115.コツは心です。
頭の中でいくら考えても上手くまとまらない。オクタヴィアンさんに頼りたい気持ちになるけどこの世界のことに首を突っ込むようなことはできないだろう。
「そうだね、僕はこの世界を覗くことはできても直接手を下すようなことはできない。 僕ができることは世界のために必要な者に力を授けることだけだ。 授けるだけで、困難に立ち向かえる力を手に入れられるかどうかは本人次第。 まぁ、ごく稀に啓示をすることもあるけどね」
「頭の中覗きましたね……」
「ごめん。 あまりにも眉間に皺が寄っていたからつい、ね……」
「はぁ……聖女ってもっとできることがあるんだろうけど、今の私はレベルが追い付いてなくてせっかくもらった力も使いこなせてなくて……弱音を吐いてすみません」
解決するためにどうすればいいかじゃなくて、まずはやらないといけないことを考えよう。
聖物を手に入れること、人魚の涙を手に入れること、ポロック伯爵家の瘴気を浄化すること、それと……。
「治癒の力を使うコツとかっていうのもオクタヴィアンさんに聞いたらまずいですか?」
「いいや、それは問題なよ。 コツは゛心”だよ」
「心?」
「相手を想う心、癒したいと想う心、助けたいと想う心。 それが癒しの力の源だよ。 どれほどの怪我を癒せるのかは光の力の大きさによって変わってくる」
「力の大きさでどれほどの違いがあるんですか?」
「かすり傷程度の怪我しか治せない者もいれば、欠損した体を元に戻すことができる者もいる。 力があれば毒に侵されたものを救うこともできるよ。 ただ、呪いは神聖力でも光の力でもどうすることもできない」
呪いって本当に厄介だ。どうして人を呪ったりする人がいるんだろう……。
「そうなんですね。 教えてくださってありがとうございます」
「いつもたいして力になれなくてごめんよ」
「謝らないでください。 いつも感謝してるんですよ」
聖女になりたくてなった訳じゃないけど、結果としてこの世界で充実した生活をおくれている。正直大変なんて言葉じゃ追いつかないこともあるけど、それでもオクタヴィアンさんには感謝してる。
「美桜」
いつになく真剣な声で名前を呼ばれドキッとした。
「忘れないで。 僕は美桜の味方だ。 もちろん凪も。 この先、もっと大変なことが待ち受けているかもしれないけど、僕たちがいるということを忘れないでほしい。 いいね?」
「……わかりました」
「そんな顔しないで! あー……いや、僕がさせちゃったんだけど……ただ一人じゃないからねって伝えたかったんだ。 だから不安そうな顔しないで。 ね?」
「はい、ありがとうございます」
笑ってそう言うと、オクタヴィアンさんも安心したように微笑んだ。神様の笑顔だからかな。オクタヴィアンさんの笑顔は眩しくて、まるで光を帯びているような神々しさがある。
「さぁ、そろそろお戻り。 お迎えが来たみたいだ」
その言葉に返事をする前に景色は一変し、祈りの間へと戻ってきていた。




