花
桜が咲いた
厳しい冬を越して、精一杯咲く花
「春の主役は、桜だけだなぁ」
ぽつりと、野花が言った。
道先に咲いてる野花も、頑張って咲いている。
力を振り絞って、咲いている。
力強く。
「桜に咲かれたらおいらたちには、誰も見向きもしない」
憤慨するように野花が言った。
だけれど、見られていないと思っていても
それに感動する人もいる。
「なんの役にもたってない」と思っていたとしても
必ず、誰かの目にとまっていることがある。
それに気づかない野花が切ない。
やがて、二週間ほど経った
桜は舞い散っていた。
野花は
「桜さんは、短命だったのか…」と
自分の長所を少しだけ知ったかのようだ。
綺麗なものほど、儚いものだよ
誰かがぽつりとつぶやいて
今日も一日終わっていく…
桜が舞い散る春の夕焼け空が
すこし、さみしそうだった。