12.色々酷くないですか。
お家を出て歩くこと約1時間。街からずいぶん離れた。私たち以外人は見当たらない。こんなに歩くことなかったからスニーカー履いててもちょっと辛い。
私が立ち止まると凪もそれに合わせて足を止める。
バッグから携帯しやすいサイズの魔法瓶になっている水筒を取り出した。水ってこんなに美味しかったっけ?って思うくらい美味しい。
これにもオクタヴィアンさんが便利な機能をつけてくれた。そう!この水筒は永遠に水がなくならないっていう素晴らしい機能を!
そしてマジックバッグの偉大さも再確認できた。無限にいろんなものが入るのに、重さを全く感じない。肩からバッグを掛けてるなんて忘れてしまいそうになる。
「凪も飲む?」
「あぁ」
開けた口の中に水を流し込む。
「何をする……」
「え? 暑いかなと思って」
飲み終わった凪の頭から水をかけた。この水冷たいし気持ちいいかなと思ったんだけど。
「ではお礼だ」
「え!? ちょ__凪!!」
凪は勢いよく頭を振った。水が飛び散り私まで濡れてしまった。
「もー!!」
「暑いと思ってな」
「あはは! ありがと!」
何かに追われる事なく、こんなバカみたいな事しながら過ごせる日が来るなんて思ってもいなかった。
歩いているとたまに人と遭遇したりで話すのを慌ててやめたり、念話に切り替えたりでゲームをしてるような感じだった。
1人だったら挫けていたかもしれない。うん、まだ何もしてないんだけどさ。
「はー……やっと森の入り口!!」
日本にいたら写真でも撮ってこの苦労と感動をSNSにでも載せたいくらい。
「え!? 急に何!?」
森に入った途端、凪が元の大きさに戻った。戻る前に一言いってよ!ビックリするじゃん。
「背中に乗れ」
「え……?」
「平坦な道でこれ程時間がかかったんだ。 険しい山道では目的地に着くまでに日が暮れるぞ」
「重いとか言わないでね」
「鶏ガラのような体でよく言うな。 もっと肉をつけよ」
デブって言われるのも嫌だけど、鶏ガラもイヤ!
私が乗りやすいように、凪が背中を下げてくれた。今日は歩くしと思ってズボンを履いてて良かった。
恐る恐る跨いで背中に座った。毛が柔らかくて極上の絨毯の上にいるみたい。感動!
「うわ__っ!!」
凪が立ち上がると、一気に目線が高くなった。馬に乗った時よりも目線が高い。目線が変わるだけでこんなに見えるものが変わるんだ。
「マップを開いて誘導してくれ」
「先に言っとくけど私方向音痴だからね!!」
「美桜のマップはその辺のものではない。 目的地を指定すれば経路が出てくる」
「え!? そうなの!?」
「説明書を読んでないのか!? バカ者!!」
悔しいが何も言い返せない。
今回のことに限らず、ケータイ、パソコン、テレビ、洗濯機……ありとあらゆる説明書をちゃんと読んだことがない。トラブルが起きて慌てて読む。それがお決まりだ。
マップを表示して一番近い赤いマークを押すと、詳細な地図に切り替わり、経路が現れた。
「暫く道なりに真っ直ぐみたい」
「承知した」
「え…うわっ、ぎゃあぁぁぁー!!」
走り出した凪の速さにビックリして、慌ててしがみついた。思いっきり毛を掴んじゃってるけど、痛くないかな!?確認したいけど喋ったら舌噛んじゃいそうで口を開けられない。
乗ったことないけど、バイクってこんな感じなのかな?
それにしても……速すぎるよ!!このスピードでどうやって案内しろってゆーの!!




