ランチタイム (山川さん)
えーと、今回は山川さん視点でございます
今は昼休み。
私は1人で弁当を食べようと思って部室に来た。
私は誰もいないだろうと思いながらも一応ノックをする。反応はない。そして――、
ドアを開けると、先客がいた。
「卵焼きもーらいっ!」
「ちょっ、まて!」
ソファで隣同士に仲睦まじく座る男女。そしてテーブルに置かれている2つの弁当箱。どうやら一緒にお弁当を食べていた途中らしい。
傍から見れば、
「……バカップル」
「違うっ、ただの腐れ縁だからっ!」
「うん、違うよ〜。スミレちゃんっ!」
必死に言い訳をする佐藤ムクと、美味しそうに卵焼きを食べる吉川マリン。
私はここから出ていこうかとも思ったけど、教室にいてもどうせ騒がしくてゆっくり食べれないため、幼馴染2人の正面に座った。
今日は、自分で作った弁当。少しだけ時間がかかってしまったけど、まぁ、味は大丈夫だろう。
2人はどんな弁当だろうかと、テーブルに目を向けると――、
「同じ、弁当……?――っ、リア充、死ね」
「「いや、ただ単に俺が作っただけだからっ!」」
同時に訂正する2人。息もピッタリ。
てか、コイツ(佐藤ムク)はお菓子だけでなく料理も出来るらしい。
なんか、イラつく。
「――って、なんで俺、叩かれてんの!?デシャヴっ」
そう言って、泣きそうな顔をする佐藤ムク。こんな彼の表情も日常になりつつある。
あと、なぜコイツが吉川マリンの弁当を作っているのか、という疑問も浮かんだけれど、どうせイラつくだけだから聞かないし、聞きたくもない。
そんなことを思っていたら、いつの間にか卵焼きを取られていた。ヴァカに。
「おいしーっ」
そう言って、笑う彼女は同じ女子でも見惚れてしまうほどには可愛い。もちろん、普段の行いがなれけばの話である。
そして、そんな彼女の幼馴染は、申し訳なさそうに口を開いた。
「……悪い。これ、代わりに。お口に合うかはわかんないけど……」
彼は私の弁当箱にお手製の卵焼きを入れた。
私は小さく、「ありがとう」と、言ってそれを口へと運んだ。
彼の卵焼きは――、
「……甘い」
私がそうつぶやくと、佐藤ムクはビクっ、となって頭を下げた。
「すいませんっ」
そんな彼の様子に私は柄にもなくふきだしそうになってしまう。
怖がられるのは苦手なはずなのに佐藤ムクのは何故か面白い。むしろもっとからかってみようか、なんてことも考えてしまうほどには。
――なんだか、いつもより弁当が美味しく感じる……。
彼の卵焼きはとても美味しかった。
その言葉は悔しいから絶対に伝えないけれど。