第二章1
本編に入る前に、戦争時代の頃の内容をちょこっと入れてみました。なので、だいぶ、字数少なめです。
世界は一時期、絶命しかけていた。
大量の殺戮兵器が、空を舞う生命体を狙い、撃ち落そうとしても、その弾道はどうしてもあらぬ方向に向かい罪のない人間を殺していく。
自然災害により、人が死ななくなってからというもの、人は、死を間近で見ることは少なくなっていた。それ故に、警戒心は薄れ、そのせいで、地獄を見る羽目にあう。
大の大人が泣きわめき、空からは破壊をもたらす災厄。燃え盛る街。崩れ落ちていくビル。泣き叫び走っても走っても安寧の地がないことに絶望する学生たち。親とはぐれて一人うずくまる子供。子供さえ投げ捨てて自分だけ助かろうとする傲慢、未知に対する恐怖......畏怖。
世界が同時多発的に、猛烈な絨毯爆撃にさらされたこの事件を人は、機凱種世界永終と呼び後世へと伝えた。
誰一人として、救えるモノはいない人類絶滅さえ疑われた、人類の人口の約七分の一を減らしたこの事件。だが、なぜかこれ以降追い打ちをかけるでもなく、機凱種は世界への攻撃をやめこの世から去っていた。
そして、ようやく機凱種が出現するまでの対策として防衛都市プロジェクトが立ち上げられるのである。
このプロジェクトに参加した多くの捨てられた子達は、自らが実験体となり各人それぞれが特質的な『能力』に目覚めた。その真意は謎のままだが、『防衛都市』に一度入れば、超能力を得られるという噂は日本中に広まり、各地から人を集めることに成功する。
ただ、大人が入っても特に変化することはないらしく、二〇歳未満の少年少女のみが、その特質的な能力に目覚めたのであった。
防衛都市が成立して二年、能力に目覚めた彼らに敗北の文字はない。敗北してはならない。ずっと、ずーっと勝ち続けなければならない。殺さなければいけない。
そんな価値観に、空は嫌気がさして、戦闘科をやめることになるのだが、それは、また別のお話である。