらに並んでおります丸い水晶でございます」
上品に指先を揃えて案内された。指先を辿ると、そこにはスイカくらいの大きさの透明な水晶が5個並んでいた。
浮いてる……。
どうやって浮いてんだろ……ATM的な扱いなのかな?頭の中にどんどんハテナが浮かんでいく。
「あれは……他に使い方とかあるんですか?」
残高確認のためだけに用意されてるんだったら凄すぎる。と言うか、勿体ない。まぁインテリアとしてはお洒落……な気がする。
「あちらはご自身のステータスなども確認できます」
「ステータス? それってあれを使わないと見れないんですか?」
自分のステータスって見れたよね?なのにわざわざギルドで確認する必要ある?
「新しく技を習得されたり、レベルが上がったりなど、ステータスの内容はあちらの水晶を使用しませんと皆さま確認できません」
「……水晶なんて使わなくても見れるもんだと思ってました」
「ふふっ、そんな事ができるのは鑑定士だけですよ」
私が普通にやってる事って普通じゃないんだなって改めて実感。自分からベラベラ話さないようにしないと……。
お酒も禁止だな。酔っぱらうとまた失敗しそう。穴に落ちたみたいに。
「あちらの水晶ではステータスの確認ができる他に、基本情報を入力する事ができます」
「基本情報?」
「ギルドカードをお持ちの方は入国の際に身分証として使われる方が殆どです。 カードを提示しなくとも、入国審査の水晶に手を当てた時点で冒険者ギルドに所属している事が分かってしまいますので、最初に提示しなくとも提示するようにと言われます。 その為、身元確認の為基本的な情報を入力して頂かなければなりません」
その仕組みなんか凄くない!?水晶が情報を共有してるって事なのかな?
「ステータスを見られるのとは違うんですか?」
「ステータスの内容に関しては、機密扱いとなりますので、国からの要請がない限り提示する事も他者が閲覧する事もございません」
意外とシステムがしっかりしてる。
鑑定士とバッタリ会って興味本位で鑑定されない限りは、本当にステータスはバレないって事だよね。ここでその確認ができてホッとした。今日一番の収穫かもしれない。
「基本情報の入力は項目が予め決まっておりますので、それに従って入力して頂ければ結構です。 赤丸の印が付いている箇所は入力必須となりますので、入力漏れのないようお願いいたします」
「はい、分かりました」
「従魔を連れていらっしゃいますので、従魔のお名前もご入力下さい。 お名前の入力がなければ入国の際に従魔は連れて入れなくなる可能性がございますので」
「え!? そうなんですか!?」
それは困る。かなり困る。
過ごした時間はまだ全然短いけど、もう凪と離れるなんて考えられなかった。
「従魔が増えた場合は入国の際に申告頂ければ問題ございません。 ただし、入国して24時間以内にご登録頂かないと、国により拘束対象となりますのでお気をつけ下さい」
「え!? そんな事になるんですか!?」
「危険視されますので、安全のための措置となります」
「分かりました。 気をつけます。 あれ? ギルドって何時から何時まで開いてるんですか?」
「冒険者ギルドは休みなく、24時間体制で開いておりますのでご心配はいりません」
24時間体制!?
この世界にもコンビニみたいな営業してるところあるんだ。
「基本情報の入力ですが、ステータスと照合されますので、嘘の入力をされたらエラーとなります。 3回エラーになりますと、水晶からカードが出てこなくなりますのでご注意下さい」
ATMも暗証番号3回間違えたらカード出てこなくなるもんね。同じ感じで覚えやすい。
「依頼を受ける際にはあちらのボードから依頼書を剥がし、受付までお持ちください」
壁にコルクボードみたいなボードが貼り付けられていて、その上には沢山の紙が貼ってある。
凄い依頼の量。あんなに困ってる人がいるって事なのかな?
「以上で説明は終わりとなりますが、不明な点などございませんか?」
「あ…えっと……取り敢えず大丈夫、だと思います……」
「ふふっ、もし分からないことがありましたらお気軽にお尋ね下さい」
「はい、ありがとうございます」
「それでは先ずは基本情報のご入力をお願いいたします」
アナベルさんは立ち上がり「それでは失礼いたします」と言って軽く頭を下げた。私も頭を下げると、彼女はとても綺麗な姿勢でヒールを鳴らしながら元いた受付カウンターへと戻っていった。
フワッと柔らかな表情の割に、歩き方はキビキビしてて格好良い。




