111.童話のお姫様みたいです。
宿の人に近くのおすすめのレストランを教えてもらった。人気店なようで混雑していたけど、「宿の支配人の紹介できた」と言えばすぐに通してもらえると言われたので、その通り伝えると本当にすんなり通してもらえた。それも普通の席じゃなくて半個室で、外の様子も見えるから開放感のあるいい席だ。
「寒くないですか?」
「えぇ、ちっとも。 風が気持ちいいわ」
目を瞑り、頬にふわふわと触れる風を楽しむセレーナさんの姿はまるで絵画のようだった。童話のお姫様みたいに美しくて、でも笑った顔は少し可愛らしい。
食事は生ものは避け、注文した。セレーナさんはもともと魚介類は食べないようで、温野菜や野菜スープを頼んでいた。魚介は食べないけど、お肉は大丈夫なようだ。昔魚介であたっちゃったとかかな?私はまだ食べ物にあたったことないけど、職場の人が牡蠣にあたって地獄のような苦しみを味わったって言ってたっけ。それ以来その人は焼いてようが揚げてようが怖くて牡蠣が食べられなくなったって言っていた。
「さっき宿にいらしていたお母様って……」
「あの方は主人のお義母様よ。 たまに様子を見に来てくれるの」
「結婚相手のお義母様と仲がいいって素敵ですね。 お姑さんと合わないと大変だってよく聞くので、私も今後結婚できたら、お姑さんと仲良くなれたらいいなって思います」
「そうね……こんな私の事を気遣ってくれるとても優しい人だと思うわ」
こんなに綺麗で素敵な人が「こんな私……」なんて言うなんて。自信が持てない何かがあるんだろうか?まだ付き合いが浅すぎて突っ込んで聞けない。
あれ?
「基本はお食事一人でとられてるっておっしゃってましたけど、旦那さんとは一緒に食事しないんですか?」
「もしかしたら私難産になってしまうかもしれなくて、少しでも出産の危険を減らせないか調べ回ってくれてるの。 でもそろそろ出産時期だから、収穫があるにしろないにしろ戻ってくると思うわ」
「そう、だったんだ。 それならなおの事お義母様がいてくれて良かったですね」
性別は事前に分からないって言ってたけど、難産になるかもしれないっていう事は本人の体質だったり体の状態で分かったりするのかな?
「主人がいなくて寂しさのあまり泣いてしまって……主人が不在中に屋敷にいても落ち着かないだろうからって、経営している宿に部屋を用意してくれたの。 屋敷にいると主人と過ごした場所が多くて感情が不安定になっていたから、正直有難かったわ。 それにね、実はお義母様とはそこまでいい関係じゃなかったんだけど、私が屋敷で泣いてることを知ってからはとても優しくしてくれるようになったのよ」




