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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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15/120

15.男前です。

 こ、こ、これが毒キノコ!?嘘だ!!



「だってこれウサギが食べてたよ!?」


「それを食べていたのは黒いウサギだけじゃなかったか」



 ウサギを眺めてた時のことを必死に思い出そうとした。白いウサギは草を食べてたよーな……そして確かに黒いウサギはキノコを食べてたよーな……。



「そうだね、言われてみれば黒いウサギしかそのキノコ食べてなかった気がする」


「だろうな。 黒いウサギはビーラビットと言って毒を好んで食すんだ」


「え!? そんな生き物がいるなんて……知らなかった……」


「そもそも鑑定を使えば毒キノコだと分かっただろ!?」



 怒る様な口調で言われて思わず泣きそうになる。



「確かにスキルに鑑定って載ってたけど! 今までそんなの使う習慣なかったんだからしょうがないじゃん!!」



 鑑定なんてどういう時に使うか分かんなかったし……でもそれは私がちゃんと説明書を読んでなかったから悪いわけで……。


 凪が怒るのも当たり前だ。



「とにかく食べる前でよかった。 俺は食べても問題ないが、人間や動物が食べれば最悪死に至る」


「ど、どうしよ…スープの味見で飲んじゃった……」


「なっ__!」



 凪と出会ってまだ全然経ってないけど、こんなに焦った顔するなんて……。


 不安がどんどん募っていく。



「毒消しと病態回復のポーションは!?」


「ちょ、ちょっと待って」



 慌ててリストを開いた。リストの一覧を追う指が震える。


 あ、あった!



「毒消しのポーションなら入ってる! 小・中・大ってなってるんだけど、どれがいいの!?」


「下級ポーションで問題ない! 早く飲め!」


「下級って小のこと!?」


「そうだ!」



 ブレブレな指で慌てて毒消しポーションの小の文字に触れた。ポンっと掌に収まる小瓶が現れ握った。小瓶の中には青い液体が入ってる。


 不味そう……とか思ってる場合じゃなかった!


 急いで蓋を開けて瓶の中身を飲み干した。スーッとする喉越し。ハッカに似てるかも。飲めるけど美味しくはない。



「これで大丈夫かな?」


「いやまだだ。 病態回復ポーションがないからな」


「私どうなっちゃうの?」



 毒消し飲んだのに?そもそも病態回復ポーションって何!?


 鼻の奥がツーンとしてきた。鼻水が出てきそうになって鼻をすすった。



「ススキノコには毒と菌がある。 菌が残ったままだとお腹を壊す可能性が高い」


「それって……食中毒みたいな事?」


「そうだな。 日本でよくいう食中毒と症状はよく似ている」



 _ギュルルルルルル……。


 なんかお腹がヤバイかも。



「ちょっとトイレ!!」



 実家と同じつくりにしといてよかった!足が迷う事なくトイレに行き着いた。


 メッチャお腹痛いー!!蹲る様にトイレに座ったまま暫く動けなくなってしまった。


 こんな風になって改めて感謝するのはトイレの作り。水洗なのか魔法の力なのかは分からないけど、ボットン便所じゃないって事。


 トイレに篭ってただけなのに、今日イチ疲れた。


 脱水症状が出てるのか、フラフラする。それでも水を飲むのが恐くて我慢した。少し落ち着いたし、客間のベッドに横になろう。



「凪…もう休むね……バタバタしちゃうかもしれないけど…ごめんね……」



 それから何度ベッドとトイレを往復したか分からない。


 _ギシッ。


 ベッドに横になったまま目を開けると、凪がいた。



「窓開けてくれたんだね。 ありがと」



 身体は辛いし朦朧としてるけど、外から入ってくる夜風は気持ちが良かった。


 口を突き出されよく見ると、何かを咥えていた。押し付ける様に突き出すからそれを取ると、中に液体が入った小瓶だった。



「これ……」


「病態回復ポーションだ。 美桜の事を心配した森の者たちが作ってくれた」



 森の者たちが?


 頭が上手く働かないし、よく分からなかったけど、病態回復ポーションだって事は理解できた。


 蓋を開けて恐る恐る飲むと凄く苦かった。某漢方薬の味に似てる。



「マズ……」


「我慢しろ。 有難いことに上級の病態回復ポーションだ。 良くなるのも早いだろ」


「お礼言わなきゃ」


「元気になったらな」



 そう言って凪はベッドの上に乗って私のそばで丸くなった。



「一緒に寝てくれるの?」



 ちょっと冗談っぽく言うと、「安心して寝ろ」と言われときめいてしまった。なんて男前なんだろ。今まで付き合ったどの彼氏にだって、こんなに優しくて頼りになること言われたことないよ。


 誰かがこうしてそばにいてくれるってこんなにホッとするんだね。子供の時から病気の時に看病してくれる人なんていなかった。心配してくれる人もいなかった。嬉しくて、けどくすぐったくて、泣きそうだった。


 さっきよりもだいぶ身体が楽になった様な気がする。身体よりも心が軽くなったのかもしれない。


 私は凪と向かい合ったまま目蓋を閉じた。






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