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聖女の冒険  作者: 星野 奏


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98.人っ子一人いません。

観光地に並ぶお店はどこもカラフルで街を歩いているだけで気持ちが明るくなる。おしゃれを楽しむように日傘をさすのもいいけど、全身に日差しを浴びるのは気持ちがいい。日焼け止めの開発に成功したら一獲千金を狙えそう。まぁ、私の知識じゃ絶対に作れないけどね。


目的のカフェに入ると少し待たされたけど、運がいいことに二階のバルコニー席を案内された。一番端の狭い場所だけど、穏やかな風は気持ちがいいし見晴らしもいい。それに屋根が付いているから日陰で眩しくないのもいい。


魚のムニエルに魚介のクリームスープ、そして少し硬めなパン。この世界のパンはどれもフランスパンみたいな食感がする。素朴な味で嫌いじゃないけどそのまま食べると顎が疲れそう。その上エラが発達してしまいそうなので、パンを食べるならスープは必須だ。口に運んだどの食事も美味しい。美味しいけど……凪がいないから美味しさ半減。よくよく考えてみたら、この世界に来て一人で食事をするのは初めてだ。



「ご一緒してもいいですか?」



顔を上げて手に持ってるパンを落としそうになった。



「ラフィさん!?」

「覚えていてくださったんですね」



周りを見渡すと気付けばあんなに賑わっていた店内は人っ子一人いない状態になっていた。外ばっかり見ていたせいで全く気が付かなかった。あれほど凪に気をつけろって言われてたのに……!ラフィさんの後ろには強面の彼がいる。逃げるなら飛び降りる?



「ミオさん?」



とても上品だと思っていた微笑みが今は少し恐ろしく見える。



「どうぞ、おかけください」

「ありがとうございます」



何も考えずに行動を起こすのはきっといい策じゃない。少しでも有利な状況をつくらないと……ラフィさんの目的も分からない。


強面の彼が顔に似合わず慣れた手つきで紅茶を注いでくれた。店内にはお客さんだけじゃなく店員さんもいない。



「クライドが淹れてくれるお茶はとても美味しいですから、冷めてしまう前にどうぞ召し上がってください」

「…………」



このお茶に変なものとか__



「毒なんて入ってませんよ」

「……信じていいんですよね?」

「勿論です」



この状況で「勿論です」って言われても全然信用できないんですけど……って、あ!私鑑定スキル持ってるじゃん!なかなか使う機会なくてすっかり忘れてたわ。鑑定を使うと、本当に毒は入っていなかったので一口飲んだ。



「……美味しい」

「お口に合って良かったです」

「…………」



私ってば、呑気に思わずお茶の感想が口から零れてしまった。





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