99.約束です。
外は賑やかなのに店内は静まり返っていて落ち着かない。隣に座るラフィさんは穏やかな笑顔で、その後ろに立つクライドさんは険しい表情で……勝手に天国と地獄コンビと命名した。どうしていいか分からなさ過ぎてくだらないことを考えていないと耐えられない。
「ナギさんは一緒ではないのですか?」
「今はそうですね」
……って、あれ?私ラフィさんに凪の事紹介したっけ?それとも私が凪の名前を呼んでるのを聞いてた?
変な汗が背中を伝う。さっきまでは風が心地よかったのに、今は身体がひんやりして肌寒く感じる。両腕をそっと抱いた。
「クライド」
「はっ」
肩にふわりとのせられたストールにビックリした。いったいどこから……。
「……ありがとうございます」
「主の指示ですので、お気になさらないでください」
鋭い視線に敢えて笑顔で応えた。
「もしよろしければ我が家でゆっくりティータイムはいかがですか?」
「ラフィさんは貴族の方ですよね?」
「えぇ、そうです」
「でしたら遠慮させていただきます」
「貴族はお嫌いですか?」
「人を嫌いになるのに貴族だからとか貴族じゃないからとかはありません。 ただ、見ての通り私は貴族のお家に着て行けるような洋服は持っていないので、失礼に当たるかと思います」
着たいものを想像してマジックバッグの中から洋服を出せば問題ないんだけどさ。
「今のお召し物も素敵ですよ。 ですが、身なりが気になるとの事でしたら是非プレゼントさせてください」
よく知りもしない相手に簡単にプレゼントするなんて言えるなんて、流石は貴族。よく知らない相手からのただほど怖い物はない。だってそこには信用も好意何もないから。もしもあるとしたら邪な気持ち。
「ではお選びください」
「選ぶ……?」
「客人として我が家にお越しになるか、それともこのまま宿に戻ってポロック伯爵家に間者が紛れ込んでいると連絡を入れられるか……どちらがよろしいですか?」
凪がポロック伯爵家に行ってるって知ってる!?なんでそのことを!?
「……脅しですか?」
「とんでもありません。 ただ、ゆっくりお話ししたいだけです」
脅しじゃない!!
伯爵家に簡単に連絡が入れられる人ってことは伯爵位よりも上の貴族。下手に逆らえば本当に凪が危ない目にあうかもしれない。いくら聖獣とはいえ、無事ではいられないかもしれない。
「貴方のせいで凪が危険な目にあったら……絶対にゆるさない」
「私が危険な目に合わせるなんて、そんなことはしませんよ。 むしろ、万が一の時には私の方でどうにか対処いたしましょう」
「約束ですよ」
「えぇ、約束です。 では、参りましょう」
ラフィさんが席を立つと、私の椅子をクライドさんがひいてくれた。紳士的な行為も今は気分が悪くてしょうがない。




