第二章3
久しぶりの更新。毎日投稿30日記念。
空はすでにその機凱種の近くにいた。少女の輪郭を保つその機凱種の見た目はまさしくミリアだったが...
「何か違う.....」
なぜか、雰囲気が違っている気がした。近づくな、危険だと人間の本能の部分が語っていた。でも、それを抑えて一歩また、一歩と近づく。
あと、一歩で少女に触れられるというタイミングで少女は、...ニタリと笑った。
グシャッ、湿っぽい音とともに空は崩れ落ちた。
「やっ....ぱり、おま.....え....ミリアじゃない。何....者なん...だ?」
「phqzyわた、しはpyまだxzhそんjdwざいmnjしなjpjnいもの」
お腹の辺りが半分以上軽くなった空は血を吐きながら、ノイズの多いそいつの声を一音一句間違いなく記憶した。
そして、その機凱種がまた新しい変形を始めた時と、千里らが現着したのはほぼ同時の事だった。
「おい、空、しっかりしろッ!!」
千里の声を空は聞き取っていた。空の最低限の防御により、なんとか一命を取り留め、生命を維持しているが、いつ途切れてもおかしくない状態だ。
「出血量がやばい。『糸』で器官を補っているようだが、これでは出血を抑えることができない。おい、冬燕、空と結月を連れて一旦離脱しろ。空は『回復』系の能力で治癒しながら病院へ連れて行け。頼んだ!!」
千里は、すでに敵の周りに鋼糸を張り巡らせ相手を拘束している。相手を牽制しつつ、自分の領域を組む準備を始める。
「mgjpdtmwgwハガル......」
得体の知れない言葉を紡ぐ機凱種。その姿は黒いスライムのような生命体へと変化する。そうすると、今まで地面に縛り付けていた鋼糸は溶けてなくなる。また、機凱種は自由の身となった。
「へぇ、この都市の人間みたいな能力が使えるんだな。なるほど、機凱種も戦うたびに進化するという訳だ。...ならば、私も全力を尽くそう!!!」
これより、五重能力者の本気が垣間見られる!!!
一方その頃、空は一五キロ離れた病院に連れて行かれている最中だった。瞬間移動で移動しているから、時間はさほどかからないが、普通なら即死しててもおかしくない傷の深さだ。
「(どうして、こんなことになったのかな...)」
それは空にしか分からないことだ。少女の背中に背負われている少年が抱える問題の大きさは、かつて救われた冬燕も少し触れている。だからこそ、死んで欲しくない。そう思うのだ。
冬燕の制服は彼の血が染みて赤黒く変色していた。
「蛍、もっと出力上げられないの!?」
「これ以上強くしたら、それこそ空さんを殺すことになるんですよッ!そんなこと、できません!!」
これには唇を噛むしかなかった。冬燕の右手に掴まっている『回復』系の能力者、夏目蛍も空を見殺しにしたい訳じゃない。でも、一つでも誤った処理をするとそれだけで死に絶える状態にある空に危険な綱渡りは試せない。
状態が悪化していく様子を指を咥えて、待つことしかできない少女はついに吠えた。