ブレードエンカウンター外伝『鏡内童話』
※注意※
・この短編は、拙作ブレードエンカウンター『鏡内戦線』の番外編です。
・童話の赤ずきんを元にしています。
・終始作者の悪ノリで構成されています。
・登場するのは主要キャラ六人のみです。
・番外編のくせに、本編の一話よりも字数が多いです。
・その他、何があっても許せるという方のみお楽しみください。
もりのちかくのおうちに、あかずきんとよばれているこがらなおんなのこがくらしていました。
あるひ、あかずきんはおかあさんにおつかいをたのまれ——
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
……たのまれるはずが、おかあさんがだんまりをきめこんでしまい、はなしがてんかいしていきません。
それもそのはず。はいやくのつごうじょう、おかあさんはあかがみのおーるばっくでしんちょうは170せんちごえ、めつきはかんぜんにやんきーのそれ。
そんなみためで、いしょうだけはかんぜんにおんなもの。
やくにてっしろというのもこくなはなしでした。
「……ねえ」
しかし、ここでしゃくをつかいきるわけにはいきません。
あかずきんはしびれをきらし、ついにこえをあげました。
「……何だよ」
「何か言ってよ。進まないじゃない……ぷぷ」
あせりとしゅうちしんで、おかあさんはかおをひきつらせます。
ずうたいのでかいじょそうしたやんきーのそんなさまに、あかずきんはおもわずふきだしそうになりました。
「……ああ、分かったよ。やりゃいいんだろやりゃあ……‼︎」
ぷるぷるふるえながらも、おかあさんはかくごをきめたようです。
「与えられた役を演じきる……それくらい出来なきゃ、漢が廃るぜッ‼︎」
ものすごいむじゅんしたことをいいだしました。
ともあれ、ようやくてんかいがさきにすすみ——
「ンンッ……ジツワネ、オバアチャンガカゼヲ——」
「ぶっふぉっ‼︎‼︎」
……すすむかとおもいましたが、まだしばらくもたつくようです。
おかあさんこんしんのうらごえが、あかずきんのきんせんにがっつりふれてしまいました。
「あはははははは‼︎ きっ……き……気持ちわるッ! 何その声⁉︎ お、お腹痛い! あっははは!」
「テメエ……」
むすめにむけちゃいけないがんこうでにらみますが、あかずきんはきにせずだいばくしょうをつづけます。
「ああもう……いいや。これ終わったら、出番もうないしな……」
しばしけっかんをぴくつかせたおかあさんでしたが、ついにいろいろとあきらめました。
「……オバアチャンノオミマイニ、コノフガシヲモッテイッテホシイノ」
「うぷ……あ、うん分かったわ……くくく」
おかあさんはふがしのはいったかごを、まだわらいつづけるあかずきんにてわたします。
そのめはもはや、やんきーではなくしんださかなのものでした。
「あーおかしかった。行ってきまーす」
「ヨリミチシチャダメヨ。シラナイヒトトオハナシスルノモダメ。アト、トチュウデフガシタベナイデネ」
「言われなくても分かってるわよ」
「……トチュウデフガシタベナイデネ」
「何で二回言うよの」
「…………」
さいごにはっしたのは、せめてものいしゅがえし。
おかあさんは、それいじょうしゃべることをこばみました。
とまあいきなりいろいろありましたが、あかずきんはやっといえをしゅっぱつし、きのおいしげるみちをあるきはじめました。
「笑いすぎてもう疲れた」
じこせきにんです。
そんなしゅっぱつじてんでだらけぎみなあかずきんに、あやしいしせんがむけられていました……。
「フッフッフ、やっと来た。妙に遅かったね」
きのかげにかくれながら、しせんのぬし——ぎんぱつのおおかみはひとりでぼそぼそつぶやきます。
きもちわるいですね。
「……何かいま罵倒された気がするけど、まあいいや。それ突撃!」
いまがこうきとしゅんじにはんだんし、おおかみはとびだしました。
「やあ、こんにちは赤ずきんちゃん!」
「!」
やたらかっこつけたぽーずと、いけめんなのがよけいはらだたしいどやがお。
とつじょめのまえにあらわれたけもみみのふしんしゃに、あかずきんのほんのうがけいかいしろとささやきました。
「……しゃーっ!」
「うん。さすが本編でもあんまり交流なかっただけはあるね」
そういうさんぴのわかれるはつげんはひかえてほしいものです。
「そんな猫チックに警戒しないでよ、赤ずきんちゃん。カゴいっぱいに麩菓子詰め込んでどこ行くの?」
「知らない人と話しちゃダメって……お、お母さんが」
あかずきんののうりにうかぶ、さぶりみなるてきじょそうやんきー。
おもいだしわらいしかけましたが、どうにかこらえました。あぶないところです。
「なるほど正論だ。いいお母さんだね」
「…………ぷ」
そのことばに、おかあさんのすがたがさらにせんめいにうかびあがりました。
つぎこのわだいがでてきたら、あかずきんはげんかいをむかえてしまいそうです。
「だけどね赤ずきんちゃん。君が僕と会話する事は、なんら悪い事じゃないよ?」
「?」
「『知らない人と話しちゃダメ』……。君はそう注意されたんだね」
「まあ、はい……」
「うん。やっぱり問題ないじゃないか」
「……?」
あかずきんは、おおかみのことばのいみをりかいできません。
「分かりづらいかな? なら単刀直入に言おうか」
さいしょからそうすればいいのに。
うざったいですね。
「何だろう……僕への当たりが強い気がするな」
「はい?」
「まあ、とにかくだ。君は知らない人と話しちゃいけないと言われた。分かるかい? 人だよ。これがどういう意味か——」
たんとうちょくにゅうといったくせに、まだもったいぶります。
ざんねんとかいわれるりゆうはそのへんなんだから、じかくしてほしいですね。
「……分かった、分かったから。もう言うから」
「誰と話してるんですか」
せいしんにだめーじをおいつつ、おおかみはようやくほんだいにはいりはじめました。
「つまりだよ赤ずきんちゃん。君は知らない人と話しちゃダメだと言われた。でもどうだい? 僕は人じゃない。オオカミなんだよ」
「オオカミ……は!」
「そう。人じゃない僕と話したって、君は言いつけを破った事にはならない。何も悪い事なんかじゃないのさ!」
おおかみはあかずきんをびしっとゆびさし、むかつくどやがおをさらします。
むだにためてまでのたまったことは、うんこみたいなへりくつでした。
「……確かに!」
そしてあかずきんは、そんなざれごとをまにうけてしまうおつむのもちぬしなのでした。
「さっきはごめんなさい、警戒しちゃって」
「いいよいいよ。で、麩菓子持ってどちらまで?」
「えっと、おばあちゃんのお見舞いに」
「へえ……それは大変だ」
おおかみはなにかおもいついたのか、にやりとわらいました。
えてきにはかんぜんにふしんじゃです。
「ねえ赤ずきんちゃん。お見舞いに行くなら、花も持って行ってあげたらどうかな?」
「花?」
「そうそう。丁度近くにいい感じの花畑もあるし、きっとおばあちゃんも喜ぶよ」
「……確かに!」
うたがうことなどいっさいなく、あかずきんはざれごとをうのみにしました。
よりみちしちゃだめといういいつけは、さっきのろんぱもどきのよはでわすれさっています。
あほです。
「じゃあ早速摘んできます!」
「行ってらっしゃい。因みにおばあちゃんの家ってどこ?」
「この道まっすぐです!」
「ありがとう」
さらっともくてきちまでばくろして、あかずきんははなばたけへかけていきました。
「……いいね。出番が十全にあるって」
そういうところです。
おおかみはほっといて、あかずきんのようすをおいましょう。
「着いた! 花畑!」
ほんらいのみちからどんびくくらいそれたさきには、とくべつひろくもなくちょうどいいかんじのはなばたけがひろがっていました。
「どれくらい摘めばいいんだろう。とりあえず近くのやつでいいのかな……」
「おい」
やるきのなさそうなこえがきこえて、あかずきんはきづきました。
はなばたけのまんなかあたりに、ぽつんとひとかげがたっていることに。
「だ……誰ですか」
「来い。とりあえず目の前まで来い」
なげやりながらもうむをいわせないくちょうにけおされて、あかずきんはおそるおそるちかづきます。
「! あ、あなたは……⁉︎」
そのすがたをはっきりかくにんできたしゅんかん、あかずきんはすさまじいしょうげきにおそわれました。
そこにいたのは、ひとりのおとこです。
じゃーじにへあばんどという、せかいかんてきにいちゃいけないかっこうをした、ひとりのおとこです。
「よう」
「……そんな見た事ある格好して、一体何を」
あまりのしょうげきに、あかずきんもおもわずめたいことをくちばしります。
「…………」
きょむったひょうじょうのなぞのおとこは、ゆっくりとじぶんのむなもとをゆびさしました。
「?」
そこにあったのは、みなれないくびかざり。
ぴんくのはながあしらわれた、とってつけたようなしろものでした。
「……花だ」
「はい?」
「俺は花だ。摘んでいけ」
「……え」
あかずきんはおどろきのあまり、しこうのうりょくをいちじてきにそうしつしました。
「……ああ。だろうな。俺が逆の立場でもそんな反応するわ」
『む』をぐげんかしたようなひょうじょうのまま、はなとなのるおとこはたんたんとかたります。
「でも仕方ねーんだよ。……声が、聞こえてきたんだ」
「……声、ですか?」
あさってのほうにとんでいたしこうのうりょくが、あかずきんのもとへかえってきました。
「ああ。……『コイツは本編にガッツリ出まくってるから、番外編じゃこんなもんでいいだろ』……って」
「…………」
「ほら……摘めよ。摘んでおばあちゃんちまで持ってけよ。さあ」
はいやくのざつさはおろか、いしょうすらろくによういされていないしゅじんこうだったおとこをまえに、あかずきんはなにもいうことができませんでした。
いっぽうそのころ。
「お、見えてきたね。あれがおばあちゃんの家かな?」
おおかみはあかずきんよりもさきに、おばあちゃんのいえにとうちゃくしてしまいました。
ちなみにいまひとりごとをつぶやいていましたが、うつってないだけでどうちゅうもずっとひとりでぶつぶついいながらあるいていました。
やばいですね。
「さてさて、どうしてくれようか。金品と食べ物でも巻き上げられれば満足なんだけど」
こちらへのこめんとがなくなりました。
どうやらひらきなおったようです。
「一番オオカミらしいのは食べるだけど、流石に無理かな。年齢制限をかけなきゃいけなくなる。折角の番外編でスプラッターはちょっとねえ」
ひらきなおりすぎて、めたいせりふにはくしゃがかかっています。
「まあいいや。流れに任せよう」
おおかみがどあをのっくしようとした、まさにそのときでした。
「待て………」
「!」
うしろからいきなり、なにものかにかたをたたかれました。
「その家に………何の用だ?」
おおかみはゆっくりふりむきます。
たっていたのは、めがねをかけたかりゅうどでした。
くまがくっきりとうかびあがっていて、『いますぐねたら?』とこえをかけたくなるめをしています。
「……早くない?」
おおかみはすでおどろいていました。
「嫌な予感がした………彼女に危機が迫っていると」
「は、はて何の事やら……。というか彼女って、おばあちゃんでしょ? 君とどういう関係が」
おおかみのかたにのせられたてに、つよいちからがこもります。
まゆひとつうごいてませんが、かりゅうどのなかでなぞのすいっちがはいりました。
「俺は彼女を………女として見ている」
そして、まがおでばくだんをほうりこみました。
「鹿とか兎とかよりも………彼女を撃ち抜きたい。ブチ抜きたい」
おおばんぶるまいです。
「いや、あのさ。僕だけじゃなく君まではっちゃけたら、もうこれ収拾つかないよ?」
じかくがあるなら、なぜさっさとあらためないのか。
みっかにわけてじっくりといつめたいですね。
「知った事か」
「『知った事か』って……」
「彼女をお前に食べさせる訳にはいかない………二つの意味でな」
「二つの意味」
さすがのおおかみも、まじでこんわくしはじめました。
そんなこときにもせず、かりゅうどのどくそうまいぺーすはさらにかそくしていきます。
「俺はNTRなんて求めてない………。彼女を食べるのは………俺だけの役目だ」
「止めて! 人の家の前でそんな事堂々と言わないで!」
どあのひらかれるおおきなおと。
あくせるのべたふみをやめないかりゅうどにたえかねて、ついにおばあちゃんまでせきめんしながらとびだしてきてしまいました。
はいやくのかんけいじょう、くろかみろんぐでわかわかしいどころかこうこうせいでしたが、おばあちゃんです。
おかあさんとしふとしたほうがまだむこうもしっくりきていたようなきもしますが、こっちがおばあちゃんです。
「当然だろう………俺のモチベーションが段違いだ」
そうですか。
「さっきからなんて事話してるんですか!」
「あなたを食べたいと………」
「ストレートに言わないでよ!」
かりゅうどはおぶらーとをやぶりすてました。
「いい加減にするんだ」
おおかみはのせられたてをはらい、かりゅうどのほうにふりむきました。
ここにきてはじめてのまじめなかおです。
「君、流石に度がすぎるよ。僕だってまだ我慢してるのに……ずるいじゃないか」
でも、いってることはくそしょうもないことでした。
「これ以上野放しにしておく訳にはいかないな。止めさせてもらうよ、荒っぽい手段を用いてでもね」
「………」
どうきはともあれ、まさかのおおかみひかりおちるーとにとつにゅうしました。
「分かった………いいだろう。勝った方が、彼女を食べる権利を得る………そういう事か」
「よし。乗ったね」
「⁉︎」
いま、おばあちゃんのみらいがついえました。
「さあ行くよ! 本編では最高クラスの戦闘力を持つ僕に勝てるとでも——」
「食らえ」
しょうぶはいっしゅんでした。
うでをかるくなぎはらうかりゅうど。
そのうごきとれんどうして、なぞのひこうぶったいがふたつ、どこからかとんできました。
「おごっ⁉︎」
それらが、おおかみのみぎそくとうぶとみぎわきばらに、せいかくむひにぶちこまれました。
「……ブレードは、反則……だよ……」
そのことばをさいごに、おおかみはじめんにたおれふしました。
「………さて」
「ひ⁉︎」
あらゆるたぶーをぶちこわしたかりゅうどのめが、おびえるおばあちゃんをとらえました……。
ちょうどそのころ、あかずきんはなにをしているのかというと。
「お前も気を付けろよ。いい思いした分は、必ずどっかで損するからな」
「はい……心に響きます」
おみまいのしなだったふがしを、つんできたはなといっしょにむさぼりながら、おばあちゃんのいえをめざしていました。
みてのとおり、おかあさんのいいつけはすべてわすれさってしまっています。
まあいろいろあったので、あかずきんのあたまならしかたないでしょう。
「でも大丈夫です。あなたはこんな所で終わる人じゃないですから!」
「心に沁みる……」
そういいつつも、あいかわらずかおはしんでいました。
「麩菓子も底をつきそうだし、そろそろおばあちゃんちか?」
「そうですね。……何で麩菓子持ってたんだっけ?」
さいごのふがしをたいらげて、おおかみにおくれることやく20ぷん。
あかずきんは、やっとおばあちゃんのいえにたどりつきました。
……が、あんのじょうようすがおかしいです。
「あれ?」
「何か倒れてるな」
いえのどあはあけはなされ、じべたにはぎんぱつのおおかみがねそべっていました。
「う……」
「オオカミさん!」
いしきがあることにきづき、あかずきんはおおかみにかけよります。
「一体何が⁉︎」
「は、早く……彼を止めないと……。この短編がR18になってしまう……」
「あ、あーる……?」
「とにかく早く!」
「え、は、はい!」
いみのわからないまま、あかずきんはいえのなかにとびこみました。
そこであかずきんがめにしたものは——
「……え」
「は……!」
「………」
まっかになったおばあちゃんをべっどにおしたおす、とてもねむたそうなおとこでした。
「こ……これは一体」
「…………」
こんらんするあかずきんのかたをやさしくたたき、はなはいっぽまえにでてすわりこみました。
かりゅうどはおばあちゃんをおしたおしたまま、しせんだけをはなにむけます。
「何だお前は」
「花だ。……見舞いのな」
「………そうか。じゃあ気にしなくていいな」
「ああ。続けてくれ」
「ちょっ、ちょっと待って! 本当に⁉︎ 嘘でしょ……?」
ふたり(?)のなぞのやりとりをまえに、おばあちゃんはあわてふためき、あかずきんはぼうぜんとすることしかできませんでした。
「……ごくり」
ただ……なにかとてつもないものをみているような。
とてもはいとくてきで、かつゆうびなものをみているような。
そんなめいじょうしがたいたかなりが、あかずきんのむねにうずまきます。
よくみればおばあちゃんも、いやがってるようできたいしているようでもある……そんなふうにみえてしまいました。
「あの……私帰っていいですか?」
「お前の自由だ。好きにしろ」
みょうにたかなるむねのこどうにたえかねて、あかずきんはおばあちゃんのいえをあとにしました。
「………続きは本編の時間軸でな」
「え、何……?」
ちょくぜんにそんなかいわがきこえましたが、あかずきんにはいみがわかりませんでした。
「…………」
「あ、赤ずきんちゃん……中の様子は?」
むしのいきのおおかみのといに、あかずきんはこたえられません。
このかんじょうをどうひょうげんすればいいのか、かのじょにはまだわかりませんでした。
「とりあえず……帰ります」
「……気をつけて……」
ひとりきたみちをもどりはじめるせなかを、おおかみはかすんだめでみおくりました。
このひあかずきんは、おとなのかいだんのいちだんめにかたあしをかけたのです。
おしまい。
〈キャスト〉
あかずきん 葉隠叶恵
おかあさん 諏訪間雄生
おおかみ 勾原偽造
はな 向井命
かりゅうど 鳴谷響人
おばあちゃん 崎和天音