表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

狩りゴリラ

 前の世界のゴリラは、たしか草食だったと思う。ただ、今の俺は肉でもなんでも食べらそうな気がする。なので、狩りをしようと思う。そう、どす黒リンゴを投げる投石、いや投リンゴで!!


 どす黒リンゴはそこら中になっていたので自分手に合うサイズのものを適当にもいで集めておく。そして、獲物を探す。五感を研ぎ澄ますと、なんとなくわかる。さっきからギャアギャアギャアギャア鳴いている鳥の声が聞こえるので、声のする方を探してみると、木の上の方にやたらデカい鳥が止まっていた。前世のハゲワシを4周りは大きくしたような鳥だ。 

 そして、狙いを定めて鳥めがけてどす黒リンゴを投げる。


 「ピキュッ…」


 という鳥の声と共に、鳥は木から落ちた。鳥は途中でリンゴの飛来に気づいたものの、飛び立とうとするときにはもう遅く、リンゴは見事に的中した。

 この体、球速だけじゃなくえらくコントロールも良い。狩りにめちゃめちゃ使えるかもしれない。


 仕留めた鳥の羽をむしる。近づいてわかったがかなり大きい、けれどがんばってむしる、むしる、むしる…


 あらからむしったあと、かぶりつく。異世界初めての食事は、意外と美味しかった。生で食べるなんてどうだかと思ったけど、美味しい。これがこの世界のゴリラの味覚なのかもしれない。そしてなんだか、食べると全身にエネルギーが満ちて行くような気がする。こう、人間のときにはなかった感覚だ。腹が満たされるのとも違う感覚。全身にエネルギーが周り、力が満たされる感覚。

 そして、じっくり味わうと、甘味酸味苦味塩味うま味のどれとも違う味がする。まあ、うま味はもともとよくわかんなかったけど。

 これはもしかして魔力を吸収しているのだろうか?そしてこれはもしや魔力の味ではないだろうか。わからないので、とりあえずそういうことにしあ。魔力味とでもしておこう。

 たぶん、魔力を食べまくれば進化できるんだろう。そんな気がする。


 そして、試しに他の魔物も探して見たけど、結構簡単に見つかるし、どす黒リンゴを投げれば大体狩れた。どす黒リンゴと投球の相性が良すぎるのかもしれない…… 


 しばらく狩りをしてうさぎ(っぽいやつ)、ワシ(っぽいやつ)、(っぽいやつ)など色々仕留めた。

 全部食べ比べると、やはり強そうなやつほど魔力味が濃かった。強そうなやつ、というのもまともに戦う前に遠距離からリンゴで一方的にかたをつけてしまうので、相手が強いかどうかはわからない……なので見た目でなんとなく判断した。


 それからは、ひたすら狩っては食べ仕留めては食べを繰り返した。

 

 そしてなんとなく本能と思考の両方で気づいたのだが、どうやら自分は、ゴリラは崖の下では生態系のトップに君臨しているらしい。


 自分に勝てる魔物はたぶんまずいないし、そもそもまったく襲われない。なのでとりあえず好き勝手に生きることにした。




 狩っては食べ、食べては寝てを繰り返しているとだんだんと体が大きくなっていることに気づいた。そして、体の中の魔力も、獲物を食べる度に張り詰めたような感覚がして、もうすぐで進化できそうだということが感覚的にわかってきた。

 そしてそのときには、もう、このジャングルで狩れない魔物は居なくなっていた。体もいつの間にか母ゴリラに迫る大きさになっていた。

 

 いつもより、1周り大きい牛の魔物を食べたときのことだった。体中の魔力が弾け、直後、全身が激痛に襲われた。


 「ウ、、ウゴ……ウゴホ……」


 痛い、痛い。恐ろしく痛い。体の中の骨が動き、皮膚は突き上げあれ、筋肉はグリョグリョ動いている。


 そして、俺はいつの間にか気を失っていた。


  



 次に目が覚めたときは全身に違和感を覚えた、これが進化か、と理解する。

 親指は伸び、前傾姿勢で手足で歩いていたものが手をつかずに立てるようになっていた。近くの水辺で自分の姿を確認すると、姿勢の良い直立二足歩行ゴリラという感じだった。

 母ゴリラも進化したのだろうけど、進化はある程度自分の望むものになるらしい。たぶん、ゴリラの思考では「大きい」「鋭い」などが強いと考えるので、角の生えたデカいゴリラへとそのまま進化して行くのだろう。自分の中のゴリラの思考でなんとなくわかる。


 試しにどす黒リンゴを投げる。


 体のバランスが前より整ったので全身を使って投げることができた。

 

 ビュッという音と共にリンゴが飛んでゆく。


 





 ゆうに200キロは出ていただろう。改めてゴリラの体の凄さを体感した。これだけの速さのものにまともに対応できる魔物がいるだろうか。


 もう、崖の下でやることはなくなった。

  

 崖の上に登るときが来たのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ